六話「誰も救えないからこそ」
私が公園に着くと、立っている人の姿があった。
「団長!!」と秋彦。
その顔は喜びと共に悲しく寂しげな表情が入り交じっていた。
「やっぱりみんな来てたんだ」
ミルキー団全員を見渡した私がそう言う。しかしその言葉は仲間たちの顔をさらに曇らせるだけだった。しかしその暗黙から声を出したのは行彦だった。
「みんな、家族も家もやられたんだ。帰る場所がない。でもみんなに会えるのにいい場所、それが公園だったんだよ、ねっ、みんな」
みんなは静かに首を縦に振る。
「ねぇ、団長の家族はどうなの?」
「みんなと同様にやられたさ。崩壊はしてないけど、そこにいなかったはずの兄がいて私はいなかったものにされた。つまり盗み変えられたと言った方がしっくりくる」
みんなは不思議そうにこちらを見てくる。
「ねぇ、あなたの家族は殺されたり、家を壊されたりしなかったの?私たちは壊されたのに?ねぇ?」と雪下さん。
「そんなこと言われても……」
「あなたが私たちを招いたんじゃない。あの世界に」と秋宮すみれは言う。あの恥ずかしがり屋さんが歳を得てここまで強い意志を見せてくるとは。
私はこれ以上何も言えなかった。彼女たちは私に傘を向けている。確かにあっちの世界に招いたのは私だ。責任はある。だから殺されてもいい。だが……。
「団長さん、そいつらは偽物ですぜ。確かに家は崩壊してましたが、俺らの家族は上手く逃げて平気だったみたいっす。それと……」
私が来た方向から秋彦が話し出す。周りにみんなもいる。
「招いたんじゃないわ。私たちが望んだ物よ。だってあなた、挙手させたり何度も考え直す時間を与えてくれたじゃない。この世界は令和三十二年らしいけど、あれから十年がこんな世界なんて好きじゃない。ならば変えればいいのよ」と雪下さん。
「つまりみんなであいつらを倒しましょってことね?」と秋宮すみれ。
彼らは傘を持って奴らに走り出す。偽者たちは雲でできた多数の獣へと姿を変えて、彼らに応戦する。しかし彼らの今の傘はただの傘でしかなかった。銃を使おうとしても銃弾は出ない。剣を振ろうと思ってもただ傘を振ってるだけ。魔法なんてただの戯言。だからみんな、獣たちに吹き飛ばされて横たわる。死んではないほどに。
「ほら、お前はただ見るだけだ。そしてお前は何も出来ず、俺の黄金の傘で殺される」
後ろから首に黄金の傘を回されて突然現れた私の兄からその言葉を聞かされる。兄の言う通りだ。盗まれた黄金の傘は兄の手元に。赤と緑の光沢な二つの傘はあっちの世界の入り口に。それぞれ置いてきた。
「何、死にそうになってんだか。お前の手で守れよ、大切な物ぐらいは」
「貴様は……レッドアイ!!催眠が解けたか?」
「あぁ、君の弟に感謝しなくてはな。いや、違うか。私の師匠であり、初代総隊長であり、元黄金の傘を手にしていたユエール・マダガスゴ」
私はレッドアイさんのおかげで楽になった。近くにはあの二つの傘があった。こっちでもまだ輝いているようだ。
「自分の傘ぐらいちゃんと見に着けて置けよ?探すの苦労したんだから」
それは私の兄の声だった。しかしそれらを持って彼に向ける。
「やめろ。俺の兄の真似をこれ以上、黒影……いや、ユエール」
「うん、やめろと言われても俺自身だからどうにも出来ないし、俺を封印したユエールはレッドアイ……あのおっさん、老けたな……のそばに居るだろ?お前の団の名前はミルキー団、他に何かあるかな?お前のおしっこの仕方とか?」
「よし、殺す」
「何でだよ!!」
「……ゔん。兄ざんだ……」
涙声で変な声が出る。そこにいたのは私の兄である。彼の言うことは全て正しかった。なので信じることにした。そしてそれは私たちが傘を使った武器の最後の戦いになることへの始まりの証でもあったのだった。




