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一話「元の世界で」
トンネルを通ると、そこにはたくさんの木が並んでいた。どうやら、元の世界には戻れたようである。
私たちが安堵していると、草むらから何か走ってくるのに気が付いたが、手遅れだった。私の手に持っていた黄金の傘は迷彩色のフードを着た何者かに盗まれていた。そういえば、兄が消えたあの日の服装も今見た服装と似ていた。
「おい、団長。取り返すぞ?」と秋彦。
「あぁ」
私たちは彼を追いかける。しかし彼との距離はどんどん遠くなる。見失った頃には森を抜けていた。
「ちっ、逃げられた」と雪下さん。
「でもこの世界何もなってないようだな。俺らが消えた日から。世界救えたのか?」
「いや、今も少し起きていてこれから誰の目にも分かる光景になるかもよ?」と行彦。
「まっ、何はともあれ、ひとまず今日は解散だ」
私たちはそれぞれ別れの挨拶を交わして離れていく。このまま何もなければ本当によかった……のだろうか?それは分からない。ただ私たちは行彦の言った言葉通りになるとはここにいた団員の中の誰が思っただろうか。




