十話「壊すか抜くか」
何とか立てる崖のところに足を乗せる。一瞬でも気を許したら落ちてしまいそうだ。両手に握りしめた小さな傘を振るう。
「そうだ。そのままお前の後ろにある傘を壊せ。そうすれば俺らとお前たちの世界は隔離される。こっちの世界にお前たちの世界のような悪夢は来ない」
「だから壊せか。今、決めた」
風と青い炎が左右からどちらとも出てくるのが分かる。
「お前は愚かだ……容赦しないぞ?」
「どうぞ、お構いなく」
私は傘を振るうと同時にそれらを吹き飛ばす。しかしレッドアイは自らの傘を横に振り払うことでそれらを消してしまう。そして私の両手の傘を混じり合わせる。しかし彼の力が強すぎて後ろに叩きつけられる。それと同時に私の持っていた二つの傘は落ちてしまった。
「これで終わりだ!!」
目を瞑って彼に傘で刺されるのを待っていた時だった。静けさを感じて私は目を開けた。
「どうなってんだ?」
彼は空中で傘に乗っかりながら止まって私に傘という刃を向けたまま動かない。下もまた動いてないようだ。何もかもが動いてない。
”死にたいのか?軽々しく死のうと思うな。どんな時にでも動け。お前は何だ?”
どこからか私の兄である中原優也の声が聞こえる。
「勝手なこと言うな!!俺は……ここに連れてきてしまった友達やここで会った仲間たちをこの手で救いたいんだ。お前とは違う」
”いや、同じだ。だからこそ抜け!!”
私は悩む。もし黒のフードを指揮しているであろう彼の声ならばこの指示はむしろ断らなくてはいけない気がする。でもレッドアイが壊せって言った話が正しければそれもまた黒のフードの願い?どちらが正しいのか。壊すか、抜くか。
”迷うな、時間がねぇ。抜けよ、帰るんだろ?向こうの世界へ”
私はこの言葉で目が覚めた。何を迷っていたんだか。壊したら戻れないじゃないか。
私は黄金の傘を引き抜く。
”よくやった。待ってるぞ、こっちの世界で!!”
「おう!!」
抜いた瞬間に崖が崩れ落ちた。それと同時に大きなトンネルの入り口が出来上がった。それは私たちがこの世界に入った入り口のようである。そして止まっていた者たちが動き始めるのだった。




