十一話「山田行彦という名の男」
山田行彦は私たちに傘を向けている。私と雪下さんは彼に向けて傘を持つ。
「君たちが今の私に勝てるとでも?」
「勝てる?そんなことはどうでもいい。俺はあの時から……秋彦、お前はそのまま座ってろ。立つな!!」
私は木のそばで座ってる彼に背を向けながら言う。
「何だよ、しばらく経ったのに付き人かよ。秋彦くぅん?ほら、こっちにおいでぇ?」
「秋彦、耳を貸すな!!ただの挑発だ」
「何も……何も聞こえねえよ……」
私は後ろを振り返って彼を見る。そこには雪下さんが彼の耳を両手で塞いでいた。
「これで大丈夫でしょ?誰かが言ってたわね、あれは私たちの知らない行彦だって」
「あぁ、そうだな。でもあれは行彦だ。だから一緒に帰るぞ。お前だけじゃねぇ、秋彦も雪下さんもそれからここにいないミルキー団全員も。誰も俺の手から離させねぇ、二度と知り合いを離させねぇ!!行くぞ、行彦!!」
「来いよ?お子ちゃま団長ぅ?」
私は二つの傘を持ち、両手を振り回す。それと同時に傘から火を放つ。
「効かねぇよ」
彼の傘に私の傘がぶつかり、弾き返される。
「やるな」
「弱っ、団長ぅ」
「これならどうだ?傘の破月」
二つの傘を密着して重ねたまま両手を縦に振るう。
「だから効か……んんっ!!」
彼は傘で防ごうとしたが、そのまま弾かれて宙に舞いつつ地面に叩きつけられた。そして目を回している。どうやら勝ったようだ。後はこのまま意識が戻ってくれればいいのだが。
次回より、「黄金の傘」編、始まります。ついに物語の大詰めが始まる。




