十一話「ただいまが言える場所」
建物の屋根に赤い旗が風で靡いている宿の扉を叩いた。そう言えば場所を聞かされてはいないが、大きな城で『赤傘団』と書かれていれば恐らくレッドアイさんの所属する場所だって分かった。
ドアをノックする。
「敵か?よし、俺様がドアを開ける」
扉の向こうで人が立つ気配がした。そしてものすごく鈍い音が聞こえた。
「あっ……やっちった」
「やっちった……じゃねえよ!!ドアノブ壊すとはアホか。敵にでもドア押してもらうように頼めばいいんじゃねえか?」
この声はレッドアイさんのようだ。
「そういうわけで押してもらえますでしょうか?」
「何かしこまってんだよ、お前はホテルマンか何かかよ」
私は扉を押す。勢いよく開いて扉は私たち二人を床の上へと滑らせた。
「何だ……お前らは食堂のとこにいた奴らかってことは……うん、だいたいの状況は読めた。来ましたよ、レッドアイさん」
「あぁ、見れば分かる。お前はアホか……それと……お前ら、なぜノックした」
「だって知らない人の家だから」
「ほう。俺は知ってるよな」
「レッドアイさん」
「正解。だからお前らはこれからはここをノックしなくていい。代わりに一言。『ただいま』と言えばいい。ただそれだけだ……ん?なぜ泣く?」
私は彼に言われて彼女と顔を見合わせる。一筋の涙が両目から流れ出していた。前までは言っていたその一言はこの世界に来てから言えなくなっていた。いや、言ってはいけない言葉だと暗黙の了解で思い込んでいたのかもしれない。その許可が下りて、安心してしまったのか涙が流れた。彼女も同じだろう。
「ごめんなさい」
「違うだろ?今、言いたい言葉は。お前もだ、雪下」
私は彼女と顔を見合わせて頷きあって一言言う。
「ただいま!!」
「あぁ、おかえりなさい」
こうして私たちはこの団に歓迎されたのだった。
次回以降から「お互いの修行」編始まります。よろしく。




