十話「二つの傘と二人の人間」
雲人形に向けて私の手に持つ二つの傘はそれぞれの手によって振り払われていく。だが、振っていて分かる。利き手ではない左手の方が明らかに弱い。だからこそ、そっちは一瞬だけ敵の動きを止めることしか出来ないため右手をその相手にも振らなければならない敵に振らなければならない。
「効率が悪いなぁ」
「ねぇ、両手を広げて体を回転させればいいんじゃない?アニメとかでやるじゃん」
「馬鹿言え。アニメは映像、俺は生身。回転したら吐く」
「んじゃ、吐け」
「小悪魔か!!」
そうは言っても周りには雲人形がわんさか居るのは事実。少しでも素早く倒すには多少の困難は必要である。
私は両手をやや斜めに広げて回る。緑色の野原一色だったのが、灰色だったり青色だったりと色が混ざっていく。そろそろ限界だ。そのまま倒れるかのように両手に持つ傘を野原に突き刺した。さすがに吐くまでは行かず、喉寸前で飲み込み直した。
「やればできるわね」
彼女は私を狙っていた雲人形を手に持っていた傘で一振り払って倒した。
「これで最後よ」
「ありがとう」
雲人形共は倒した後、なぜか上に上がって行った。そして私の目に映るのは野原の上に立つ一人の少女の照れた顔だった。地面に刺した傘を引っこ抜いて、その顔に向き直って言う。
「宿へ行こうか」
「ええ」
私たちは来た道へと足を並べて戻って行くのだった。




