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九話「今、あなたの手にしてる傘を預けるから」
彼女はその傘を受け取った後、私に黒い傘を二本渡してきた。
「この傘を預ける代わりにそれやるわい」
「なんで傘二つ?」
「この傘を調べ終える前にまたお前さんの顔を見るのはゴメンだからよ。だからもし一本使用後に壊れたらとしてお前さんには予備としてそれを腰に……」
外の様子が騒がしい。私は彼女の話の途中ではあるが、外に出て騒がしい理由を見る。そこには黒い雲で出来上がった目や鼻と言った顔のない人形が何匹もこの屋敷を囲んで集まって来ていた。
「あわわわ……」と店主のおばさんは怯えた表情をしている。
「おばさん。今、あなたの手にしてる傘を預けるから……早く私に使わせて下さい」
「君……傘を両手になんてこの目で二人ぐらいしか見たことないよ……それに君、見たところ練習したことなさそうだし……大丈夫かい?」
「やれやれ、私のことを忘れですか?おばさんはこの人の言うことに従って置いて下さい。大丈夫ですよ、何かあれば私がこの手で何かあれば彼を止めますから」
「そういうことなら……」
おばさんは店の中に戻って行く。
「行くか」
「私に命令?……ってねぇってば……」
私は勢いよく足の裏を蹴っ飛ばして雲人形へと突っ込むのだった。




