五話「悪夢」
宿に帰ってから身支度を済ませるなり、男部屋の中でベッドに入り込んだ。周りにいた者たちに話しかけようとするも、一日色々なことがあって疲れたのだろうか、すぐさま寝てしまったらしい。そう考えて横たわっていた私もいつしか瞼は落ちていくのだった。
「おい、何やってんだ?指示しろ。敵は一人だぞ?」
私の目の前には両手が広がっていた。それは紛れもなく自分のだった。そしてその手……いや、体ごと小刻みに震えていた。
そして声をかけている男は私の前に立ち、そう告げていた。彼が誰なのかは知らない。だが、彼と私は赤いフードを身に付けていることは見て分かった。
「おい、隊長!!前隊長……彼だけではないな。前々隊長の殺された仇を取るんだろう?あいつを殺して……」
「お前に殺せねえよなぁ?」
目の前にいた男は黒いフードを被った男に傘で心臓を貫かされると共に口から一筋赤い血を垂れ流していた。その声に聞き覚えがあったし、この世界に入る前に会ったあの黒いフードの容姿と似ている。そしてそのフードの中から現れた顔はさらに私が知る人物だった。
「だってお前のお兄ちゃんだもんな!!」
そこにいたのは死んだと思い込んでいた私の兄だった。驚いたことはそれだけではない。私が赤いフードの輩に入って隊長になったことと赤いフードの男はどうやら殺されたらしい。つまり今日のことを考えると、この国で一番か二番あたりの偉い隊長だろう。そんな私を守るかのように周りの仲間が彼に傘で攻撃をする。その中には雪下すみれさんの姿もあった。
兄は退くことなく、仲間たちを倒していった。
「もう遅い!!」
そう言う彼の足元には雪下さんの動かない体が目を見開いたまま横たわっていたのだった。




