五話「何のために」
私たちは目の前にいる彼のスピードに合わせて階段を駆け抜けて行く。
「お前ら、俺から離れていろ」
彼の言葉通り足を止めて距離を取る。すると白いフードの男が現れた。彼と傘を交わえている。
「おい、これはどうなってやがる?王宮を守る者が何してやがる?」
「ふん!!」
白いフードの一払いで彼は反動で遠ざかる。それと同時に複数の白いフードが来る。
「ちっ。その白は何もしないことを象徴するんじゃなかったのか?……まぁ、そんなことはどうでもよい。白いの一人でも死ぬ確率が高いって言うのに……ん?……いや、そうでもねえか。なぁ?」
彼は私たちに向かっていたずらをした子どものようにニヤリと笑う。そして私たちに命令する。
「その傘で目の前にいる敵を倒せ。白を赤く染めてやれ!!」
「は?何言ってんの!?戦い方も知らないのに?」と雪下さん。
「傘を剣のように扱え。いや、お前らにとってはハエを捕まえるハエ取りか」
「……無理だよ。怖いよ」とすみれ。
みんな怖がってる。そんななかで私はリュックから例の傘を取り出して敵に襲いかかる。彼の言う通りやると、なかなか上手くいくようだ。ぶつかり合った拍子に金属音が鳴り響いてる。金属音……?
「何で金属音!?」
「何なんだ、こいつ。体も小させえ癖にパラソルアーツも小せえ。俺に適うわけねえだろ?」
私は力み過ぎたせいで手元にあるボタンを押してしまった。カチッという音がなると共に銃声が響く。その拍子に傘の本体部分が少し前後に動いた。そして……。
「あっ、なんかごめんなさい……え?」
目の前の男は頭に小さな穴を開けられてその場に倒れた。
「ふっ。見たことのない武器だが、上出来だ。他の仲間も頼むよ」
「これよりミルキー団に命令を下す!!傘で敵を討て……白を赤く染めてやれ!!死ぬより怖いものなどない!!」
私のその言葉に仲間たちは動き出した。何のために今、ここでこんなことをしているのかを自分たちに分からせるように。