三話「この世界」
西洋の城は中でも変わらなかった。大きなシャンデリアが天井に何個か飾られている。天井の上は床で見えないようになっている。周りには階段に向けて繋がっている赤いカーペットが広がっていた。
私たちはその赤いカーペットに沿うように階段を駆け上がる。何回広がった床を見たのだろうか。そんなことは数えることもなかったので分からない。だが、最上階まで上り切って私たちの人数が一人減っていたのが分かった。
「行彦は?」
「そういえばいないね。何かあったんじゃないの?あの怪しい大きな鏡が気になるし」
「途中のか」
秋宮すみれが言うように確かにあの鏡は気になる。だが、山田行彦は眼鏡をかけていた。それが不意に外れてしまい、来るのが遅れて血迷っているのだろうと考えたくなる。
「あれは麗しの鏡と呼ばれてこの門を抜けた先の女王や姫君たちが好んでいるものだ。それを愚弄するとは聞かれていたら処刑される……と言いたいところだが、前にこんな噂があった。その鏡は”人を吸い込む鏡”と。通称”悪夢道鏡”。お前ら、彼を取り戻しに戻るか?」
彼の傘が私たちに向けられる。
「日本ではそういう武器は禁止なんだ」
「ニホン?そういえばそういう国の名をどこかで聴いたような……まぁ、よい。とにかくここは別だ。これを使わなくては生きていけない、ここは”パラソル・ザ・ワールド”だ。さぁ、選べ」
彼は相変わらず傘をこっちに向けて来る。みんなの困った顔が私を見る。私は一息吐いて言う。
「戻らない」
そう言った私の顔を黄金の扉が反映して見せびらかしてくるのだった。
更新遅くなってすみません。また、次の更新は今週の金曜日以降になります。