八話「先の道はあっても後ろの道はもうない」
私たちはまぶしい光に包まれる。草原が広がり、森が広がっている。
「ねぇ、戻ろうよ。絶対、この世界嫌な予感がするもん」とすみれは私たちに声をかける。
「戻りたければ戻れ」と明彦。
「待て。ここは集団で動いた方がよい」と私はみんなに声をかける。
「じゃあさ、どうすんだよ。この状況……」
明彦は私に言葉とは異なった弱った眼差しでこちらを見る。
「あのぅ。お話中悪いんだけどさ。後ろもまた塞がれたらしいわ。どうしたものかしらね?」と雪下さんは私たちが来た洞窟の道を指差して言う。
彼女の言う通りそこに道はない。あるのはその真上に刺さっている棒か何かであるが、遠くで見えない。
「リーダー、どうする?」と明彦は聞いてくる。
この状況を何とかしたい。しかし緊急な時に逃げ場がないこの状況で前に進めなどと言えることはない。また、立ち止っていてもそれもまた何も始まらないのは確かである。そんなことを考えていた私はリーダーならぬことを吐いてしまった。
「……何も分からない」と。
その時、前から何かが近寄る物音が聞こえたので前を見ると、そこには青色のフードを被った集団が立っていた。
「やたら困っているようだが、そこで何をしている?」
傘を構えたままこちらを向けている集団のフードの中にある眼差しは私たちを助ける目ではなく、まるで私たちに何か恐ろしいことをする鋭い目だった。