結構ハードな世界で、私だけ魔法少女とかいうふざけた職業なんですが。
──聖皇歴736年
魔族の苛烈な侵攻により人間勢力は危機的状況にあった。
人々は故郷を、世界を、そして愛するものを守るため、絶望的な状況の中戦いに赴いていく。
いつか魔を打ち倒すであろう、勇者が現れるまで。
そして今日も、強い志を秘めた一人の少女が神殿へと向かった。
「……名を」
「キーレン村のメリッサと申します。神官様」
少女の住む辺境の小さな村でさえ、何人もの人たちが魔の勢力への戦いへと赴いている。すぐ北の村が魔物に襲われたと聞いて、少女はいてもたってもいられなく、こうして戦う力を求めたのだ。
圧倒的に不利な状況の中であっても、人間には希望があった。
いつか現れるであろう「勇者」と、人々をお守りくださる神が授け給う「天職」という力が。
「よろしい、祈りなさい。あなたの秘めたる力を開花させるように」
「はいっ!」
神官に向かって頷いてみせ、少女メリッサは目を瞑り祈った。
「天職」を授かった者たちは、魔の勢力と戦う力を得ることができる。
戦士、魔法使い、武闘家、僧侶……なんでもいい。
私にも、力を……!
そう祈った途端、大きく、暖かな力に包まれる。
顔を上げると、神官は微笑んでいた。
「……メリッサ、あなたに与えられた天職は──」
◇◇◇
「くっ……薄汚ぇ豚野郎が!!」
遠めに見えるオークの軍団を見て、戦士はそう吐き捨てた。
あれは、最近この一帯の村を荒らしているオークの軍勢だろう。
ひとたび村が襲われれば男は殺害、女は凌辱、子供たちは奴隷という非道の限りが尽くされている聞く。
先日立ち寄った無残な村の姿を思い出し、戦士は強く唇を噛んだ。
……ここは人間の国だ。
それを、あの妖魔どもは蹂躙しようというのか……!
「おい、騎士団はまだ来ねぇのか!」
「わかってんだろ。今はどこも妖魔どもの侵攻を止めるので手いっぱいだ。こんな辺境に回せるほど人手は余ってねぇってな!!」
戦士の隣へと立った武闘家が唾を吐く。
すでに、彼は戦闘態勢へと入っている。
……やる気だ。彼は、あのオークの大軍勢をここで食い止めようというのだ。
どう見ても無謀だ。戦士たちのパーティーは所詮数人の寄せ集まりだ。
どんな手を使ったとしても、あのオークの軍団に敵う訳がなかった。
しかし、そうだとしても……
「まっ、俺も退く気はねぇけどな……!」
彼らの背後には、人々が身を寄せ合う小さな農村がある。今から避難していては到底間に合うものではない。
……そして、そこには戦士が将来を誓い合った女がいる。
一秒でも長く、罪なき人々が逃げる時間を稼がなければならない。
たとえここで死のうとも、あの薄汚いオークどもを通すわけにはいかないのだ……!
「ふっ、ご一緒しますよ」
「まぁ、ここまで来たら一連托生ってことで」
「難しい言葉使ってんじゃねーよ」
僧侶、賢者、盗賊も戦士の元へとやってきた。
元々彼らは義憤に駆られて神託を受け「天職」を手に入れた者たちだ。
ここで、退けるわけがないのだ。
ただ一人、最後尾に控えていた少女だけが震えながら俯いていた。
「……メリッサ、お前は戻れ」
戦士がそう声を掛けると、俯いていた少女がはっとしたように顔を上げる。
彼女は少し前に戦士たちのパーティーへと加わった者だ。
確か職業は魔法使いだったか……若い女という身で戦おうという志は見上げたものだ。
だからこそ、惜しい。
私情は入るが、戦士は彼女をここで死なせたくなかった。
「お前は戻って、村人たちの避難を助けてやってくれ」
「ですがっ……!」
少女が慌てたように言い縋る。
だが、他の仲間たちも彼女に戻るようにと諭し始めた。
少女は何も言えなくなったようで、ぎゅっと目に涙を溜めて拳を握っている。
「頼む、メリッサ。……エリダという女に会ったら伝えてくれ。愛していると」
それだけ言うと、戦士はオークの軍団の方へと向き直った。
ここで自分は死ぬだろう。だが、怖くはない。
愛するものを守るためなら、この命など惜しくはない……!
「……行くぞっ!」
合図とともに走り出す。
少女を除いて、頼りになる仲間たちは全員がついてきた。
戦士はにやりと笑う。
せめて、派手な死に花を咲かせてやろう。
◇◇◇
「はあぁぁぁぁ!!」
戦士の放った一撃は、確かにオークの脳天を貫いた。
すでに血やら様々な液体で切れ味の悪くなった剣を引き抜き、すぐさま戦士は次の獲物へと刃を突き立てる。
まだ仲間たちは自分の足で立ち戦い続けているが、もう長くはもたないだろう。
足元はオークの死体で足の踏み場がないほどだ。だが、次から次へとオークの兵士は途切れることなく襲い掛かってくる。
また一体のオークを切りつける。だが、その瞬間背後から殺気を感じ戦士は身をかわした。
だが、疲れ切った体はバランスを崩してしまう。
「ぐっ!」
オークが雄たけびを上げて武器を振り上げる。
もはやここまでか……と戦士は天を仰いだ。
次の瞬間、凛とした声が響き渡った。
「待ちなさい!」
不思議なことにその場にいた誰もが──オークたちまでもその声の持ち主を振り返る。
そこには……残してきたはずの少女メリッサが立っているではないか!
「馬鹿! 戻れ!!」
若い女を目にし、オークたちが下卑た笑い声をあげる。
だが、少女がひるむことはなかった。
「早く戻れ、お前の手に負える相手じゃない!!」
「大丈夫です。だって私……」
メリッサは顔を上げると、花が咲くように笑った。
「魔法少女ですから!」
「……は?」
次の瞬間メリッサは高らかにハート型の宝石がついたピンク色の杖……らしきものを掲げると、恥ずかしげもなく大声で叫んだ。
「メルティー! フェアリー! トゥインクル☆ミルキーウェイ!!」
シリアスな雰囲気をぶち壊すような間抜けな呪文が響き渡る。
その途端どこからかファンシーで軽快なBGMが流れ出し、戦士たちの体は凍り付いたように動かなくなった。
「うわっ、なんだこのBGM!」
「説明するメル!」
「うぉっ、なんだこの淫獣!!」
いつの間にか、戦士の目の前に羽の生えたピンク色の犬のぬいぐるみ……のような何かがいた。
つぶらな瞳が戦士を見つめている。ちょっとキュンと……しない。
駄目だ……こんなふざけた生物に心当たりはないっ……!
「淫獣じゃないメル~、メルルンはブリリアント王国から来た妖精メル!」
「……は?」
「変身バンクの間は攻撃しちゃダメなんだメル~、お約束メル~」
ハート型の杖の先から光があふれだし、メリッサの全身が発光しはじめる。
「うおっまぶしっ」
「ちょっと裸っぽく見えるけどえっちな想像しちゃだめメル~」
「しねぇよ!」
メリッサは空中でクルクル奇妙な動きを繰り返している。
ピンクのリボンのような光が、まるで彼女の衣服になっているかのように胴や手首へと巻きついていく。
そして、唐突に光が弾けた。
「愛と希望の魔法少女、ミルキーウェイ!!」
そこには、見ているだけで恥ずかしくなるようなフリフリの衣装をまとったメリッサらしき少女がいた。
彼女の茜色の髪は燃えるような真紅に変わり、村娘らしい素朴な三つ編みのおさげはドリルのような巻き毛に変わっている。
メリッサらしき少女が決めポーズをとると、彼女の背後が発光し「シャキーン」とでもいうような効果音が流れた。
「やべぇ、マジ意味不なんすけど……」
いつも理知的な賢者の語彙力も崩壊している。
戦士たち一行は、この意味の分からない状況をただぽかんと見ているしかなかった。
「人々を蹂躙するオークどもは、この魔法少女ミルキーが成敗いたします! とうっ!」
メリッサあらため魔法少女ミルキーは天高く跳躍すると、そのまま一匹のオークの脳天へと踵落としをキメた。足先からハートや星形のエフェクトが飛び散る。
ファンシーな光景だが、オークの頭に亀裂が入りそうなほどヒールがめり込み、かわいいエフェクトで誤魔化さなかったらかなり悲惨な絵面になっている。
……うわぁ。
「プギィ……」
オークはなぜか嬉しそうな顔で真後ろに倒れ、そのまま動かなくなった。
「破ぁっ!」
続いてミルキーが右手を正面に突き出すと、そこからピンク色でハート型のビームが飛び出て一気にオーク十匹ほどを貫いた。
体にハート型の風穴が空きドミノのように倒れるオークたちが実にシュールな光景であった。
「ミルキー! このままじゃきりがないメル!!」
「くっ、どうすれば……」
ミルキーはオークたちに善戦している。
だが、数が違いすぎた。
敵のオークはまだ数十匹、下手すれば百匹は残っているのだ。
このままではジリ貧になり、くっころはまぬがれないだろう……!
「こうなったら、みんなの愛と勇気を貰って必殺技を使うメル!」
「そ、その手があったね……!」
ミルキーはぐっと拳を握り締めると、現実逃避に「あの雲昔飼ってたワンコに似てるな……」などと空想に耽っていた戦士たちの方を振り返った。
「お願い、みんなの愛と勇気を私に!」
「わかったミルキー、どうすればいい!?」
「順応早いなお前!!」
目をキラキラさせた僧侶が素早く立ち上がる。
常に落ち着いた彼の変貌に、戦士は思わずズコーと体勢を崩した。
「みんなの愛と勇気を込めて、トゥインクル☆ステッキを振ってほしいメル!!」
遂に頭が狂ったのか淫獣がわけのわからないことを言い出した。
「ちょっと待てよ。そのトゥインク……なんとかってなんだ」
「みんなが手に持ってるそのステッキメル!」
「はぁ? 俺が持ってるのなんてこの愛剣しか……」
思わず手元に視線を落とし、戦士はまたヽ(・ω・)/ズコーとその場で滑った。
いつの間にか彼が握りしめていた数多の戦いを共にした愛剣は、ピンク色で先端に星とハートのついた魔法のステッキへと変貌していたのだ!
「うぎゃああぁぁぁぁ!!」
「今メル! トゥインクル☆ステッキを振ってミルキーを応援してほしいメル!!」
「ミルキー! がんばえー!」
ブルータスお前もか……と戦士はごつい体躯に似合わず純真な瞳でステッキを振る武闘家を死んだ目で眺めた。
「がんばえー! まけうなー!」
「ファンタスティック! ウェルカム!」
「М・A・H・О! М・A・H・О!」
野太い声で応援コールを繰り返す仲間たちを眺め、戦士は泣きたくなった。
あぁ愛しのエリダ、俺が一体何をしたというのか……。
「あぁ、まだパワーが足りないメル! そこの君!!」
空きれい……と呆然自失状態に陥っていた戦士の元に、ピコピコと奇妙な音を立てながら淫獣が飛んでくる。
「君の愛と勇気をミルキーへと送ってほしいメル!」
戦士はのろのろと顔を上げる。視線の先では、メリッサ……ではなくミルキーが果敢にオークの群れと戦っている。
自身の手元に視線を落とすと、ピンク色のファンシーなステッキがきらきらと輝いている。
「…………」
そして、戦士は覚悟を決めた。
「ミルキー! がんばえー! まけうなー!!」
戦士の愛と勇気は、確かに魔法のステッキをピカッと輝かせたのだ!
「感じる……みんなの愛と勇気……」
男たちの愛と希望パワーを受け取ったミルキーが感極まったように胸元に手を当てる。
そして、彼女は凛とした表情で戦士たちを振り返った。
「ありがとう、みんな。これで、絶対に負けない!!」
ミルキーは天高く舞い上がると、自身の杖を高く天に掲げた。
レトロなBGMと共に、まばゆい光が溢れ出す。
そして、ミルキーは渾身の力で叫んだ。
「ミルキー=トゥインクル☆エスカレーショーン!!!」
「ウボァー」という情けないオークの断末魔と共に、あたりはピンク色の光に包まれた。
そして光が消え去った後、オークの軍勢は一掃されていた。
そしてそこにいたのは魔法少女ミルキーウェイ……ではなく、戦士たちの良く知るメリッサだったのだ!
「メリッサ!」
いつの間にかオークたちの死体はお菓子の山へと変わっていた。
もうよほどのことでは動じない戦士は、クッキーをがしがし踏み分けメリッサへと駆け寄る。
「なんだと……もしやメリッサが魔法少女ミルキーだったのか……!?」
「いや最初っからわかってただろ」
すっとぼける仲間たちを置いて、戦士はメリッサに笑いかけた。
「すごいなお前! まさかお前が魔法少女……?だったとは。ありがとう、メリッサ。これからも一緒にこの地域を守っていこう!」
「その、あの……ごめんなさい!」
メリッサは先ほどの堂々とした態度はどこへやら、あわあわと戦士たちに向かって深く頭を下げた。
「正体を知られたら……もう一緒にはいられないんです……」
「そんな……」
「でも大丈夫。みんなが愛と勇気を持ち続ける限り、みんなとミルキーは繋がってるから……」
「……あぁ!」
よくわからないままノリで頷いた戦士に、メリッサはにっこりと笑った。
「それではみなさん、また来週!」
最後にそう言って、メリッサはやっぱりピンク色のまばゆい光に包まれる。
戦士たちの目が慣れた頃には、もうそこには短い間彼らと行動を共にしていた少女の姿はなかった。
「行ってしまったな、円環の理に導かれて……」
きっとミルキーは次に困っている人の元へと言ったのだろう。
少し寂しいが、大丈夫だ。
だって、心はいつでも繋がっているから!!
「よし、夕日に向かって走ろうぜ!」
「おう!!」
沈みかけた夕日に向かって、戦士たちは走り出す。
彼らが我に返り、頭を抱えてごろごろするのは……このわずか3時間25分後のことであった……。
◇◇◇
「ううぅぅぅぅ……」
「ミルキー、どうしたメル?」
ワープを繰り返したどり着いた適当な街の宿屋で……私は激しい自己嫌悪に陥っていた。
そんな私の心情を知ってか知らずか、淫獣……ではなく妖精のメルルンがかわいらしく首を傾げる。
その途端、抑えていた感情が爆発した。
「うわああぁぁぁ!! 恥ずかしいよおぉぉぉぉ!!!」
魔法少女(笑)
トゥインクル☆ミルキーウェイ!(失笑)
ミルキー=トゥインクル☆エスカレーション!!!(爆笑)
もう草や竹どころか世界樹でも生えそうな勢いだ。
冷静になってみると、というかならなくても今すぐマグマに飛び込みたいほど恥ずかしい!
あぁ、誰でもいいから私の因果律を書き換えてくれないものか……。
「なんで、なんで私だけ魔法少女とかいう職業なの……!」
あの日、私に「天職」が授けられた。
……「魔法少女」という唯一無二の職業が!!
……どう考えても世界観を間違えてる。
みんなが剣や木製の杖を駆使して血と泥にまみれて戦っているのに、なんで私がファンシーなステッキを振ると変なエフェクトが出て敵がスイーツや宝石に変わるのか!!
「えぇ~でもミルキーはその力でみんなを助けてるメル!」
「そうだけどさぁ……」
威力だけは申し分ない。ある意味チートレベルだ。
変身バンクの間は無敵だし、みんなの愛と勇気を貰えば敵の軍団だってあっという間にレッツ☆クッキングなのだ。
オークだろうがトロールだろうがビ〇ルダーだろうが、この力があれば敵ではないのだ!
ただ、羞恥心で私の心が死んでいくだけで!!
「ううぅぅぅ……いい年してトゥインクル☆とか寒いよぉ……」
「大丈夫メル! いつまでも子供の心を持ち続けることが大事なんだメル!!」
「ちょっと名言みたいに言わないでよぉ!!」
あぁ、あの頼もしい仲間たちは今頃私のことを魔法少女(笑)みたいに馬鹿にしてないだろうか……。
魔法少女だと知られたのがあまりにも恥ずかしすぎて、「正体を知られたら一緒にいられない」とか適当な設定を作って逃げてきてしまった。
うぅ、こうして逃げるのも何度目だろう……・
いつも、正体がばれるたびに(羞恥心で)こうして仲間の元から離れてきた。
……いつまで、繰り返すのだろう。
「欲しいな、仲間……」
私の正体を知っても、温かく迎えてくれるような……。
一緒にスイーツを食べにいったり恋バナしたり……いやいや、一緒に隣で戦ってくれるような仲間が欲しい、切実に。
「ミルキー、成長したメル……」
気がつけば、メルルンがなんとなく真剣そうな顔でじっと私の方を見ていた。
まさかエントロピーがどうこうとか言い出すのではとドキドキした私の前で、メルルンはふぅ、とため息をつく。
「メルルンがブリリアント王国から来たって話はもうしたメル?」
「あ、うん……よく聞いてなかったけど」
私が魔法少女の力を手に入れた日、気がつけばこの自称妖精が一緒についてきた。
最初にブリリアント王国がなんとかとか言ってたけど、魔法少女という職が与えられたことがショックすぎて、正直細かいことは全然覚えてない。
「今、数多の世界が滅亡の危機に瀕しているメル」
「うわっ、急に重い話しないでよ!!」
魔法少女のキラキラ☆アラモードな雰囲気に流されて忘れがちだけど、この世界の状況も結構悪いんだっけ。
メルルンはそのぬいぐるみのようにつぶらな瞳で、じっと私を見つめていた。
「ここだけでなく、ブリリアント王国や他の世界……多くの世界が危ない状況なんだメル……」
「ふーん……」
……そういえばメルルンの性別はどっちなんだろう。今までは勝手に女の子だと思ってたけど、もしや男の子の可能性もあるのでは?
うぅ……気になる。でも今更聞いて意識してると思われるのも嫌だし……。
もういいや。妖精だし性別はないってことにしておこう……!
「……世界を救うのは、魔法少女たちの力なんだメル!」
「うはっ!?」
やばい、全然聞いてなかった……。
……ん? 魔法少女「たち」……?
「もしかして、私の他にも魔法少女がいるの……!?」
「……数多の世界に魔法少女がいるメル」
おぉ、なんか壮大な話になってきたぞ……。
「世界を救うには、散らばった魔法少女を集め、トゥインクル☆クリスタルに輝きを取り戻す必要があるんだメル!!」
「おぉ……!」
「ミルキー、メルルンと一緒にいろんな世界に魔法少女を探しに行ってほしいメル!!」
メルルンはふわりと浮き上がり私の腕の中におさまった。
その首に括りつけられた宝石がきらりと光る。
「まさか、これがトゥインクル☆クリスタル……?」
「いや、これはただのガラス玉メル」
「まぎらわしいわ!」
……メルルンの言ったことはぶっちゃけほとんどわからなかったけど、それでも私には希望が見えていた。
どこかに、私と同じ魔法少女がいるという希望が!
同じ魔法少女ならきっと……この、今すぐ消え去りたいような羞恥心を分かち合えるはず……!
「よし、行こう。魔法少女を探しに!!」
「それでこそミルキーだメル!」
メルルンは嬉しそうに私の肩に乗ってきた。
「なんでも?」
「できる!」
「なんにでも?」
「なれる!!」
みんなの未来を守るため、魔法少女トゥインクル☆ミルキーウェイは戦う!
いけ、ミルキー!
負けるな、ミルキー!!
輝く未来を掴むまで!!!
「М・A・H・О! М・A・H・О!」
場末の宿屋の一室でハイテンションで踊り狂っていたメリッサの元に、うるさいと苦情が来るのはこのわずか8分後のことであった……。
たまには童心に帰りたくなる時もありますよね