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第八話

今回は少し短めですがゴブ太目線です。





「いっ、痛いゴブよ!もっと加減してほしいゴブ…。」

「うっるせえな!言われなくても思いっきり手加減してるよ!つーかお前もちょっと顔に拳が当たったぐらいでピーピー喚くんじゃねえ!」

「ちょ、ちょっとって言ったゴブか!?俺の事をそこからここまでぶっ飛ばすのがユージにはちょっとゴブか!?無茶苦茶ゴブよ…。怖いゴブよ…。」

「チッ、わかったよ。次はもっと気を付けてやるから、続きやんぞ。ほらお前が来ねーならこっちから行ってやろうか?」

「まっ、待つゴブ!次は本当に気をつけてくれるゴブな!信じるゴブよ!それじゃあ………行くゴブ!」




 俺は今、奇妙な人間と生活を共にしていた。


 この人間は俺が今まで見てきた人間とは少し違う。今まで俺達魔物を見つけると悲鳴をあげ逃げていくか武器を持ち俺達を殺しに向かってくるのが普通だった。大抵は武器を持った人間と対峙したら被害を受けるのが目に見えているので結局こちらが逃げることになる。要するに人間とは分かり合えることなんて絶対にありえないのだ。


 だが目の前にいる男は違った。出会いこそ仲間に無理矢理襲い掛かるように言われ豪快に返り討ちにあったのだが、その後こちらをそれ以上痛め付ける事もなく俺と会話をしてくれた。


 それも多少強引な部分はあるけれど対等な、俺をバカにするわけでもなく真っ直ぐ目を見て会話をしてくれた。


 こんなことは初めてだ…。


 仲間の中でも体の一番小さな俺はいつもみんなにバカにされていた。本来俺達に上も下もないはずなのに、ことある毎に無理難題を言われそれでも居場所がそこにしかない俺は仲間外れにされたくない気持ちで笑って言うことを聞いてきた。正直今までよく人間に殺されずに生きてこれたと思う。


 この男と出会ったときも




『おい、あそこに鳥みたいな頭した人間がいるぞ!』

『ホントだ!おいお前!あそこの人間襲ってこいよ!武器を持ってる様子もないしそんなに強そうに見えないからお前でも大丈夫だろ!』

『お前のすぐ後に俺達も行ってやるから!ほら!』

『『早く行けよ!!!』』




 俺はなにも言い返せず黙って頷き向かっていった。どうせなら俺の姿を見て逃げていってほしいな………立ち向かってこられたらどうしよう………など考えながらとにかくヤケクソで男に近づき武器を振り上げた。


 そして気がつくと何故か湖で泳いでいた………。

 

 とにかく必死で陸まで泳ぐと目の前にさっきの人間がいた。多分普段なら逃げたと思う。でもその時の俺は半ばパニック状態で自分の思うことをとにかく男にぶつけたのだ。


 そして次の瞬間何故か横たわっていた………。


 男は横たわる俺に座るように命令するとよくわからないことを色々言ってきた。人間の住み処まで連れていけとか俺の仲間に会わせろとかどう考えても無茶苦茶すぎる。


 俺はとにかくこの場をどう切り抜ければ良いか考えてみた。考えたけど全くなにも思い付かない…。


 すると男はそんな俺を見てなにか思うことがあったのか突然



「お前…虐められてんのか?」



 なんてことを言い出したのだ。正直なんて答えれば良いのかわからない。

 俺は生まれたときから今日までアイツ等とこの生活を続けてきた。あそこしか俺の居場所はないし、今までアイツ等とすごしてきた日々が俺の普通の生活なのだ。何度もバカにされてるのも自覚していたし、自分が仲間にとって本当は必要じゃない存在なのかと考えたこともある。でもそれを本当に認めてしまうと自分の居場所がなくなる気がする。


 男の問い掛けにとにかく必死で言葉を並べてみた。


 だが男はそんな俺を見て予想していなかったことを言い出したのだ





 「おい!悔しいって気持ちがあるならよ、俺も少し付き合ってやるから、アイツら見返そうぜ!」





 正直悔しいなんて思ったことはない。だってそれが俺の日常なのだから。だから男の言う言葉がピンとこなかった。

 

 でも……もしも何か変えることが、変わることができるなら……。


 そう一瞬思った俺は男の勢いに押されたのもあり、この日から目の前の男『ユージ』との生活を始めたのだ。


 そこからは驚きの連続だった。《筋トレ》《食事》《組手》どれも最初は意味がわからなかった。これでアイツ等を見返すことが出来るのか。自分が何か少しでも変わることができるかなんて全く思えなかった。


 でもそれも最初だけですぐに考えが変わった。そしてそれと同時にユージのことを徐々にだが信じれるようになった。


 それはユージが俺をちゃんと見てくれてるのが伝わってきたからだ。

 俺が何かするとその度《褒めてくれる》《笑ってくれる》《叱ってくれる》それも俺をちゃんと見てだ。


 それが俺にはたまらなく嬉しかったんだと思う。こんな気持ちは生まれて初めてだ。


 正直何のために色々なことを始めたのかなんて忘れてしまっていた。


 この生活が続くならもうなんだって良いとさえ思っている。どうせアイツ等のところに戻っても以前と同じになるのならユージとこのまま楽しく暮らしていたい………。



 だけど当然そんな日々が続くはずもなかった………。


 



『なぁゴブ太、一ヶ月近くたったしそろそろ大丈夫だろ?今のお前ならもうアイツ等に負けねえよ!だから明日で訓練は終わりにすんぞ!』





 突然のユージの言葉に俺の思考は完全に停止した………。

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