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第七話



 翌日、目が覚めた俺は日課にした朝の筋トレを行うゴブ太の元に向かった。初日の時点ではこの先どうなるかと思った筋トレも日を重ねる毎に回数をこなせるようになり



「………188……199……200ゴブよ!あっユージ起きたゴブか。おはようゴブ~。朝の筋トレ今終わったからすぐご飯にするゴブよ~。」



 いや、朝飯の準備とかは良いとして……急成長しすぎだろ……。2週間ぐらいしかたっていないのに、普通なら月単位で徐々に効果が出るはずの筋トレも人間以外にはここまですぐ結果が出るものなのか…?

 それに初日こそ「食べても食べなくても同じゴブよ~」みたいなことを言ってたが焼き魚をとにかく気に入ったらしく、まあ良く食う。確実に毎食俺の二倍近くは食べやがる。実際に魚を捕まえてくるのはゴブ太なのでいくら食ってもいいんだがよ。


 そして毎日しっかり食事を摂り適度な運動をした結果…今のゴブ太はどこからどう見ても普通の健康そうな人間の子供だ。それも恐らく顔面偏差値は俺より高い…。出会ったときは青白かった顔も血色が良くなり、ガリガリでアバラまで浮き上がっていた体にもしっかり肉がついた。確かにゴブ太を鍛えるとは言って始めたことだが結果出るの早すぎじゃね?

 正直もう少しここでゴブ太との生活が続くと思っていたけどこの様子だとそろそろ大丈夫そうだな。


 それに俺にも気になることもできた。昨日の夢の中に出てきた自分の事を神と名乗る男ゼクス。アイツが言ったここは自分が作った世界だとか俺は二度と元の世界には戻れないとか…。

 普段なら寝てる間の出来事で当然信じるはずも記憶にも残らないはずなんだが今回は少し違う。俺は確かにバカだ。でもそんなバカでもそれなりに思う部分はあった。夢にしては実際に俺が見るもの触れるもの全てがリアルすぎる。それに俺の目の前にいるコイツ、ゴブ太の存在がそもそもありえない。ゴブリンとか何のゲームの世界だよって感じだしな。

 でも、だからと言ってアイツの言うこと全てを素直に信じれるわけもないし、今はまだわからないことが多すぎる。俺はゴブ太の用意してくれた魚を食べながらこれからどうするかと考えた。考えたが……当然答えなんか出るはずがない。

 するとそんな答えのでないことをウダウダと考えている俺を見て不思議に思ったのか



「ユージさっきからどうしたゴブか?怖い顔したりボーっとしたり不気味ゴブよ…。あっ、もしかして魚不味かったゴブか…?ごめんゴブ…。次はうまく焼くから怒らないでほしいゴブよ…。」



 なんてことをビクビクしながら言い出した。こいつはホントに…体は成長したように見えるけど心まではこの短期間で強くなるわけないか。そんなゴブ太を見てなんだかホッとしたような、毒気を抜かれた俺はとりあえず考えることをやめた。

 今はまずコイツを強くしてやらないとな。別に急いでる訳じゃないしコイツとの約束を果たしてから考えても遅くないだろう。何もスッキリはしていないが今自分ができること、するべきことを再認識した俺はとりあえず手に持った魚を一気に食べた。



「ワルイワルイ。別に魚も不味くねえし怒ってもねえよ。てかよ、いつまでも俺の顔色見てビクビクしてんじゃねえよ。何か気にくわないことがあれば俺がお前に遠慮なんてする分けねえんだから普段通りにしてりゃ良いんだ。いい加減慣れろよ。」

「そっ、そんなこと言われても難しいゴブよ…。」

「そりゃそうだろうがよ。まあその辺はいっか。てかゴブ太に聞きたかったことがあるんだけど、筋トレ始めて効果って言うのかお前自身なにか変わった実感はあんのかよ?」



 心の強さは一朝一夕で身に付くとは思ってないが見た目が明らかに変わったゴブ太の自己判断と言うか今の状況を知りたく聞いてみた。



「ん~………。変わったと言われてもわからないゴブが……多分以前よりも重たいものを楽に持ち上げたり早く動けるようになったとは思うゴブよ。」



 その返事はとりあえず効果が出ていると思ってもいいんだろうな。身体的なレベルアップを確認できた俺は次にゴブ太の臆病な心を鍛えようと思う。いくら体を強化できても性根が今のままでは相手に立ち向かうことなんてできないからだ。だけどこれに関しては良い手が何も思い付かない。要するに根性鍛えるってことなんだろうけど…どうすればいいんだ?どこかの誰かを倒してこいだの普通の人がビビりそうな事をやってみろとか言いたいところなんだが、今の状況を何一つ理解していない俺がそんな事を言えるはずもないし………まあなるようになるか。

 とにかく俺は闘争心の欠片も感じないゴブ太に自分が今思い付いた事を告げた



「俺の感じた通りの結果が出てきてるのはわかった。んじゃ次の段階に進むか。」

「つ、次の段階ゴブか?」

「おう。体ばっかり鍛えても意味がねえからな。午後からは俺といっちょ組手でもしてみるか。」

「くみて?組手ってなにゴブ?」



 筋トレの時と同様、聞きなれない言葉にビクビクしているゴブ太の目の前に俺は説明するよりも早いと思い突きを繰り出した。



「なっ、なにするゴブか!?やっぱりなにか気にくわなかったゴブね!?謝るから許してほしいゴブ!いっ、痛いのは嫌ゴブよ…。」

「だから一々ビクついてんじゃねえよ。それにさっきも言ったけど別になにも怒ってねえっての。組手するって言ってんだろ。」

「だからその組手がわからないゴブよ!何で突然殴りかかるゴブか!?ユージは普段からバシバシ叩くからわからないゴブよ…。」

「別に普段からそんなに殴ってねえだろ。まあ組手ってのは要するに本気じゃねえ戦いと言うか……説明するのも面倒くせえからとにかくかかってこい。お前相手に本気で反撃したりしねえからよ。」

「戦いって俺とユージでゴブか!?そっ、そんなの無理ゴブよ!?」



 突然戦うだの殴りかかってこいだの言われても戸惑うのも当然だ。だが俺はそれ以上言葉を発するのを止め、ウダウダ言ってるゴブ太を無視し身構えた。暫しの沈黙の後、そんな俺を見たゴブ太は諦めたような表情を一瞬見せると



「わ、わかったゴブよ…。ユージの事だからきっとこれにも何か意味があるゴブね…。じゃ、じゃあ行くゴブよ!でも痛いのはできる限り止めてほしい…」

「うるっせえ!ウダウダ言わずにかかってこい!」

「は、はいゴブ!じゃあ行くゴブよ!」



 こうしてゴブ太を鍛える第二ステップに進んだのだ。




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