第五十四話
「冥土の土産に教えてやろう。それでいったい何が聞きたいんだ?」
俺達は城に入って直ぐ、冒険者と遭遇した。
どうやら俺達がここに来るのが最初かわかっていたらしく、必ず通るところで待ち伏せしていたようだ。
しかし少しだけ会話をしてみて思ったのだが、俺達を殺すように言われ金で雇われているのに妙に緊張感がない。
多分殺しを専門でやってるのではないのだろうが、それにしてもだ。
そこで俺は相手のリーダー格の男から城内の情報を聞き出すことが出来ないか一芝居うってみることにした。
すると予想通りどころか有り得ないぐらい相手が乗ってきたのだ。
「あ、ありがとう。じゃあ……ここに男が一人で乗り込んできたりしなかったかな?40代ぐらいのさ、結構渋い感じの人なんだけど……。」
俺はまずゼファさんの足取りを追うことにした。
ラルさんの前から姿を消したのは確実なのだが、そのままここに来たとは限らないからだ。
ここに来る前に、ラルさんからは多分冒険者協会を出てそのまま単独でここに乗り込んだはずと言われて直ぐに来てみたが、実際のところ何の確証もない。
なのでゼファさんが本当にこの場所に来たのかを最初に確かめたかったのだ。
階段の上にいる男は、俺の言葉を聞くと腕を組み考え出した。
そして一言言い放ったのだ。
「知らねえな。」
「あ?てめえ今なん……っと、知らないってどういう意味ですかね……?」
男の発した言葉に、一瞬だが下手に出て話を聞き出そうとしているのを忘れかけた。
しかし直ぐ我に返り改めて聞き直してみた。
だが男が再び発した言葉は先程と同じだったのだ。
「だから知らねえっての。」
「え~っと……だから知らないってのはどういう意味かって聞いてるんだろうが……聞いてるんじゃないですかぁ~…。」
「お前バカだな~。知らないものは知らないんだよ。意味なんて聞かれてもそんなものはないの。」
やべぇ……。話を聞くためにとりあえず大人しくしてるが、このバカぶん殴ってやりてえ……。
俺は今すぐにでも飛び掛かりたい気持ちを圧し殺して、何とかその場に留まった。
しかし、知らないってのは言葉通りに受け取って良いのだろうか。何か知っているがそれを隠すためにこの場ではそう言ってる……風には見えないな。
となるとコイツは本当になにも知らないのか……。
この時点ではまだ何もわからないので、この男との会話をもう少し続けてみることにした。
「バ、バカですいません……。ってことはおま……貴方はそんな人なんて見てないってことなんですよね?」
「だからさっきからそう言ってるだろ。知らないってことは見てないってことなんだよ。まあ俺が来たのもついさっきだから知るはずねえんだけどな。」
「……ついさっきって……?」
「あぁ~、昨日の夜中に来るよう言われてたんだけどよ~、酒飲んで寝ちまってて起きたらついさっきだったんだよ。いやぁ~焦ったわ。ガハハハハハ。」
「………。」
どうやらこの男もさっきこの場所に来たらしい…。
そりゃ何も知らなくて当たり前だな。
話を聞き出せるかと思い下手に出てみたが、肝心の話をする相手がバカすぎてどうやら話にならないようだ。
「アンタは頑張ったわよ……。でも、アイツからは何も聞き出せないんじゃない……?」
「……ユージお疲れ様…。」
「お、おう…。今すぐにでもアイツをぶん殴ってやりてえが、あと一つだけ確認したいことがあるからもう少し待っててくれ……。」
何故かポミとホミから小声で労われている俺。
とりあえず二人にも言ったが、あと一つ気になることがあったのでそっちを聞いてみることにした。
「じゃあ、あと一つだけ良いですかね?」
「あぁ~?まだあんのかよ。でもまあ慈悲深いこの俺だからさ、お前みたいなバカな奴でも最後まで相手してやるよ。さあなんでも聞いてこいよ。」
「……マジでコイツ殺してえ……」
「ん~?今なにか言ったか?聞こえなかったぞ~。」
「いや、何も言ってませんでございますよ!えっと、それじゃあ最後に一つなんですけど、この城に兵士っていないんですかね?さっきからそれらしい人も見掛けないし、詰所ももぬけの殻でしたよ?」
俺はこの城に入って直ぐに感じた違和感を男に尋ねてみた。
正直ゼファさんのことも知らないと言われた後なので全く期待はしていないが一応だ。
しかし男の口からは予想外の答えが返ってきた。
「全員休みだ!」
「はっ、えっ……す、すいません、今なんて言った?」
「だから全員休みだって言ったんだよ。」
「休み……?それってのは……」
「あぁ~?また意味を教えろって言うのかよ?普段ここにいる奴等は全員今日は城に居ないの。城に居るのは俺達だけなの。」
「……。」
ど、どうやら今この城のなかに居るのは俺達だけらしい。
これを言葉通りに受け取るなら王もゼファさんも居ないことになるんだが……。
どうもコイツと話していると調子が狂う。いや違うな……マジでイライラする……。
だけどここまで我慢したのだからあと少しの辛抱だと思い会話を続けてみた。
「えっと、つまりここにはこの場にいる奴以外は居ないと…。ってことは王様とかもですかね……?」
「おっまえはホンとにバカだな~。城に王は居るに決まってるだろ。」
「ぐっ………。で、でも城には俺達しか居ないって……。」
「そんなことイチイチ説明しないとわからないとは思わねえよ。仕方ないな~…おバカなお前にもわかるように説明するとだな、ここには王は居るしその側近も居る。ただこの城を普段守る兵だけがいないの。お前達の相手をするのは雇われた俺達だけだから。わかったか?」
「……あぁ……良くわかったぜ……。要するに無関係な奴は居ないってことだろ……。」
これでスッキリした。仮に戦争をしたい王を止めるにしても、多分末端に居る奴等は何もわからずにただ命令に従って俺達に襲い掛かってくると思っていたからだ。
さすがにそんな奴等を全力で叩きのめすのは、多少だが気の引ける思いがあっただけにこれは聞いて良かったと思う。
あとはそこで偉そうにこちらを見下ろしながら話をしている奴を倒して進めば良いってことだな。
俺はここまで聞いた話を整理して、まだこちらに向かって話をしている奴を睨み付けた。
階段の上で男はまだ一人喋り続けている
「しかしよ、ヤンキーとかいう聞きたことない組織が攻めてくるから気をつけろって言われたけど何のことはねえ、実際に来たのは頭の悪いガキじゃねえ……ぐえええええ!」
「誰が頭の悪いガキだよ。まあ実際は頭悪いんだけどよ、てめえらには言われたくねえんだよ!」
これ以上の話を聞く必要もなく、遠慮することもないとわかった俺は、今だ話をしている男めがけて炎の拳を打ち込んだ。
男は突然のことに全く反応出来ず、俺の放った拳をモロにくらい後ろに吹き飛んでいった。
「ユージお疲れ様……。黙って見てるだけで疲れたわよ。」
「……ポミ、気を抜くのはまだ早いよ…。あの人達来る。」
「あーイライラした!しかしまあ、とりあえずコイツ等全員叩きのめして先に進むだけだな。よっしゃてめえら、どっからでもかかってこいやぁ!」
無駄に長話をしてゼファさんの事は何もわからなかったが、先に進むためにもまずはこの場にいる奴等を全て倒すことにしたのだった。




