第五十三話
俺達は外に居た兵士を蹴散らし城の中に足を踏み入れた。
てっきり入った瞬間から侵入者を排除するために大量の兵士がこちらに襲い掛かってくると思っていたが、妙なことに城内は静まり返っていた。
「ねえ、何で誰も中に居ないの?」
「……それ私も同じことを考えていた。」
どうやら俺だけではなく二人も同じことを考え身構えていたようで場内の静けさに戸惑っている。
それにしても入ってみてわかったが、この中とにかく広いぞ。廊下も横幅が広く天井なんて俺の身長の三倍は軽くありそうな高さなので外から見た以上にそう感じる。
「これ、手がかり無しでゼファさん探すのきつくね?」
「……うん。でも急がないと父様が……。」
「まあな~。仕方ねえ、怪しいと思ったところは片っ端から調べて回るか。」
しかしそうは言ってみたものの、正直全て怪しく見える。誰か見つけて中の事を聞ければとも思ったが、今の俺達に素直に教えてくれる人なんて居るわけないし……。とにかく目的の場所が何処だかわからない以上、今は見つけた部屋を片っ端から調べていくことにした。
とりあえず先程から気になっていた、入って直ぐ目の前に部屋に入ることにしたのだ。
扉を開け中に入ると、部屋の外と同じく良い素材で造られているのだが何故か雰囲気が違う。
そしてその違和感は部屋を見渡して直ぐに気がついた。
「ここあれか、城を警備する奴等の部屋だな。」
「多分そうよね。整頓はされてるけど使い古された剣や盾が壁に立て掛けられてるしね。」
どうやらこの部屋は居住スペースではなく兵士が待機する場所として使われているのだろう。
掃除も整頓も気をつけているのだろうがどこか雑な感じのする部屋だ。
そして入って直ぐにわかったがここにも何故か誰も居ない。
普通こんな場所になら数人は待機してそうな気がするがもぬけの殻なのだ。それにもう一つ気になる点があり思わず口にした。
「城の中には警備してる兵士居ないんじゃねえのか?」
「まさかぁ~?兵が警備もせずに城を空にするなんて有り得ないでしょ?何故そう思うのよ?」
「いや、その辺を見てみろよ。武器も盾も片付けるべき場所にキッチリ置いてるんだろうが、その場所に一つも空きがないんだよ。巡回するなら手ぶらなわけねえだろうし、外の騒ぎを聞いてれば尚更武装して行くだろ。」
「……言われてみれば確かにそうだね…。つまりこの部屋からは何も持ち出してない……。」
「持ち出してないってか、最初から誰も居なくてその必要がそもそもなかったのかなってよ。」
外で俺達を捕まえる為に集まった兵士達を見た後だからこそ余計に気になった。
侵入者の存在を知ってるのに誰も襲ってこないことや、この部屋を使用した形跡もないことが少し不気味にすら感じる。
「とりあえずこの部屋には何もなかったんだし、次の部屋を目指さない?わからないことをこれ以上考えても時間の無駄な気もするしさ。」
「ん……あぁそうだな。こんなところで無駄にする時間は俺達にはねえもんな。」
俺と同じく二人も多少の違和感を感じているようだったが、ポミは切り替えて次の部屋を目指そうと言ってきた。
確かにここでゼファさんの手がかりになるそうな物もないと思い、この部屋を出ることにしたのだ。
再び廊下に出た俺達は、入り口から奥へと続く道を真っ直ぐ進むことにした。
すると程無くして二階へと続く大きな階段が見えてきたのだ。
当然二人にも同じ物が見えているはずなので、特に言葉を交わすことなく俺達は階段のある場所まで進むことにした。
すぐに廊下は途切れ俺達は階段の直ぐ近くまで辿り着いた。そこは二階へと続く大きな階段を正面にして、それを囲むように造られた広間のようだ。
さて、これからどうするべきか…。ホンの少しだけ歩いて思ったが、やっぱりこの広さで闇雲にゼファさんを探しても全く見つけれる気がしない。
俺の独自理論の偉い奴は上に居て、誰かを捕まえるなら下ってのを試すのも適当すぎる気がする。
後ろの二人も当然この先のことなんて知るはずがないので、俺の次の行動を待っているようだ。
ここは自分の勘を信じて進むべき道を決めるか悩んでいると、俺達に向けて突然上から声が聞こえてきた。
「やっぱり外の奴等じゃ無理だったみたいだな。しかし残念だが、お前達が進めるのもここまでだよ。」
「あ?んだてめぇら?」
声のした方を見上げると、階段の一番上に明らかに兵士とは思えない粗雑な見た目をした男達がこちらを見下ろしていたのだ。
多分真ん中で腕を組み偉そうにしてる奴がボスなのだろう。
その男はニヤニヤしながら言葉を続けた。
「どんな凄い奴等が来るのかと思ったがガキじゃねえか。あの人も心配しすぎなんだよ。こんなことなら、別に俺達じゃなく城の兵に任せても良かったんじゃねえか。」
「だからてめえら誰なんだっての。それにさっきから兵士が見当たらねえけどそれもてめえらと関係してんのかよ?」
身に付けている物がそれなりにしっかりしている様に見えるのでただの雑魚ではなさそうだ。そして何故か俺達がここに来ることも最初からわかっていた様な口振りが少し気になり俺は一番偉そうな奴に尋ねてみた。
すると男は、俺達の姿を見てやる気を無くしたのか気だるそうに答えたのだ。
「口の聞き方を知らねえガキだな!でもまあ……どうせお前らはここで死ぬんだしどうでもいいけどよ。それでなんだって?俺達が何者かって聞いたよな?」
「あぁ、ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと答えろよ。」
「ホンと生意気なガキだな。別に答える必要はねえが冥土の土産に教えてやるよ。俺達はここの主に金で雇われた冒険者様だ!てめえらみたいなガキが話なんて出来ないレベルの強さなんだぞ!どうだ、ビビっただろ。」
「……いや、ビビるわけねえだろ……。」
俺はあの夜誘われて断ったが、どうやらコイツ等はこの国に勧誘されその話しに乗った冒険者らしい。
ってことは実力はそこそこあると思って良いんだろう。
しかしそれ以上にコイツと少しだが会話して思ったのが、確かに言われてみれば見た感じは腕の立つ冒険者なのかもしれないが、頭はかなり……半端なく悪そうだ。
そこで俺は、この男からここの事を聞き出せないか少し演技をしてみることにした。
俺はまず、頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。
「うわぁ~、俺達もここで終わりなのか~。でもこんな強そうな人に出会したら仕方ないのかな~」
「ちょ、ちょっと突然アンタどうしたのよ!?」
「しっ……俺に考えがあるから黙って見てろっての。」
「えっ、あっ、うーん…。」
俺の言動にポミは驚き駆け寄ってきた。しかし俺は近付いてきたポミに小声でこの場は任せるように指示をしたのだ。
さて、気を取り直して……。
「俺達の人生もここで終わりなのかぁ~。でも仕方ないよな…こんな場所に乗り込んだのだから……。ハッ…今気がついたけど、あの人凄く強そうだぁ~。もう終わりだぁ~。」
「ガハハハハ!ガキども、やっと俺の偉大さと自分達の愚かさがわかったかぁ~。」
「はい……。今さら助けてくれなんて都合の良いことも言えませんし。でも…最後に、死ぬ前に少し質問しても良いですか?どうせ死ぬならスッキリしてから死にたいので……。」
「あぁ~?まあどうせここでお前らは終わりだし別に構わねえぞ。この強い俺に何でも聞きやがれ!」
かかった!やっぱりコイツ頭悪いぞ!
俺が何をしようとしているのか最初はわからなかったようだが、直ぐに理解してここまで黙っていたポミとホミが小声で呟いている。
「アイツ……バカね。」
「……かなり残念だね……。」
「お前ら止めとけ!聞こえたらどうすんだよ!」
何はともあれ、これで多分だが先に進む手がかりを得ることが出来たのだった。




