第五十二話
「ぞ、賊だ!賊が侵入したぞ!だ、誰かそいつ等を止めろ!」
「賊か……。へへ、結局どこへ行ってもそう呼ばれちまうのかね~。まあ別にいいけどよ。」
俺達三人が敷地に足を踏み入れると、入り口の前で腰を抜かし尻餅をついたままの門衛が場内の人間に知らせるため大声で叫んだ。
すると近くにいて声の聞こえた兵士達が凄い勢いで入口付近に集まってきた。
正確な数は当然わからないが、ざっと見た感じ三十人はいると思う。
そして入り口の前で倒れている仲間の姿をみて俺達が聞こえてきた賊だと判断にしたのか、集まってきた兵士が全員手にした武器をこちらに向けて構えだしたのだ。
「へー、こりゃすげえな。まだ全然進んでないのにいきなり囲まれちまったぞ。」
「な、何呑気なこと言ってんのよ!アンタこれいったいどうするつもりよ!?」
「どうするって……別にどうもしねえよ。」
自分達の目の前を囲まれてポミが慌てて俺に尋ねてきた。
俺としては入口で騒ぎを起こした時点で遅かれ早かれこうなると思っていたので特に慌てることなくホミにそう答えた。
別にどうもしない。さっき言った通り好きにやらせてもらう。
俺は武器を構えてこちらを取り囲む兵士達に声をかけた。
「え~っとよ、怪我したくなかったら全員道開けてくんね?別に全員ぶっ飛ばすつもりはねえからさ。ただ邪魔するなら話は別だけどよ。」
言うだけ無駄なのは理解していたが目の前の兵士達にこの場から退いてくれないか尋ねてみた。
まあ不法侵入者を見過ごすとは思えないが一応だ。
そして帰ってきた言葉は予想通り真逆のものだった。
「怪我したくなかったらこの場から退けだと?キサマ等こそ状況がわかっているのか!?王の居城に無断で侵入した罰……万死に値すると思え!」
「ですよね~。まあこっちも黙って退いてくれるなんて思ってねえけど無駄な時間も過ごしたくなかったから一応声をかけただけだよ。んじゃ交渉決裂ってことでやるかぁ~。……二人ともお互いの身の安全だけを気にして俺の後をついてこい。」
「「わかった。」」
一人の兵士がこちらに声をかけると辺りの空気がピリッと引き締まった。こちらに向けて武器を構え、侵入者を排除しようと殺気だった兵士達が今にも飛びかかってきそうな雰囲気だ。
しかし俺はその雰囲気に呑まれることなく後ろにいる二人に声をかけた。
そして再び兵士の声がその場に響き渡ると同時に俺達の戦いは始まったのだ。
「侵入者をこの場から逃すな!者共、かかれぇ~!」
「死なねえ程度に手加減はしてやるよ。しゃぁ~オラァ!てめぇら、俺の拳は当たるといてえぞ!灼熱爆拳!」
号令と共にこちらに襲い掛かってきた正面の兵士達に向けて、昨晩地下牢で戦った老人に使った炎の魔術を解き放った。
俺が右拳を振り抜くと、拳の形をした特大の炎が兵士達を襲う。
「な、なんだこれは!?」
「う、うわあああああああ……」
「ヒイィィィィィィ……」
まさかいきなり自分達に向けて特大の炎が飛んでくると思っていなかった兵士達は避けることも出来ず直撃した。
見ると正面に居た兵の半分近くは今の攻撃で吹き飛び倒れている。
「チッ、思ったより減らなかったな。」
「ちょ、ちょっとアンタ……こんなのいつの間に……」
「ん?あぁ~、話はとりあえず後だろ。こいつらまだやる気みたいだしな。」
もう少し今の一撃で数を減らせると思ったのだが、殺さないように手加減しすぎたのか成果はイマイチだった。
しかし今の魔術を初めて見たポミはその威力に驚き俺に問い掛けてきたのだが、今はのんびり話している場合ではなさそうだ。
「ひ、怯むな!か、数ではこちらが上だ!陣形をとり一斉にかかれぇ~!」
「当然気合いの入り方がチンピラどもとは違うよな。」
最初に派手な一撃を決めれば周りは戦意喪失してこの場から退くかとも思ったが、さすがは王を守るために訓練された兵士達だった。腰が退けたのも一瞬だけで、号令と共に直ぐ様気持ちを立て直すと再びこちらに向けて武器を構えだした。
しかしそんなことは国家権力様を相手に好きに暴れていたおれだ。当然予想出来る範囲内だったので相手が襲い掛かってくる前に次の行動に移っていた。
「捕まりゃ死刑確実だし、こっちじゃ遠慮なんてしてる場合じゃないからな。オラ行くぞ!筋力増強!」
相手が立て直してこちらに近付く前に、俺は魔術で身体能力を底上げして兵士達の中に突っ込んだ。突然の事に俺の周りに居た兵士達はただ驚くだけでこちらの動きに全く反応できていない。
そして俺はとにかく近くにいる兵士達を一人、また一人と手当たり次第に素早く殴り倒していったのだ。
やべえな……なんだか楽しくなってきたぞ。
「オラオラオラオラ!王を守る兵士の実力ってのはこんなもんかよ!もっと気合い入れてかかってこいや~!次はどいつだぁ!」
「……ユ、ユージ…もう誰も立ってないよ……。」
「んあ?もう全員叩きのめしちまったのかよ。」
ホミに言われて自分の周りを見てみると、いつの間にかその場で立っているのは俺達三人だけになっていた。
少しはしゃぎ過ぎたかもしれないな。
そしてその様子を近くで見ていたポミが呆れた様子で話しかけてきた。
「あ、あんた無茶苦茶ね…。助けてって確かに言ったけど、ちょっと今の動きは引いたわ…。」
「んだよ……訓練してると思ったからもう少し歯応えあると思ったのに……チッ、つまんねえな。」
「あんた鬼でしょ……。」
テンションに任せて近くにいる奴等を手当たり次第に攻撃していたら、いつの間にか集まってきた兵士達を全て叩きのめしていたようだ。
そして何故かポミにはドン引きされている。
正直なところ、もう少し苦戦するかと思って最初から飛ばしただけに肩透かしを食らった気分だった。
しかしこれで自分達の邪魔をしてくる奴等が居なくなったわけじゃないのもわかっている。
「とりあえずこれで城の中に入れんだろ。さっきも言ったけど前は俺に任せてお前らは自分達の周りだけに意識を集中してりゃいいからな。」
「……うん、わかってる。」
「言われなくてもわかってるわよ。でもアンタも十分気を付けなさいよね!父様が捕まるんだからこの程度で終わるとは思えないわ。」
ゼファさんが捕まったのは別の理由な気もたしたが、それをイチイチ言う必要もないと思いここは黙って頷いた。
それに俺を襲った奴や地下牢で戦った老人の仲間がここにはいると思う。
そしてそいつ等がこの国の王様ってのを操ってる可能性が高いだけに衝突は避けられないだろうな。
俺は気合いを入れ直して先へと進むことにしたのだった。




