第五十一話
俺は冒険者協会を出て王の元へ向かうことにしたのだが、早速困ったことが起きてしまった。
「やっちまった……場所聞いてくるの忘れたわ。」
ラルさんに俺に任せとけってカッコつけて出てきた手前、今さら場所を聞きに戻るわけにも行かないし、とりあえずその辺の人に聞いてみれば良いかと人通りの多い広場に向かうことにした。
そして広場に辿り着き適当にその辺の人から場所を聞こうと辺りを見渡して気がついた。
なんだよ、真っ正面にあるじゃねえか。
広場から入り口のある方とは真逆の位置に、一際大きく豪華な造りの建物が目に飛び込んできたのだ。恐らくあれが王の居城だと思う。
俺は先に行った二人に早く追い付こうと急いで自分の正面にある建物に向かい走ったのだ。
「お願いします、中に入れてください!父がこの中に!」
「ならんと言っておるだろ!そんな話は聞いておらんし、あまりおかしな事を言っているとキサマ達牢屋にぶちこむぞ!」
「……本当なんです。私達の父、ゼファが王の元へと向かっているはずです。」
「先程から何度同じことを言わせる気だ!そんな奴は来ておらん!早々にこの場から立ち去れ!」
城の近くまで辿り着くと何やら言い争う声が聞こえてきた。
どうやら入り口で門衛と揉めている奴等が居るようだ。
良かった、まだ中に入れてなかったんだな。
近付くとそれがポミとホミの二人だと直ぐにわかった俺は、とにかく二人の傍に駆け寄った。
こちらを背にして城の中に入ることだけに意識が向いている二人は、俺が近付いていることに気がついていない。
しかし門衛は城に向かって走り寄ってくる俺に気がつくと、一人はポミとホミの相手をしているがもう一人が手にした槍をこちらに構え声をかけてきた。
「そこのキサマ止まれ!用の無いものがこの場所に立ち入ることは許さんぞ!」
「あ?言われなくても止まってやるからちょっと待てよ。」
「「え!?」」
俺は言われるまでもなく城に近付くにつれ走る速度を落とし、ゆっくりと二人の直ぐ後ろまで歩み寄った。
門衛に答えたので当然二人の耳にも俺の声が聞こえたようで、こちらに振り返り何故か驚いている。
「……ユージどうしたの?なんでここに?」
「わ、私達を止めに来たのね!?さっきも言ったけど父様を助けるまでは村に返るつもりはないんだからアンタだけでも帰ってなさいよ!」
「ようホミ。ポミもそう邪険にすんなっての。てか何こんなところで揉めてんだよ。」
俺の姿を見て二人共驚いていたが、それも一瞬の事で俺がここに来たのは、この場所から自分達を連れ戻しに来たと思ったようでポミがこちらに噛みついてきた。
するとその様子を見ていた門衛の一人も俺がこの二人を連れ戻しに来たと思ったようで命令するように声を荒げたのだ。
「キサマこやつ等の仲間だな!先程からずっと意味のわからないことを言っててこちらも困っておる!さっさとこやつ等を連れてこの場から立ち去れ!」
「私達は何を言われても絶対に帰らないからね!どうしても連れて帰りたいなら力ずくでやってみると良いわ!」
「まだ俺は何も言ってねえじゃねえかよ。」
門衛の言葉に直ぐ様反応したポミがこちらに向けてそんなことを言ってきた。ポミの横を見ると、隣にいるホミも同じ意見だと言わんばかりの表情をしている。
てか別に連れ戻しに来たわけじゃねえし、むしろその逆なんだけど……タイミングミスったな。
俺は出鼻を挫かれてここからどうするか考えていると、先ほどの門衛が槍の矛先をこちらに向けたまま威嚇するように話しかけてきた。
「おいキサマ聞いているのか!?さっさとこの娘どもを連れてこの場から立ち去れと言っているんだ!おい聞こえないのか!?」
「つーかてめえさっきからうるせえよ……。」
「キ、キサマ今なんと!?」
先程から何故か上から目線で俺に命令するように話をしている門衛にだんだんイライラしてきた。
だが俺はイライラする気持ちを一旦落ち着かせ、先に二人にここに来た理由を告げることにしたのだ。
「てかお前ら何か勘違いしてねえか?俺は別にお前らを止めに来たわけじゃねえよ。」
「……それじゃあいったい何しに来たの?」
「俺が来た理由は……こうするためだよ!」
「「「!?」」」
俺は先程から命令するようにこちらに槍を向けている門衛に近付いた。俺が一歩ずつ近寄る度に手にした槍に力を込めて警戒しているが、反応する間を与えない速度で殴り飛ばしてやった。
そして何が起こったのか理解できない顔をしているもう一人の門衛に告げる。
「俺は別に話をしに来たわけじゃねえんだよ。ちょっと中にいる奴に用があるから怪我したくなかったらさっさとここを開けろやコラ!」
「なっ、キ、キサマ…。」
言われた門衛は目の前で起きたことが理解できずその場に尻餅をついた。
正面突破するつもりだった俺としては最初からこうするつもりだったけど、入り口で揉めている二人に出鼻を挫かれて少しそれが遅くなっただけだ。しかしそんなことは当然知らないポミが、俺の言動に突っかかってきたのだ。
「ちょ、ちょっとアンタ何考えてんのよ!?こんなことしてただで済むと思ってんの!?それに中に用があるって……まさか父様を助けに来たの?」
「あ~?他に中に用なんてねえだろ?つーかお前は何怒ってんだよ?」
「私達に付き合ってアンタまで危険な目に合うに必要なんてないじゃない!アンタの気持ちは嬉しいけど今ならまだ間に合うわ!早くここから逃げてよ!」
「逃げろって、何バカなこと言ってんだよ?仲間が困ってんなら助けるのは当然だろ。それにラルさんも言ってただろ。お前ら二人で何が出来んだよ?」
俺の言葉にポミは俯き一瞬黙ったが、直ぐに顔を上げると唇を噛み締めながら言い放ったのだ。
「えぇ、どうせ何も出来ないわよ!それでも、父様がこの国のために命を投げ出そうとしてるのを黙ってなんて見てられない!私達にホンの少しでも出来ることがあるなら父様の役に立ちたいと思って何が悪いのよ!」
俺の胸倉を掴み涙を流しながらポミは叫んだ。隣にいるホミも同じ気持ちなのか目に涙を浮かべている。
別に誰も悪いなんて思ってねえし、お前らが俺の仲間で父親を思うその気持ちが真剣だから手を貸す気になったんだよ…。
「わかったから泣くんじゃねえよ!ここからは俺が先頭に立って突っ込んでやるから……任せとけっての。」
「……ユージはなんでそこまで私達にそこまでしてくれるの……?」
横にいたホミが不安そうに俺に尋ねてきた。
俺は先程ポミにも言ったことを再び口にしたのだ。
「俺がお前らを助けるのに理由が必要なのか?ん~……まあそうだな、強いて言うならさっきも言ったけどお前らの事仲間と思ってるからだな。仲間がマジで困ってるのに黙って見てられねえよ。これじゃ理由にならねえか?」
俺の答えにホミは首を横に振った。そして気がつくといつの間にかポミも俺の胸倉から手を離していたのだ。
そして涙を拭うと二人は俺に頭を下げた。
「ユージ父様を助けるのに手を貸してほしい。」
「……お願い。」
「だからさっきから手を貸すって言ってんだろ。それじゃあここから俺は好きに暴れさせてもらうけど、お前らはゼファさんの事だけを考えろ。良いな!」
「「うん!」」
こうして俺達三人正面から城に足を踏み入れたのだった。




