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第四十七話






 昨日の夜から展開が急すぎて正直流されるようにここまで来たけど、やっとだいたいの事情が把握できた。


 自分が教われた理由もゼファさんが捕まっていた理由も、そしてこの国の王が他国へ攻めようとしているのもわかった俺はこれ以上ここで聞くことはないと思い部屋を出ることにしたのだ。



「よしっ、聞きたかったことも聞けたし俺はそろそろ行くよ。」

「えっ?行くってどこへ行くんだい?」

「ゼファさん何言ってんだ?もうそろそろ夜も明けそうだし宿に帰って寝るに決まってんだろ?」



 俺がこの場から立ち去ろうとすることに何故かゼファさんは驚いている。しかしその理由も次の一言で明らかになった。



「助けてはくれないのかい…?」

「んあ?助けるって誰を助けるんだゼファさん?」

「いや、誰と言われても……。」



 俺の問いにゼファさんはそれ以上返せなかった。しかしそれも一瞬の事で、再び立ち去ろうとする俺に声をかけてくる。



「わ、私を助けてくれとは言わない!だがこの国を、王を助けてほしい!」

「まあそう言うとは思ったけどよ……。ゼファさんに手を貸したい気持ちも正直多少はあるけどさ、それってちょっと筋違いなんじゃねえかな?」

「筋違い……だと……?」



 俺の返答に再び黙るゼファさん。しかし今回は先程と違い俺が何を言いたいのか多分この様子だと理解してもらうのは難しいと感じたので言葉を付け足すことにした。



「だってよ、アンタ確かに捕まってたのは事実だけど……まだその王様と直接なんの話もしてねえじゃねえか?仮に他国に攻めるってのが本当だとして、それが王様ってのの意思じゃねえなんて何でわかるんだよ?」

「だっ、だからそれはさっきも言ったようにあの方はそんな…。」

「だからそれは俺も聞いたけどさ、それってただのゼファさんの理想だろ?何年も会ってない人間が今も変わらず自分の思ったままの人間だなんてわからねえっての。別にアンタが嘘をついてるとかの話じゃなくてさ、この話は本当に誰の意思なのか、それすら自分の目で確かめることも出来てないのに……アンタは俺に自分の理想の為に命を賭けてこの国と戦ってくれって言うのか?」

「そ、それは……」



 俺は思ったままのことをゼファさんに伝えた。

 

 ゼファさんの言うように、もし操られて他国と争いを起こそうとしているならそれは確かに止めるべきだと思う。だが……もしも王自身の意思でこの国の行く末を考えた結果その答えを出したのなら、俺達が明確な理由もなくそれを止めようとすること自体が王への反逆になりかねないからだ。

 そうなれば王は当然反逆者を捕らえようとするだろうし、最悪殺されるかもしれない。


 だから俺はその可能性を微塵も疑っていないゼファさんに投げつけたのだ。

 言われたゼファさんは黙り込み、こちらを見たまま次の言葉を話そうとしない。そしてその状態で時間だけが過ぎていく。


 チッ、これ以上の言葉は多分無いだろうな……。つまんね~な。



 このまま居てもこれ以上話は進展しないと判断した俺は、今度こそ部屋を出ることにした。



「ってことだよゼファさん。んじゃ俺はそろそろ行くよ。ラルさん、また何か俺への依頼があったら言ってくれ。アンタが認めた正式な依頼なら基本手を貸すぜ。」

「………。」

「今日は助かったわい。また何かあったら連絡するかもしれんでの、それまでお主も元気でな~。」



 俺は二人に手を振るとそのまま部屋を出て宿へと向かったのだった。







 目の前の扉が閉まり、先程までその場所に居たユージと言う名の青年の姿は見えなくなった。


 正直自分の子供ぐらいの歳の子に助けられ、ここまで驚かされるとは思ってもいなかった。あの強さは普通じゃない…。下手をしたら自分より上なんじゃないかと考えさせられるほどだ。

 最後まであの青年が何者か聞くことは出来なかったし、記憶がないなら聞いても無駄だろうけど、更なる経験を積めば将来途轍もない強さまで駆け上がるだろう。

 僅かな時間でそう思わされてしまった程だ。


 そんな青年だからこそ、王をお助けするのに手を貸してもらいたかったのだが……。



「ゼファよ、これからどうするつもりじゃ?」



 扉の前でユージ君の事を考える私に、ネウトラル様は尋ねてきた。

 どうするなんて聞かれても自分の答えは勿論一つしかないな。



「はい、再び王に会いに行こうと思います!」

「やはりそうか……。先程小僧に言われて意地になって……とかではないんじゃな?」



 先程手厳しい事を言われた。国を救いたいと言う気持ちは理屈ではない。寧ろこの国に住む民ならば当然だろうとも思ったが、だがそれを記憶の無い青年に押し付けるのは確かに自分勝手な気もしたのであれ以上の言葉を発することが出来なかったのだ。


 それにユージ君の言う通り、私自身……王の真意を直接確かめることが出来ていない。

 あの当時のまま変わっていないと思いたいが、もしお変わりになっていた時はこの命に代えても争いだけは回避せねば……。



「いえ……確かに虫が良すぎたと思っています。自分の命すらまだかけていないのに今日出会ったばかりの、それも自分の命を救ってくれた青年に命を賭けろなんて、軽率な頼みをしてしまいました……。」

「ん~、ワシも危険を承知でお主を助けてこいと頼んだばかりで耳が痛いの~。……それにあの小僧……お主がもっと全力でぶつかっておれば応えた気がせんでもないんじゃがの……。」

「今なにか仰有いましたか?」

「いや、何も言っとらんぞ。そんなことより再び王の元へ向かうのなら用心していくんじゃぞ。何か手はあるのか?」

「私が以前王の元で働いていた時の者が今も数名居りますので、その者達と連絡さえとれれば何とかなるかと……。」



 実は……打つ手なんてなかった。

 前回城に入れたのは確かにその者達の手引きによるものだったのだが、私が捕まったあとに処刑されたと牢の中で聞かされていたからだ。


 つまり今の私に残された手段は真っ向から乗り込むしかない…。

 しかしそんなことを言えば流石に止められるのが目に見えていたのでここでは咄嗟に嘘をついたのだ。



「ふむ……。ワシが行ければ良いんじゃが、昔と違い軽率に動くことができなくなってしまったからの~。すまんな。」

「お、お止めくださいネウトラル様!ここからは私一人で大丈夫ですので!」

「くれぐれも無茶なことはするんじゃないぞ。」

「畏まりました。それでは……失礼します。」

「……死ぬんじゃないぞ……。」



 深々と頭を下げ部屋を出た。最後微かに聞こえたネウトラル様の言葉を胸に私は再び王の元へと向かったのだった。

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