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第四十六話





「やはり事態は最悪の方向に……。」

「じゃろうな……。そうでなければお主が捕まる理由がないからの……。」

「まてまて!それだけじゃ全くわかんねえよ!俺にもわかるように説明してくれよ!」



 ゼファさんがそう口にするとラルさんは納得していたが、この世界の事すら録にわかっていない俺には二人が何に納得しているのか全く理解できなかった。


 するとラルさんは一度俺の方を見て頷くと、ゼファさんに説明するように言ってくれたのだ。



「ゼファ、すまんが一から説明してやってくれんか?」

「それはもちろん構いません。寧ろ今の状況だとユージ君にも知ってもらう必要がありますしね。でもどこから話をすれば良いでしょうか?」

「ふむ……。こやつここ最近の記憶以外は全て忘れておるそうじゃから少々難しいが、とにかくわかるように説明してやってくれんかの。」

「また無茶な……しかし、記憶がないですか……。わかりました。それではユージ君、先に一つ聞きたいんだが君はネウトラル様の功績はどこまで知っているかな?」



 ラルさんの功績ってなんだ?頭のぶっ壊れたジジイって話ししか聞いたことないぞ。ゼファさんはその事を言ってるのか?


 俺はとにかく自分が聞いたことだけをゼファさんに伝えることにした。



「え~っと、敵も味方も関係なくボコ殴りする狂犬みたいな爺さんでついたあだ名が『狂拳のラル』ぐらいしか知らねえな。」



 自分の知っていることをそのまま口にするとゼファさんは目を丸くして驚いたがそれも一瞬の事で、今は何故か笑っている。

 何がおかしかったのかさっぱりわからない俺は、今だにクスクスと笑うゼファさんに尋ねた。



「なぁ、ずっと笑ってるけど俺そんな変なこと言ったのか?」

「いや、すまない。君をバカにしたわけじゃないんだが気を悪くさせたなら謝罪しよう。」

「別に気を悪くなんてしてねえけどよ、いったい何がおかしかったか教えてくれよ。」

「君のネウトラル様への態度に納得したと言うかね。記憶がないからこそだと理解したよ。」



 ラルさんへの態度ってなんだ?ラルさんはすげえ強くて皆から慕われている人だと思っているから、俺なりに丁寧に対応してるつもりなんだけど…。俺にどういう意味で言っているのかさっぱりわからず考えているとゼファさんは言葉を続けた。



「現代の英雄の一人として称えられているネウトラル様を爺さん呼ばわりする人間なんて数えるぐらいしかいないんだよ。多分この国の王ですらネウトラル様を前にそんな態度はとらないさ。」

「へー、ラルさんってそんなにすげえ人なんだな。」

「そうなのさ。なのに君はご本人を目の前に狂犬みたいな爺さんとか……プッ……」



 説明を続けてくれたゼブァさんだったが、再び先程の俺の言葉を思いだし笑い始めた。

 しかし現代の英雄ね~。どう見てもただの爺さんなんだけど……等とラルさんを見て考えていると、俺の視線に気がついたのか一度こちらを見てからここまで黙っていたラルさんが口を開いた。



「これゼファ、いつまでも笑っとらんでさっさと話を続けんか。小僧ももっとワシを尊敬してもいいんじゃぞ。まあ見た目はただの爺さんじゃがな。」

「おい!何で考えてることがわかったんだよ!?」

「も、申し訳ございませんネウトラル様!」

「勘じゃよ勘。お主が考えそうなことなんぞ顔みてりゃわかるわい。」



 これだからジジイは油断できないんだよな……。

 ゼファさんもラルさんに窘められ、笑うのを止めると背筋を伸ばし再び真剣な表情で話を始めた。



「それでだ、ネウトラル様たちの一番の功績と言われているのが、当時頻繁に行われていた各国同士の争いを終結させ、人類を率いて魔族の王を倒したことなんだよ。」

「は、はぁ……。」

「ん?どうかしたのかい?何かおかしいことでも?」

「いや、すまねえ……。話が全くピンと来なかったと言うか想像できる範囲を超えすぎててこんな反応になっちまった。」



 戦争を終わらせたって部分は頑張れば何となく理解できなくもないが、そのあとの何だっけ……魔王がどうのとかもう完全にゲームとか漫画の世界じゃねえかよ……。

 要するにあれか、ラルさんは俗に言う勇者ってやつなのか?


 あまりにも俺の知る世界とかけ離れた話に頭の整理が追い付かないのだがゼファさんはさらに説明を続けた。



「確かに記憶の無い君にこんな話をして直ぐに理解をしろと言うほうが難しいのはこちらもわかっているよ。それでも説明を続けさせてもらうと、先程話した功績の部分が今回問題になっている点なんだよ。」

「功績が問題ってなんだよ?倒した魔王ってのが復活でもしたのかよ?」



 良くある展開で言うなら、倒したはずの魔王が実は死んでなくて何処かで力を蓄え再びこの世を支配するために動き出したってのが王道な気がしての質問だ。しかしゼファさんは俺の質問に首を横に振る。



「ネウトラル様達が倒した魔族の王が生きていたとの報告は無い。そしてそちらではなく、今問題になっているのは人間同士の争いが再び起きようとしているんだよ。」

「ほ~。ってことは戦争がまた起きるってことか。」



 確かにそれはそれで十分問題なのはわかる。でもその話を冒険者協会のラルさんが危惧するのはわかるけど…ゼファさんはいったい何者なんだ?それに何でゼファさんは牢屋に捕まってたんだ?


 とりあえず何が問題なのかは理解したが、俺の知りたい部分の話にはまだなっていないのでこちらから聞いてみることにした。



「とりあえず終わったはずの戦争がまた起きそうってのはわかったよ。でもよ、それとゼファさんが捕まってたのはどう繋がるんだ?それに先日俺を勧誘してきて断ると襲い掛かってきた奴等は結局誰なんだよ?」

「これ、そう焦るでない。ゼファよ、この小僧は敵になるような人間ではないから思うままに話せばよいぞ。まあ味方になるとも限らんがの。」

「畏まりました。ユージ君の質問は確か、なぜ私が捕まっていたかだったね。簡単に言うと、元々私はこの国の王に遣えていたんだよ。だが数十年前に事情があって私はこの国を去った。そして今回争いを起こそうとしているのが私が元々遣えていた王だとの噂を聞いてね、その真意を確かめるべく数年ぶりに王の元へと訪れたのだがその前に側近に捕まりあの場所に幽閉されていたわけさ。」



 ってことは元々ゼファさんもかなり偉い人だったってわけか。それでこの街のチンピラはこの人の顔を見て逃げ出すし、ラルさんともこんな話をする仲なんだな。

 ここまでの話は何となく理解したので次の質問をさせてもらう。



「でもよ、人間時が経てばどうとでも変わるし元々平和な世の中に不満があったとか、それこそ支配者になりたいとかさ…」

「王はそんな方ではない!奴等に操られているだけなんだ!」



 俺の質問を遮るように突然ゼファさんは目の前の机を叩き声を荒げたのだ。だが直ぐ我に返ると俺に頭を下げた。



「すまない。取り乱してしまった…。」

「いや、こっちこそ聞き方が悪かったのかもな。でもよ、その可能性もその王様を知らない俺からしたらゼロじゃないのもわかってくれよ。」

「当然ユージくんの言い分もわかるし、そう考えても不思議じゃない。だが争い事を嫌い身分など関係なく、どんな者にも平等に優しかった王を知る私にはどうしても信じられないのだ。」

「それで直接聞きに行こうとしたらなぜか捕まって牢屋に入れられてたってわけか。」



 俺の言葉にゼファさんは頷く。まあ昔世話になった恩師みたいな存在が急に変わったと言われても信じられない気持ちもわかる。



「だが私も多少調べてから王に会おうと街で色々話を聞いている内に、最近王の周りに見慣れない側近が増えたと。そしてその者が現れてから王の様子も変わったとの話をいくつか聞いてね。」

「だからさっきの操られてるって話になったのか。」

「そうだね。そしてその者はどうやら腕のたつ人間を集めさせているとの情報も手にいれたから恐らく君を襲ったのも……」

「その王様の近くに急に現れた奴の一味ってことか。」



 ここまでの事情はわかったし結構スッキリした。

 そうなると、ここで俺のとる行動は一つしかないな。



「ゼファさんが何者でなんで捕まっていたかも理解したし、俺を襲った奴等のことも知れてよかったよ。んじゃ俺はそろそろ帰るわな。」

「えっ?」



 なぜか驚くゼファさんを他所に俺はこの場から立ち去ることにしたのだった。


 

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