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第三十二話






 昨晩、謎の襲撃にあった俺達はすぐに冒険者協会に戻った。

 そしてラルさんに何があったのか説明したのだ。


 一通り黙って話を聞いていたラルさんに俺は状況の説明を要求したのだがそこで教えてもらうことはできなかった。



「明日の試験の後に話してやろう。」



 それだけ言うと、それ以上口を開くことはなかったのだ。


 とにかくこれ以上ここに居ても意味がなさそうなので今度こそ宿に行くことにした。

 そして今俺は自分のために用意された部屋でさっきのことを考えていた。


 仲間になれとか言ってたけど何かの組織か?それとも覇権争いとか?もしかしてポミとホミの父親が失踪したのと何か関係があるのか……など色々考えている内にその日はそのまま眠ったのだった。



 そして翌日、目が覚めた俺はラルさんに言われた通り再び冒険者協会に足を運んだ。

 どうやらポミとホミの二人は先に来ていたようで俺の姿を見るとこちらに駆け寄ってきた。



「おはよう。二人ともはええな。」

「おはようってもうお昼過ぎよ!あんたが寝過ぎなの!」

「……ユージおはよう。」



 挨拶もそこそこに済ませた俺はとりあえず受付らしき場所に行き、ラルさんに今日ここに来るように言われたことを職員に伝えた。

 すると伝えた職員は俺達にここで待つように指示すると、バタバタと慌ただしく二階へと走っていったのだ。

 そして数分後最初に話した職員とは別にもう一人男性も一緒に降りてきた。


 どうやらここでラルさんの次に偉く実質一番働かされている人らしい。そしてその人に連れられて、俺達は冒険者協会の地下へと続く道を歩いている。



「ここすげえな、地下まであんのかよ。」

「そうですね。ですが冒険者協会の物と言うよりも有事の際の避難場所などに使われている場所ですよ。」



 そんな会話をしつつ歩いていると、程なくして俺達は目的の場所に着いたようだ。


 そこは一言で言うならだだっ広い空間だった。どう考えても上にある建物の数倍以上のスペースが目の前に広がっている。そして周りを見ると俺達が歩いてきた道と同じようなものが数個確認できた。多分ここに来る為の通路が他の場所にもあるのだろう。確かにここなら王都にどれだけの人が住んでいるのかは知らないが結構な数の人が避難できそうだな。



「おーい、遅かったの。こっちじゃこっちじゃ。」



 すると俺達を呼ぶ声が突然聞こえてきたのだ。俺達は聞こえてきた声の方を見ると、そこには今か今かと待ちわびていたかのように手を振るラルさんの姿があった。


 何であの爺さんあんなに元気なんだよ……。


 俺のテンションとは逆に何故か嬉しそうにしているラルさんを見て今から課せられる試験に気が重くなってきた。

 あの手の爺さんがあんなにテンションが高い時は、周りにとって絶対に録なことがないと俺は思っているからだ。


 俺達を案内してくれた男性はラルさんに一礼すると再び来た道を歩き戻っていった。

 とりあえずここでジッとしていても仕方がないので、俺達はラルさんが待つ所まで行くことにしたのだ。



「もっと早く来ると思っておったから待ちくたびれたぞ。」

「ネウトラル様申し訳ありません。ユージが先程まで寝ておりまして……。」

「別にハッキリと何時に来いって言われた訳じゃねえんだし遅刻じゃねえだろ。」

「確かにそうじゃな。と言うことはお主は昨晩ぐっすり眠れたようじゃな?」

「あぁ、体調は万全だ。んでそろそろ本題に入ろうぜ。いったい追加試験って何をやらせる気なんだよ?」




 いつまでもここで無駄話をする気のない俺はさっさと本題に入ることにした。



「お主はせっかちじゃな。まあよいかの。それじゃあ説明するとじゃな。今日ここでお主にしてもらうのはその力をもう少しワシに見せることじゃ。」

「ラルさんに見せるってどういう意味だよ?」

「な~に、簡単なことじゃ。お主はただ戦えば良いだけなんじゃからな。」

「戦うって誰とだよ?他にも誰か来んのか?」

「別に誰も着やせんよ。戦うのはワシとじゃからな。」

「「「えっ!?」」」



 これにはここまで黙って着いてきていた後ろの二人も驚いている。

 そしてポミがラルさんに尋ねたのだ。



「ネウトラル様お聞きしてよろしいでしょうか?その……戦うとはいったいどういう意味なのでしょうか?」

「そのままの意味じゃ。まあ模擬戦とでも言えば良いのかの?別に命のやり取りをするわけじゃないぞ。」



 その言葉を聞くと二人はどこか安心した表情をしている。


 ラルさんと模擬戦ね~……。余計に気が重くなったな。確かに数年前までは凄腕の冒険者だったかもしれないが、目の前に居るのは殴れば簡単に死にそうな老人なんだよな…。やっぱり録なこと言わなかったな……。


 しかし、当のラルさんは俺の気持ちを無視するかのように試験の内容を説明しだした。



「これは模擬戦と言っても試験じゃからな~。ルールは…とにかくワシの攻撃をお主が10分間耐えきることができれば合格としようかの。」

「そんなことで良いのかよ!?良かったぁ~。」

「ほう?良かったとはどういう意味じゃ?」

「だってよ、10分耐えるだけで良いなら楽勝じゃねえか。これでワシのことを倒してみろとか言われたら手加減するのも大変だからよ。だから耐えるだけで合格ならこっちとしても助かるよ。」



 俺の言葉を聞きラルさんはどこか驚いた様子だ。

 そして何故か身内のはずの二人はこちらに近づくと小声で苦言を呈してきた。



「ちょ、ちょっとユージ!あんたなに失礼なこと言ってんのよ!相手はあのネウトラル様なのよ!怒らせてどうするの!?とにかく試験の前に一回謝って!」

「……今のはフォロー出来ない。ユージ死なないで……。」



 だから二人とも大袈裟すぎるんだよな~。

 吹けば飛びそうな爺さんに何をそんなにビビってんだか。


 だが慌てる二人とは裏腹に当のラルさんは笑っている。



「これは愉快じゃ。手加減……ワシにそんなことを言った奴は久しくおらなんだな。」

「笑ってもらえたならこっちとしても良かったよ。つーか、内容もわかったしそろそろ始めようぜ。」

「そうじゃの。ちなみにじゃがワシを気絶させることが出来ても合格にしてやるから遠慮せず手を出しても良いぞい。」

「はいはい、ありがとよ。」

「よし、今から追加試験を始めるぞ!そこのお嬢さん方悪いが時間だけ見といてくれんかの。それでは……開始じゃ。」



 こうしてラルさんの声と共に試験は始まった。



 俺はとりあえずその場に立ち、5メートルほど前にいるラルさんの出方を待つことにしたのだ。

 10分間耐えるだけって、そんなことで良いなら今回受けたのは良かったなと手をポケットに入れたままボーッとしていると、突然目の前にいたはずのラルさんの姿が俺の視界から消えた。


 そして、次に姿が確認できたときには既に俺の真ん前まで迫っていたのだ。ラルさんは踏み込んだ勢いを殺すことなくそのまま頭部目掛けて蹴りを繰り出してきた。



「このジジイマジかよ!くっ、やべぇ!」



 俺は間一髪ラルさんの蹴りを、体を後ろに反らすことで避けることができた。


 今のは完全に油断してたとはいえ危なかった。後少し反応が遅れていたら意識だけじゃなく命まで刈り取られそうな蹴りだったからだ。



「ラルさん、てめえ今のは洒落じゃすまねえぞ。完全に殺りにきやがったな。」

「ワシを前に油断とか、舐められたもんじゃな。気を引き閉めなんだら……次はお主死ぬぞ。」



 俺の目の前にはいつの間にか協会の長ではなく、一人の凄腕冒険者の男が笑みを浮かべ立っていたのだった。


 

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