第二十五話
自分の拳から解き放たれた炎の竜が辺り一面を飲み込み消えていった。
正直この威力には俺もかなりビビった……。
暫し呆然としているとポミが必死の形相で俺の元にかけよって来た。
「ユージあんた暫く魔術使っちゃダメ!この力は洒落にならないわよ。」
「お、おう?さすがに今のはヤバイんだよな?」
ポミの剣幕に俺も思わず後ずさりしながら答えた。
俺の様子を見たポミは更に俺に詰め寄ると言葉を続けたのだ。
「あんたがこの際何者でも良いわ!でもそんな今のあんたは力の制御がまるで出来ていない!今の状態で軽率に魔術を使ったらそれこそ町一つ簡単に消し飛ばしかねない!だから当分はさっきみたいに魔術を使うのは禁止よ!」
「いや、さすがに俺もあれを見たら軽率には使えねえけどよ……。でもじゃあどうすんだよ?」
「明日から私とホミであなたに魔術の基礎を教えてあげる!それがどれ程役に立つかはわからないけど今のままにはしておけないもの!だから明日以降もここに来ること!わかった!?」
この流れはさすがに断れそうにないし、何より一度使い知ってしまった魔術の魅力を考えるとこのまま使わないのも勿体無い。
今の俺にはそれが最善だと思い、ポミの提案を素直に聞くことにした。
「わかったよ。何するのかは知らねえがこれからよろしくな二人共!」
すんなり言うことを聞くと思っていなかったのか提案を出したポミが俺の答えに驚いている。横を見るとホミも同じような感じだった。
「あんたもたまには素直に人の言うことを聞くのね……。」
「……意外。もっと嫌がると思っていた。」
「お前等……俺のことどんな目でみてんだよ。」
「煩いわね!あっ、明日からビシバシ鍛えてあげるから覚悟しなさいよね!」
「……私もビシバシやる。」
「ビシバシね~。まあお手柔らかによろしく頼むわ。」
一瞬貶された気もしたが二人の申し出が善意なのはわかっている。
俺は明日から改めて世話になる二人に今日のお礼と明日からの感謝を告げ、この日はその場をあとにしたのだった。
●
翌日俺は起きてすぐ冒険者協会に向かった。
昨日ポミとホミに魔術の訓練を受けに来いと言われていたが、実際どれぐらいの時間それをやるのかわからないし現状で金のない俺は先日の依頼報酬を受けとるために冒険者協会に足を運んだのだ。
魔術も気になるけどまずは生活費が大事だからな。
あの日受付の女性も明後日以降に受け取りに来いと行っていたしまずそっちを片付けよう。
「チーッス!受付のお姉さんいるか~?」
「あっ、ユージ様おはようございます。」
冒険者協会に入るとすぐに受付の女性に出会うことができた。
俺が今日来た理由を女性に告げると少しそこで待つようにと言われる。
暫く受付の前で立っていると、奥から女性が布袋を手にして戻ってきた。
「お待たせしましたユージ様!こちらが先日の依頼、元百鬼夜行討伐の成功報酬となります。」
「おおーありがてえ!えーっと、中に金色のコインが5枚か……。あっ……。」
「どうかされましたかユージ様?」
俺は渡された布袋を開け中身を見たのだが、ここにきて肝心なことに気がついた。
俺……この世界の通過始めてみたぞ……。
考えたらゴブ太との生活はサバイバルみたいなもんだったし、ここに来て数日経つけど飯は全部村長の家で御馳走になってたから金を触る機会がなかったのだ。
仕方ない。ここはいつもの設定で教えてもらうか。
「えっ~とよ、すまねえけど金の価値って言うか、今手渡されたこの報酬がどれぐらいのものなのか教えてもらえねえかな?」
女性は俺の言葉を聞くと一瞬だけ不思議そうな顔をするも、すぐ何か思い出したのか笑顔で説明を始めてくれた。
「そうでした、ユージ様は記憶を失われていたのですね。それでは簡単にご説明させていただきます。通貨は白金貨・金貨・銀貨・銅貨の四種類ございます。それぞれ100枚で一つ上の通貨と同じ価値になってますよ。」
「ってことはよ、今貰った金貨5枚は銀貨500枚分ってことで良いんだよな?ちなみにそれってどれぐらいなんだ?基準が全然わからねえ。」
「そうですね~。この村でお一人で生活されるとしたら、特別な贅沢をしなければ一ヶ月で銀貨10枚もあればやっていけるかと思いますよ。」
「はぁ~?銀貨10枚で一ヶ月生活できるならよ、この報酬ってかなりヤバくねえか?何でこんなに貰えるんだよ?」
俺は先日の依頼の簡単さと報酬が釣り合っていない気がしたので女性に尋ねてみたのだ。
「行く直前にも申し上げましたが、本来あの依頼は最低でもフローライト級以上の冒険者様にお願いするもので、報酬も金貨1枚となっておりました。」
「いや、金貨1枚が成功報酬ならなんで俺が貰ったのは5枚なんだよ?おかしくねえか?」
さすがにバカでもそれぐらいはわかる。俺の素朴な疑問に女性は一度首を横に振ると再び説明を始めてくれた。
「ユージ様にお渡しした報酬には成功報酬と共に追加報酬も加算されてますので間違いありませんよ。」
「追加報酬?なんだそりゃ?」
「相手はあの悪名高き百鬼夜行でしたので一人につき銀貨20枚の報酬が加算されます。それと一番大柄の男性は元幹部でしたのでそちらには金貨2枚の追加ですので全て合わせると金貨5枚となります。」
俺は説明を受けてる途中から数字の話になった時点である程度聞き流していた。まあ要するにこれはあの依頼に対しての正しい報酬ってことだけは理解できた。
まあ別に拒む理由もないし、むしろこれだけの金を貰えて嫌なわけがないのでここはありがたく貰っておくとしよう。
しかしあの男が元幹部ね~。あの程度の連中に以前王都の奴等は手を焼かされてたのか。
この世界の奴等が大したことないのか、それとも俺が異常なのか……もう少し色んな奴に会って確かめないとな。
とりあえず今はここに来た目的も果たされたので冒険者協会を出てポミとホミの家に向かおうと思う。
だが俺が手渡された金のお礼を言いその場を立ち去ろうとした時、受付の女性に呼び止められたのだ。
「お待ちくださいユージ様!それと昇級の件なのですが……。」
「昇級?あぁ~、そう言えばそっちは忘れてたな。それで俺の等級ってやつはどうなったんだ?」
「それがですね…。先日も申し上げたように少々異例の事ですので返答までにもう暫くお時間を頂くことになると……。」
「ってことはまだ当分の間は今の等級のままってことだよな?」
「はい……。申し訳ありません……。」
一昨日までは自活するためにも金が必要と思い急いで働き口を探したけど、予想以上の大金が手に入ったので今は正直なところそんなに働く気がない。
なので今すぐ自分の等級が上がらないことに何の不満も感じなかった。
「別にあんたが悪いわけじゃねえんだろうしそんなに謝る必要ねえって。それに俺も急いでねえしかまわねえよ。とりあえず今日はもう行くよ。じゃあまた来るわ。」
俺は女性にそう告げると今度こそ冒険者協会を出て二人の住む家へと向かうのだった。




