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第二十四話







「まずは今渡した火の練習用魔術品を使ってみて。」





 俺は先程ポミに手渡された杖の様なものを手にしている。


 ポミが一通り話を聞いたので帰ろうとする俺を引き止めて、半ば強制的に家の裏側にまで連れてきた。理由はそこで魔術の練習をさせるためにだ。 

 別に俺としては話だけ聞いて満足したのだが、自分が教えたことをすぐ目の前で試させたいらしい。


 かなり面倒臭い……。


 このまま無視して帰っても良いんだけど、今日は色々教わったしな~。まあそれも昨日の帰りにポミから言い出したことで別に俺から頼んだ訳じゃないんだが……でも仕方ない、付き合ってやるか。



 俺は気乗りしないながらも一応付き合うことにした。




「んでよ、これどう使うんだよ?」

「魔需品は使ったことがあるでしょ?それと同じ要領で火を思い浮かべればいいだけ。それだけでその杖から火が放たれるわ。ほら、あそこにある岩に向かってやってみて。」




 俺はポミに言われた通り手に持つ杖を岩にかざして火をイメージした。

 すると俺のイメージに応えるかのように杖の先端が赤く光だすと、目の前にある岩に向かって拳ぐらいの大きさの火が飛び出したのだ。




「おおー、今の俺が出したのかよ!実際やってみるとスゲーなこれ!」

「良かったわね。別に心配はしていなかったけどそれさえ使えない人もいるから一応はおめでとうと言っておくわ。」

「……ユージ良かった。」

「なあ、これ使えない奴って結構いるのかよ?」

「そうね、村の人で使えた人は居ないわ。まああそこには若い人がほとんどいないし私達より歳上で今更魔術を習いたいって人も少ないからね。だからそれを使って魔術を出したのは私とホミ以外じゃあんたが初めてかな。」





 俺はポミの話を聞き終わると再び岩に向けて火を打ち出した。

 やってみると思った以上に面白く、更に二度三度特に意識するわけもなく発動させていた。

 するとその様子を見たポミが何やらニヤニヤしている。




「なあ、何さっきから笑ってんだよ?気持ち悪いぞ?」

「だ、誰が気持ち悪いのよ!?ふん、さっきから何度も練習してるけどそろそろ体に変化ってない?」




 変化ってなんだよ?別にこれといって変わった感じもしねえんだけど。

 俺は考えながら6度目の火を岩に打ち込んだ。




「ちょ、ちょっと!ホントに辛くなってないの?息苦しいとか体が重いとか頭が痛いとか!?少しぐらい何かあるでしょ!?」

「ん~?別になんともねえぞ?寧ろあれだな、始める前は気乗りしなかったけどやってみると結構面白いなこれ。」




 そう話してる最中も俺は魔術品をオモチャ感覚で使っていた。

 そして最初の使用から数えて10回目になったとき何故かポミに止められたのだ。




「待って待って!さっきも聞いたけどホントに体に変化ってないの?どこか体調が悪くなったりとかしてないわけ!?」

「だからどこも悪くなってねえよ。てかよ、これ使うとどっか痛くなったりすんのかよ?」

「え……。いや~、普通は二回か三回使ったらスピリトが枯渇して体のどこかに不調が出てくるのよね~……。」

「おい、そんな話聞いてねえぞ…?」




 そう言いながらポミを見るも目を合わせようとしてこない。

 こいつ、何か企んでやがったな…。




「と、とにかくよ!あんた今これを10回使ったわよね!?」

「おい、無理矢理話を変えようとしてないか……?ちっ、まあいいけどよ。使った回数ね~……ちゃんと数えてねえけど多分それぐらいは使わせてもらったんじゃねえかな?」

「あんたそれって普通の魔術使えるわよ。」

「はぁ?普通は使えないんじゃなかったのかよ?」





 俺の問いにポミは何か考え込んでいた。

 しかし先程から横で黙ってみていたホミが一言





「……ユージは記憶がない。」





 ホミの言葉を聞くと、ポミはどこか納得したような表情をしている。


 ちょいちょい忘れるけど確か俺ってそんな設定だったよな…。


 すると自分の初期設定を忘れていた俺に先程まで何か考え込んでいたポミが一つ提案をして来たのだ。




「ねえ、何か想像して魔術を使ってみれば?」

「だからさっきも聞いたけど、何もしてなければ魔術は使えないんじゃねえのかよ?」

「考えてみればあんた記憶をなくしてるんだよね?もしかしてだけど、記憶をなくす前にスピリトの訓練をしていて魔術を使っていたかもしれないじゃない。じゃなければそのスピリトの量は異常だしむしろその方が納得いくわ。」




 なるほど。確かにポミの言うことは十分に理解できる。記憶をなくす前に訓練をしていたなら使えてもおかしくないだろう。ただし、俺が本当に記憶をなくしている奴ならが前提だけどな…。


 でも今更それは嘘でした。実は別の世界から来た人間なんだよなんて言えないし、仮に言ったとしても信じてもらえるはずがない。


 これはこの流れに乗っかるしかねえな。




「な、なるほどな!確かにポミの言う通りもしかしたら昔の俺は魔術を使えたのかも知れねえよな!」

「……どうしたのユージ?どこか不自然な気がする?」

「不自然?ば、ばかなこと言ってんじゃねえよ!そうか~、魔術使えたんだな俺。そっ、それでどうするんだっけ?」

「あんたね~、この短時間で何度説明させれば気がすむのよ…。とにかく最初は自分のイメージしやすいものを思い浮かべて、さっき杖の先端に意識を集中させたのを今度は自分の体のどこかに集中させて放てばいいわ。」




 イメージしやすいもの。そして体のどこかに集中か。


 体のどこかと言われたらやっぱり拳だよな。あとは何をイメージするかだ…。


 すると悩む俺を見兼ねたのかホミがアドバイスをしてくれた。




「……一度でも見たものの方が使いやすい。ポミの風の魔術や私の癒しの魔術。あとはさっき使った火の魔術もイメージしやすいと思う。」

「まあ昨日今日の事だから確かにそうかもしれないな。」

「……うん。あとは声を出すのも良い。」

「声ってなんだ?」

「ポミや私が魔術を唱える前にイメージを言葉にしていたの覚えている?それのこと。」




 あぁ~……。あの中二っぽいダサいやつのことか……。


 でもこれでイメージするものは決まったな。あとは、声か…。

 まあでもそれは俺流で良いってことだもんな。


 俺はイメージするものも決まり先程まで火の魔術を当てていた岩に向き直る。

 その様子を見てポミもホミも俺が今から使う魔術が気になるのか黙ってこちらを見ていた。



 よし……。俺のイメージするものは火だ。

 それも当たるもの全て吹き飛ばす威力の特大の炎。


 俺は右の拳に意識を集中させ燃え盛る炎をイメージした。

 すると右の拳が徐々に赤く光だし、その光は肘の辺りまで広がってきた。


 そして俺が勢いのまま拳を繰り出そうとすると、何やら今まで黙っていた二人の声が聞こえてきたのだ。





「ね、ねえホミ…。あれってヤバくない…?」

「…うん……。かなりヤバイと思う。止めた方がいいかも……。」

「ユ、ユージストップ!それ打っちゃダメ!」




 ポミが俺に向かって何か叫んでいるが……もう遅い。

 俺は既にモーションに入っていたからだ。





「オラァ!当たるといてえぞ爆炎也竜バカヤロウ!!!」





 俺の叫び声と共に繰り出した拳から、凄まじい勢いで炎の竜が岩めがけて解き放たれた。

 その炎の竜は目標の岩を粉々に砕くと、勢いは衰えることなく突き進み当たるもの全てを吹き飛ばすとやがて天に昇り消えていった。




「ユ、ユージ……。あんた何者なの…。」

「……ユージ凄すぎる…。」

「こ、これ俺がやったのかよ……。」




 俺の拳から解き放たれた炎の竜が消えると……辺り一面焼け野原になっていたのだった。

 

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