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第十八話







「やっと見つけた!ホミ急いで!」

「……わかってる。」





 冒険者協会で百鬼夜行の噂を聞いてから暇さえあれば二人でアジトを探していた。何度か森で見かけない奴等を追い払っていたけど運が悪かったのか今日まで見つけることが出来なかったのだ。


 百鬼夜行の事はあくまで可能性の話だった。だけど父様の居ない今、戻ってくるその日まで私達二人で村を守ろうと決めたからだ。


 ただ鉱山の存在を私達はすっかり忘れていた。

 確かにあそこなら多少大人数でも隠れ住むにはもってこいの場所だ。



 私達は今、森で出会った村の人に話を聞き急いで鉱山に向かっている。

 まだ村に被害も出ていないし、そこまで急ぐ必要がないのはわかっている。本当なら王都に伝えて助けてもらうのが一番なのだろうけど何かあってからじゃ遅い。


 仮にそんなことがあれば私達に村を頼むと言い旅に出た父様に顔向けできないからだ。



 村の人から話を聞いた場所から比較的近い場所に鉱山はある。

 私達二人はここで生まれ育ち、この森のことはある程度把握しているので最短距離で鉱山に辿り着いた。



 木の陰に隠れて様子を見ると、鉱山の入り口前に一人と恐らく横の小屋にも最低一人は見張りがいるだろう。


 仮に奴等が百鬼夜行じゃないとしても、村のすぐ近くで野盗どもに住み着かれるといつ何があるかわからない。


 奴等の正体がどうであれここから追い払わないと……。



 すると少し遅れてホミが到着した。





「ホミ遅いよ!」

「……ごめん。それでどう?やっぱり鉱山を根城にしていた?」

「あれを見て。奴等が何者か知らないけど、どう見ても悪人でしょ。とにかく追い払わないとダメね。」

「……うん。でもどうするの?入り口から行くのは無理と思うけど……。」





 ホミの言うことが正しい。相手の数も実力もわからないのにあそこに正面から突っ込むのは無謀だと思う。


 でもこのまま何もせずにこの場を立ち去ることなんて絶対にできない。

 とにかく何か打つ手を考えないと……。


 そう考え込んでいると、ホミは何か思い出したのか一つの提案をしてきた。





「……あそこから入れるんじゃないのかな?」

「あそこって?」

「……ポミ覚えてない?子供の頃この場所とは反対にあって、少し高くなっている入り口があったのを?」

「あっ、確かにそんな場所あったわね!」





 子供の頃は父様と一緒にこの鉱山に足を運び、村で預かった中で働く人への届け物を何度か運んだりした。


 そして毎回父様は中の人たちと話し込んでしまうので暇になった私達二人は周辺を探索したりしたのだ。


 その時に偶然見つけた少し高い場所にある横穴に入ると、鉱山の奥に繋がっていて外に出たはずの私達が奥から出てきたことに父様は凄く驚いていた。


 あんなに驚く父様は今まで殆ど見たことないな~。





「……ミ………ポミ?行かないの?」

「…え?い、今行くわよ!」





 感傷に浸りボーッとする私を不思議に思ったのかホミが声をかけてきた。


 我に返った私は急いで鉱山の裏手に向かう。


 奴等もその場所に気がついている可能性があるので、私達は徐々に速度を落とし気配を消しながらも目的の場所に辿り着いたのだ。





「え~っと……たしかこの辺に……あった!ホミあれだったよね!」

「……うん。確かあそこだった。」

「その前に、辺りに奴等はいないよね………。」




 私達は辺りを慎重に見渡した。だがこの場所には思った通り気がついていないのか人の気配はない。


 それでも油断せずに辺りを注意しながら穴に近づく。

 特に問題なく穴のすぐ下に辿り着いたので、まず運動能力の高い私から穴に向かって飛び上がった。


 ホミはこの手の事が苦手なので、姉である私がいつも先に行動している。

 そして先に上がった私が下に手を伸ばすと、ホミはその手を支えに上がってきた。





「……ありがとう。」

「別にいつもの事なんだし気にしなくてもいいわ。妹を助けるのは姉の役目なんだしね!」

「……でも生まれた日は同じ。」

「細かいことは良いの!妹は黙って姉の言うことを聞いてればいいんだからね!姉より優れた妹なんて居ないんだから!わかったホミ!」

「……わかった。」




 私達は生まれた日が同じの双子だ。一応私が姉として育てられたのでいつもこんなやり取りをしている。


 そしてホミはいつも決まってこのやり取りのあと少し嬉しそうに微笑むのだ。

 きっと私も同じ表情をしているとは思うけど…。


 いや、今はここで和んでいる場合じゃない。早く中の奴等を何とかしないと…。


 この入り口から進んでいけば一番奥から手前辺りに出られるはずだ。

 私は一度後ろにいるホミに振り替えると、無言で頷き歩き始めた。




「……ところでポミ。ここから奥に進んでどうする気なの?」




 歩き出してすぐに、いつも私の考えに黙って着いてきてくれるホミだが、今回ばかりは気になるようでヒソヒソと声を殺し尋ねてきたのだ。




「そんなの決まってるでしょ!奴等のボスを倒してやるのよ!どうせ奴等なんて頭さえ倒してしまえば逃げていくんだから!」

「……なるほど。でもなぜ一番奥にいるとわかる?」

「そんなの決まってるでしょ!勘よ、勘!」




 私が自信満々にそう言うと、ホミは少し不思議そうに首を傾げるも一応納得したのかそれ以上何も聞かず黙って私の後ろをついてくる。


 そして、程無くして私達は細い一本道から別の道と交差している場所の上に出たのだ。

 私はそこで一度歩みを止め、後ろからついてくるホミも制止するとゆっくりと下を覗きこんだ。


 案の定そこには誰もいない。私はなるべく物音をたてないように静かに下に降りた。

 そして辺りに誰の気配もしないことを確認すると、上で待つホミに降りてくるよう指示をしたのだ。



 ここまでは順調だった。あともう少しで一番奥に辿り着ける。私は逸る気持ちを抑え、先程よりも慎重に歩みを進めた。





「ホミ見て……。あそこに一人いるわ。」

「……うん。アイツがここのボス?」

「そんなことは知らないけど……最悪の場合はアイツを倒してここから入り口にいる奴等全員倒してやれば良いのよ!」

「……それって正面から入って全部倒して進んでいくのと同じなんじゃ…?」

「う、五月蝿いわね!とにかく行くよホミ!準備は良い!?」





 ホミは黙って頷いた。

 さてと、それじゃあ行きますか。


 私は呼吸を整えて、最後に一度大きく息を吐いた。そしてそのまま一直線に奥の男に向かい走り出した。





「!?」

「たあー!」

「ぐはぁ…」




 奥で偉そうに座っていた男は、突然自分に向かって走ってくる私の姿を見て当然驚いている。

 私はまだ身構える前の男の顔目掛け問答無用で蹴りを繰り出したのだ!


 私の奇襲攻撃は見事に決まり、男は私の蹴りを受け後ろに吹き飛んだ!


 かなり手応えはあった。いつも相手をしている奴等なら今の一撃で気絶しているはずだ。



 だがこの男は違った……。





「いてて…。てめえ等誰なんだ?どうやってここまで入ってきやがった?」

「う、嘘…。」





 男は気絶するどころか、多少痛そうな素振りを見せるも平然と立ち上がったのだ。


 いつもの相手とはやっぱり違うか…。


 私が一瞬後ろに視線を送ると、同じことを思ったのかホミの表情も少し強張っている。



 これは気を抜いちゃダメね…。


 私は改めて気を引き締め、目の前にいる男を睨み付けたのだった。

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