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第十七話






 俺は百鬼夜行の残党らしき奴等が根城にしている鉱山に向かっていた。


 目印らしいものが無く、どこも同じに見えるので村の人間にはとにかく方向だけを聞き道なき道を真っ直ぐ進んでいたのだ。





「これ……特攻服失敗じゃね……。」




 言われた方向に真っ直ぐ進んでいるが、特攻服が枝に引っ掛かって思った以上に進みにくい。

 簡単に破れる素材じゃないのでそこは心配していないが、引っ掛かる度に進む速度を落とすのでかなりイライラする。



 ただ聞いた場所は村からそこまで離れた場所ではないとの事で一時間もかからないらしい。


 とにかく俺はグッと我慢をし、イライラしながら真っ直ぐ突き進んだ。



 そして一時間ほど言われた通り進んでいると、少し開けた場所に小屋らしきものが見えてきたのだ。

 その小屋の横には洞窟らしきものも確認できた。



 あれが多分鉱山だよな。



 俺はとりあえず鉱山に入る前に、横にある小屋を覗いてみた。


 小屋の中には男が一人眠そうに座っている。

 恐らく見張りなのだろうが、中でそんなに眠そうにしていて見張りが勤まるのか?


 一応作戦らしきものも考えてはいたが、俺は中に男が一人しか居ないので考えることを止めた。

 とりあえず入ってコイツ等が百鬼夜行の残党なのか確認してみることにしたのだ。


 勢い良くドアを開けると、中の男はビクりとしながら驚きの表情をこちらに向ける。

 そして俺の姿を確認すると武器を手に持ち身構えたのだ。





「て、てめぇ何もんだ!?何しにここに来やがった!?」

「いや、聞きてぇのはこっちだよ!お前等…百鬼夜行の残党がこんなところで何やってんだよ?」

「なっ!?」




 今の驚き様は図星だったか?仮にそうだとしたら……こいつ単純すぎるだろ。

 さてと、これで鉱山の中にいるのは百鬼夜行の残党と考えて間違いなさそうだけど……ここからどうするかな。


 俺は動揺する男の前でこれからどうするか考えた。


 すると男はそんな俺に向かって手にした棍棒を振り上げると、殴りかかってきたのだ。





「な、何者か知らねえが知られたからには生きて返すわけにはいかねえ!死にやが……えっ!?」

「ちょっと落ち着けっての。てか何だそれ?お前バカにしてんのか?」




 俺は男が振りかぶり棍棒を下ろす前に近づくと、相手が棍棒を持つ腕を握り動きを止めた。


 特に俺が早く動いたわけではなく、男の動きがあまりにも遅く見えたので簡単に対応できたのだ。


 男は必死に腕を振り下ろそうとしているが、こちらはそれほど力を入れること無く動きを止めていたので、まるで演技でもされているような感じがする。





「こ、コイツなんて力だ!おい、てめえいったい何者だ!?」





 これ本気でやってんだよな?もしかしてこれがゼクスの言っていた身体能力の変化なのか?


 俺は以前言われた事を思い出していた。確かあの時…元の世界とは違うとか言われたはずだが今日までそれを実感したことはあまりない。


 ゴブ太が弱いのは元々だと思っていたし、それ以降も動きのある奴と対峙したことが殆どなかったからだ。

 唯一こちらに向かってきた野犬がいたけど、その時もこちらを見て威嚇していたので先に動いて一匹蹴り飛ばすと他の奴は散々に逃げていったのだ。


 ただ以前よりも体が軽くなった気はしていたが、それはこっちに来てからタバコを吸っていないので禁煙のおかげぐらいにしか思っていなかった。



 でもそうじゃなく俺の力が格段に上がっていたとしたら…。



 俺無敵じゃね…?

 





「……い!おい、てめえ聞いてんのか!?さっさとこの腕を離しやがれ!」

「あ?あぁ~悪いな。つーか耳元で叫ぶんじゃねえよ!ちょっと寝てろ!」

「なっ、がはぁ………」





 俺が自分自身の変化を考えている最中も男の腕を握ったままだったらしい。

 その間ずっと目の前で騒いでいた様なので、我に返った俺はとりあえず黙らせるために腹に一撃食らわすと男はそのまま膝から崩れ落ちた。






「今のもそこまで力を入れてないんだよな~。まあコイツが弱すぎたって事もあるしもう少し様子を見てみるか。あっ、結局何も聞き出せてねえな……。」





 

 とりあえず小屋を出た俺は、横にある鉱山の入り口の前に立っていた。


 中を少し除くとそこら辺に錆びて壊れたスコップが捨ててあり、地面には奥へ続くレールが敷かれている。


 ここで考えても仕方がないので俺はレールに沿って歩いていくことにした。








「てめえ何処から入ってきやがった!」

「ぶっ殺されたくなけりゃさっさとこの場を立ち去れ!お、おい!聞いてんのか!?」

「うるせえ!!!」




 これで五人目か。


 中に入ると思った以上に広く、野盗どもの数も多かった。

 とりあえず目にした奴等を片っ端からぶっ飛ばすのが一番早いと思った俺は、奥へと進みながら一人づつ殴り歩いた。


 今も角を曲がった瞬間目の前に男二人組が現れたので片方を殴り気絶させたのだ。

 残った一人はいきなり現れ仲間を倒された驚きで腰を抜かしたようでその場に座り込んでいる。


 ストレスを解消するかのように出会う奴全員気絶させてきたがそろそろ先に来ているであろう村の奴の事を聞こうと思い、座り込む男に話しかけた。





「おい、ちょっと聞きたいこととんだけどよ。」

「ヒィィィ!た…頼む、何でも話すから命だけは許してくれ!」

「別に殺すつもりはねえよ。まあ素直に話してくれるなら手間省けていいけどよ。つーか、お前ら本当に元百鬼夜行って奴なのかよ?手応えも根性も無さすぎんだろ?」




 仮に俺が強くなっていたとしてもコイツら弱すぎると思う。

 とてもじゃないが国を騒がすほどの集団とは思えない。


 コイツ等は百鬼夜行とは全く関係のない奴等で、たまたまここに住み着いたのだと思い始めていたのだが男の答えは違った。

 





「お、おうよ。俺達は泣く子ももっと泣く、悪逆非道の百鬼夜行様よ!ぎゃふん!」

「雑魚の癖に偉そうに言ってんじゃねえよ!」





 男の態度にムカついた俺は気絶しない程度にビンタした。


 でもコイツの言うことが嘘じゃなければやっぱり百鬼夜行がここに住み着いたのか。

 俺はとりあえず先に来ているはずの二人の事を聞いた。





「あのさ、俺が来る前に二人組の女がここに入ってこなかったか?」

「ふ、二人組の女?そんな奴はきてねえよ!仮にそんな奴等がここに来ていたらもっと騒ぎになってるしよ!」

「てめえ嘘じゃねえんだろうな!?」

「だ、だから嘘じゃねえよ!この鉱山は殆ど一本道で、ここに来るにもお前が来た道を通ってこなけりゃ辿り着けないんだよ!」





 確かにここまで一本道だったな。目の前の奴が嘘をついているようにも見えないし……俺の方が早く来てしまったのか?


 まあそれならそれで問題ないな。それにコイツ等を取っ捕まえて冒険者協会に引き渡せば金になるし、村からも感謝されるし……とりあえず奥まで進むか。





「なあ……聞かれたことは話したし許してくれるんだよな?も、もう行っていいか?」

「ん?あぁ~……悪いけど寝てろ!」




 俺はそう言うと同時に男を殴り気絶させたのだ。



 さてと……とりあえず全員ぶっ飛ばして金でも稼ぐことにするかな。


 俺は当初の予定とは変わってしまったが少し気持ちが軽くなったのを感じながら奥へと進んだのだった。

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