僕は子供です。4
不定期更新です。
すみません。
ランの周りには血だまりができていた。
「ラン!」
ガイは、そう叫びランの元に駆け寄ろうとした。
すると、ランの倒れている先の茂みがガサガサと揺れ始めた。
「ガイ!待って!奥の茂みに何かいる!」
僕の叫ぶ声に反応したように、奥の茂みから何かが飛び出した。
体長は100㎝程で、耳が長く、ピンと立っていて、前足に比べ後ろ足がやけに発達している四足歩行をした魔物だった。そして、特に目を引くのは、その魔物の頭から生えた1本の長い角である、そして、その角には血がついていた。
「あ、あれ、ホーンラビットだよ!草食だけど、凶暴な魔物だって図鑑に書いてた!」
スンは、そう言い、ガクガクと震えていた。その横でマインも震えている。
「ランは俺が守る!うぉーー!」
ガイがランに向けて走り出した。
「ガイ!1人で飛び出すな!スン、マインは村に戻って大人を呼んできて。」
「わかった!」
「わかったわ!」
2人が村に向かって走り出したのを確認し、ガイの方を振り向くと、ガイがホーンラビットとにらみ合いをしていた。ホーンラビットも警戒しているようだ。
「ガイ、1人で飛び出さないで。」
「でも、ランが。」
確かにランの周りの血の量は危険な状態のように感じた。
しかし、どうすればいい?どうやって撃退する?
そう考えていると、ホーンラビットが突進を仕掛けてきた。
「ガイ!避けて!」
僕はガイに声をかけ、ガイもその声に反応し、突進してきたホーンラビットを左右に飛んで避けた。
ホーンラビットは2人の間を通り過ぎ、後ろに生えた木にぶつかった。
僕は、立ち上がりながら、ホーンラビットの方を見ながら、立ち上がろうとしないガイに再び声をかけた。
「ガイ!早く立ち上がって!次が来る!」
「いや、レーンよく見ろ。あいつ動けないぞ。」
ガイにそう言われ、僕もホーンラビットの方を見てみると、ホーンラビットは、突進して木にぶつかった勢いで角が木に突き刺さり動けないようだった。
「ほ、ほんとだ。」
「ラン!」
ガイはランに向かって走りよった。僕もそれに続いた。
「レーン、どうしよう、血が止まらない!」
「ちょっと見せて」
ランの太ももにはホーンラビットの角の刺さった後があり、そこから止めどなく血が溢れていた。たぶん、痛みと多量失血で気を失ったのだろう。このままでは間違いなく危険だ。
僕は光の魔法を使うことに決めた。光の魔法は使ったことはないけど、天使がいうには僕には光の属性に対しても適性があるらしいし。
「光よ、傷を癒やせ。」
「レーン、お前、魔法が使えるのか?」
魔法のことは、まだ誰にもいっていなかった。なぜなら5歳で魔法が使えることは普通ではなかったためである。
「うん、黙っててごめん。」
しかし、光の魔法は使ったことがなく、失敗しているのか、ランの傷が塞がらない。
(くそ、何が悪いんだ。魔力の量か?イメージか?家にあった本には、魔法は魔力量とイメージの力でランクが変わるって書いてたぞ!)
魔力を全部注ぎ込むつもりで魔法を行使しながら、より具体的なイメージをしようと元通りの太ももをイメージしようとする。
(太もも、太もも、幼女の太もも!)
その時、ふと、川でのマインとのやりとりが思い出された。
そして、マインのたくし上げたスカートから覗く、きれいで、健康的な足が、、、。
すると、光がよりいっそう強くなり、ランの傷がだんだんと塞がり始めた。
我ながら、素晴らしいイメージ力だと思いました。
「レーン!すごいぞ!まるで、傷がなかったみたいに治っていく!」
「よかった、これなら。」
2人でほっと一安心した時、ドサッと何かが地面に落ちた音が聞こえた。
どうやら、ホーンラビットが木を蹴って角を木から引き抜き、その勢いで地面にたたき付けられた音だった。
(やばい!もう魔力もほとんど残ってないから、魔法を使って迎撃もできない!)
この状況をどうやって乗り越えるか、必死に考えていると、ガイが立ち上がった。
「俺があいつの気を引く、その間にランの傷を治してやってくれ。」
「ガイ駄目だ。1人は危険すぎるよ。」
「大丈夫!あいつ真っ直ぐにしか攻撃できないみたいだしな。」
確かに、さっきのホーンラビットの動きを見るに、避けられないような攻撃ではなかった。
それに、現状それしか手がないように感じた。
「わかった。ランの治療が終わったら、すぐ助けにいくから、無理はしないで。」
「おう!」
ガイが「おーい!こっちだマヌケ!」と叫びながら走り去り、それを追っていくホーンラビットを確認し、治療に集中する。
このまま治療をすれば、まもなく傷もほぼ塞がる。顔色もよくなってきているし、完全に治す必要はないだろう。今はガイの加勢を優先するべきだ。
そこから数分後、ある程度傷が塞がったのを確認し、ガイの加勢に向かった。
ガイは息をあげながらも無傷でホーンラビットの攻撃を避けていた。
「ガイよかった!助けに来たよ!ランは大丈夫!」
ガイは息が上がっているせいで、返事は帰ってこなかったが、少し笑顔を浮かべた。
僕は足下に落ちていた木の棒を拾いながら、さらにガイに話しかけた。
「僕は最後の魔力を使って、どうにかホーンラビットの体勢を崩すから、その間に一気にたたみ掛けよう。」
ガイが頷いたことを確認し、ホーンラビットがガイに突進しようとしている間に集中し、突進しだしたホーンラビットの足下に向けて土魔法を使い凹凸を作り、ホーンラビットを転かすことに成功した。
「今だ!」
それを合図に2人で転けたホーンラビットをそこらにある岩や棒で滅多打ち。
完全に動かなくなったことを確認し、殴ることをやめた。
僕はそれで緊張が解け、魔力枯渇によるひどい眠気に襲われ、ふらついてしまった。
ガイが心配してくれたのか、僕の名前を呼ぶ、意識が朦朧として、声が遠く聞こえる。
「レーン!後ろだ!」
うしろ?何が後ろなんだろう?でももう駄目だ。そう思いながら、僕は前のめりに倒れこんでしまった。そしてその時に後ろの様子が少しだけ見えた。
そこには、こちらに突進を仕掛けようとしているホーンラビットがいた。
(ああ、2匹いたのか、確かにもう一匹いても不思議じゃないよな。あーあ、ここで終わりか。あの時好奇心に負けて、川の向こうに行くことに賛成しなければ、魔法があればどうにかなるなんて、僕こそ自意識過剰な大馬鹿じゃないか。みんなごめん。)
そこまで考え、僕は意識を失った。
読んでいただき、ありがとうございます。