僕は子供です。1
目の前に微笑んだ女の人の顔があった。それも金髪の美女だ。
さっきの天使はどこいったと疑問に思いながらも、とりあえず、その美女の顔に触れるため、手を伸ばした。
すると、自分の手がぶよぶよの、まるで赤ん坊のような手になっていることに気がついた。いや、事実赤ん坊の手なのだろう。
僕は異世界に転生したのだ。
ということは、目の前の美女は僕の母親ということになる。
これはとても楽しい赤ん坊ライフが待っているとワクワクしていると、その母親と思われる美女がどこかに向けて何やら話しかけているが、内容がわからない。
どうやら、まだちゃんと耳が聞こえないらしい。
そんなことを考えていると、突然体が浮かび上がった。すると、目の前に金髪のイケメンが現れた。
どうやら、このイケメンに抱き上げられたようだ。多分このイケメンが父親なのだろう。
父親も母親も若くて美形。これは自分も美形になるに違いないと、将来が楽しみになりつつも、この若さで、あんなに美人の嫁をもらっている、このイケメンに少しイラッとしたので、とりあえず泣いておくことにした。
すると、イケメンが慌てた顔になり、母親の腕のなかに戻してくれた。
イケメンは慌ててもやっぱりイケメンということに嫉妬しながら、その姿を見て笑っている母親とおぼしき美女の笑顔に心が暖かくなった。
ーーー5年後ーーー
「ママ、何か手伝おうか?」
「いいのよ、レーン。貴方はお外で遊んでいらっしゃい。ただし、貴方は魔法は使えるといってもまだ子供なのだから、あまり遠くにいっては駄目よ。」
「はーい。」
僕の名前はライオット=レーン。5年前にこのライオット家に産まれた異世界転生者だ。そして、魔法を扱える5歳児でもある。
初めての僕が魔法を使えたのは、3歳の時で、その頃には天使から頂いた唯一の能力、言語翻訳を用いて、家にある本を片っ端から読んでいた。
その本の中にあった、魔法の基本が書かれた本を片手に、見よう見まねでやってみたら、難なく成功。
しかし、魔力量が少ないせいで、連発しようとしたり、大きな魔法を撃とうとするとひどい眠気に襲われ、そのまま眠ってしまっていた。
それもそのはず、通常魔法は8歳くらいでようやく使えるようになる代物であるため、3歳で使えるのは、それこそチートの様なものなのである。(本調べ)
また、この世界の魔法には神級、最上級、上級、中級、下級の5段階のランクがあり、今のところ火と土の下級魔法しか使うことができない。
その理由として、魔法にはたとえ適正があっても得意な属性と不得意な属性があるためだ。また、その得意不得意は遺伝によるもので、僕の父親は火と土の魔法が得意なため、現状僕も火と土しか使うことができない。
魔法の説明はこのくらいにして、次は家族の説明に移ろうと思う。今話していたのは僕の母親でライオット=マーレ。そして、
「おお、レーン。遊びに行くのか?気を付けろよ!」
この、上半身裸で自慢の筋肉を見せびらかすように素振りをしているのは、父親のライオット=カイン。元国勤めの騎士だったが、体の弱かった妊娠中のマーレに良いだろうと、田舎に引っ越してきた。そして、今は国境の警備兵をしている。
「うん、いってきます!」
そして、ここはオリアウト王国の端っこにある村ピンヘ。
自然豊かで、悪くいえば、自然以外なにもないところである。
世界を統一しろと言っておきながら、村始まりって、無茶を言うにも限度があると思いながら、僕は家の外に出た。