#8 初対面のくせに!
ニャンニャン仮面が姿を現した瞬間、白けた空気になっている二年生の教室の階。
「あっ、そうだ!」
「今度は何よ、変態仮面?」
「実は二人に聞いてもらいたい曲があるんだ!」
「なるほど……それでラジカセを持っていたのか」
「今から準備をするから少し待っていてくれ!」
その空気が今も続いているにも関わらず、彼はミサとニャンニャン刑事の反応を無視している。
ニャンニャン仮面はラジカセの準備を鼻歌交じりにいかにも楽しそうに始めていた。
「変態仮面はボク達より随分楽しそうだな」
「そうね」
「あいつは初対面なのに、調子に乗っているようにしか思わないんだが……」
「それは確かに言えているわ……」
彼女らは楽しそうに準備をしている彼を見ながら話している。
たった今、二人の中で「ニャンニャン仮面=変態仮面」という方程式が成立してしまったのだ。
「おーい! 準備が終わったぞー!」
「はいはい」
「で、曲の題名は?」
「えーっ……オレの新曲の題名は『おお、我らがヒーロー。ニャンニャン仮面!』! ミュージック、スタート!」
ラジカセの準備を終えたニャンニャン仮面はひそひそと話していたミサ達を呼ぶ。
彼女らは適当に返事をしてその近くに足を止め、彼は再生ボタンを押した。
ズンチャカ、ズンチャと軽快なリズムのドラムから始まるイントロ。
途中からギターやベース、なぜかキーボードではなく、電子オルガンの音が入ってきている。
そして、約一分くらいの長いイントロが終わり、歌が始まった瞬間――――。
ミサが白衣のポケットから拳銃を取り出し、ラジカセに向かって一発発砲した。
弾は見事にそれを捉え、ブチッ! と音を立ててから止まる。
「あっ、ここからがいいところなのに! 謎の中略ミサ、余計なことをしたな! ラジカセはヤ○ダ電機で高い金を支払って買ってきたのにー!」
「変態仮面はヤ○ダ電機で高い金を支払って買ってきたって言っているけどさぁ、あのラジカセは『音楽室備品』って書いてあるじゃない! きちんとよく見なさいよね!?」
「今時、ラジカセは高い金額を出さなくても手に入れることができるしな」
「そうよ! 最近はスマートフォンのアプリケーションで録音したら音楽が流れたりするのよ!」
「そうなのか? オレは携帯電話だからなぁ……」
ニャンニャン仮面が一人で泣き声をあげている中、怒りを露わにするミサと呆れ気味のニャンニャン刑事。
「私達は初対面なのに調子に乗りすぎなのよ!」
「ボクも同意だ!」
彼女らは彼がラジカセの準備をしていた時に話していたことをそのままそっくり言い放った。
「……しかし、ミサさん。ボク達が変態仮面とくだらないことをしている間にベルモンドが逃走したらどうするのですか?」
「……そうね……」
「よーし! みんなで怪盗ベルモンドをやっつけよう!」
「「切り替え、早っ!」」
ミサとニャンニャン刑事が平常心を取り戻したと同時にニャンニャン仮面もいつものハイテンションで切り替えてくる。
「まぁ、いっそのこと、変態仮面はここに置いていって、怪盗ベルモンドは私達二人で片付けちゃいましょう?」
「そうだな」
彼女らはそう言うと、彼を置いてスーッと素通りし、二人の姿はみるみる小さくなっていき、見えなくなってしまった。
「あっ、待ってよー」
ニャンニャン仮面は置いてけぼりにされ、壊されたラジカセとともにその場に佇んでいる。
「あーあ。いいないいな。二人とも気が合ってさ……」
誰もいない廊下の中心で彼は孤独に体育座りをするまで落ち込んでいた。
三人で話していた間にも鳴り止まなかったベルモンドの拳銃からの発砲音。
それは今でも鳴り響いている――――。
2018/12/07 本投稿




