#5 女子高校生は変身したら男装少女?
紫苑は機材の電源を落とし、教室から出る前に持ってきていたバトンを手に職員室から出て行く教師達に紛れながら、どこかの教室に駆け込んだ。
「ここなら誰にも見つからないかなぁ……」
彼女は今いる教室付近を誰かが通過しないか足音がするか否かを警戒しているらしい。
しかし、何回か足音らしき物音がする。
紫苑はおそらく生徒や教師が校舎から出たかどうかの確認をしているのだろうと判断し、急いで教卓に隠れた。
「この教室は誰もいないか?」
「……見た感じでは誰もいなさそうですね……」
男性と女性の会話が耳に入ってくる。
彼女はこのまま教室に入ってきたらどうしようと思い、焦りを覚えながら息を潜めた。
「誰かいるかー?」
「……………………」
男性が大きな声で問いかけるが、紫苑は無言でその場から動こうとしない。
下手げに教卓から顔を出したりすると「早く校庭に行きなさい」と言われてしまうため、動けないのだ。
「本当にいないようだな。急いで隣に行くぞ」
「はい」
足音が彼女がいる教室から遠ざかっていく。
紫苑は教卓からふらつきながら立ち上がり、大きく深呼吸をした。
「今度こそは……大丈夫かな……」
彼女は「……立ち眩みがする……」と言いながら、気の抜けた表情から覚悟を決めた表情に変化する。
「All my friend forever!」
バトンを回し始める紫苑。
それは宙を回っているのと同時に身体もくるくると回りつつ、頭から変身していく――。
そして、回り続けていたバトンを右手で取り、変身が完了したようだ。
「変身終了! ボクはニャンニャン刑事!」
先ほどまでいた女子高校生の姿はなく、一人の少年らしき人物が立っている。
銀髪で白いラフな服に黒いラインらしきものがついており、何かを固定するためのベルトが締められていた。
その人物は一応トイレに行ってみようとするが、男子トイレに入るべきか女子トイレに入るべきか迷っている。
散々、迷った結果、校舎内には誰もいないため、女子トイレでも大丈夫だろうと判断した。
「ん? なんだこれは? もしかして、ボクは男装しているのか!? 見慣れない服だし、髪色は黒から白くなっているし……」
ニャンニャン刑事は鏡に映し出された自分の姿を見て驚いている。
それもそのはずだ。
もともとは女子高校生だった人物が凛々しい少年のような人物になるのはおそらく彼女が男装しているのかもしれないからだろう。
その時、ミサの時と同様に銃声が耳に入ってきた。
「ちっ……相手は拳銃を使っているのだな……」
ニャンニャン刑事は舌打ちをしつつも、冷静な対応をする。
彼は手榴弾を約十ダース程度を準備し、そのうちの二、三個くらいを投げた。
そのあと、銃声は耳に入ってくる様子はなく、ニャンニャン刑事は教室から出て行った。
2018/12/04 本投稿