#4 謎の白衣の美女は変な意味で不満を持つ
先ほどの校内放送を聞いた生徒達や教師達は慌ただしく校舎から校庭に向かっている。
今からベルモンドが本格的に姿を現し、どのような騒動を引き起こすのか分からない状況にも関わらず、白衣を着た女性とこの学校に通っている女子高校生、男性がなぜかそれぞれ別々の場所に散って残っていた。
彼女らはついにこの時がやってきたなと思いつつ――――。
「さて、みんな、校舎から出たかな?」
その一人目である春原が生物準備室の窓ガラスを通じて校庭に向かっている彼らを見ている。
最後の一人の生徒が校庭に向かったと判断した時、彼女は一度深呼吸をし、「よしっ!」と呟いた。
「Please give your dream!」
春原は右手で指をパチンと鳴らしながら、シンプルな英文のようなものを口にした。
彼女の身体は眩い光に包まれて足元から徐々に変身しているように感じられる。
「変身終了! 私は謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサ!」
その女性はこの学校の理科教諭である春原 美沙ではない。
彼女は謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサという人物である。
ミサは白いロングワンピースと無駄に裾が長い白衣を着ていた。
「ん? あまり大して変わらないじゃん」
彼女は変身した自分の姿に少し不満を持っている。
なぜならば、変身前の姿と今の姿では見た目にはあまり変化が見られないと感じられたから――。
しかし、彼女が着ている白衣は通常より裾が無駄に長くなっており、そのポケットの中には拳銃が一丁が入っている。
その内ポケットには試験管立てを兼ねたものであり、液体を入れておくための試験管が蓋つきで十本くらい入っているのだ。
「あっ、よく見たら便利そうなものがいろいろ入っているのね。あとは例の拳銃も……」
ミサはどこか納得したように白衣のポケットや通常の白衣にはついていないであろう、内ポケットなど自分の目で確認している。
「ところで、白衣の美女なんだからさ。何か変化があってもいいような気がするけど」
彼女はこのままでも十分美女ではあるが、美女度は数割り増しで毒舌も追加されていることに全く気がついていない。
その時、どこかからベルモンドの拳銃らしき銃声がミサの耳に入ってきた。
「おそらく相手も拳銃を使っているのね!」
彼女は拳銃を構え、警戒しながら生物準備室から出て打ち返す。
しかし、それ以降はミサの耳に銃声は聞こえてこなかった。
2018/12/03 本投稿