#10 ミサVSベルモンド
ミサとベルモンドは職員室にいた。
ここには五限目以降に使われるであろう学習プリントなどがきれいに置いてある。
「こんにちは、ミサさん」
「先ほどはどうも、キザ怪盗ベルモンド」
二人は向き合うように職員室の中心で挨拶を交わした。
彼らは拳銃の予備を含む銃弾の残数を確認している。
「ミサさん、準備はできましたか?」
「もちろんよ!」
「それでは、始めましょう!」
ベルモンドのかけ声とともに二人は各々の拳銃を構え、撃ち合いが始まった。
先ほどまでは静かな空間であった職員室が銃声が響き渡る戦場に化する。
「これでどう?」
「ふっ……まだまだですね」
「……くっ……」
ミサが撃ってきた銃弾が彼の頬を掠めたと思ったが、素早く交わされた。
彼女らは時々、教師達の机に飛び乗り、教科書や問題集を投げ合い、頬に切り傷を負っている。
「おやおや。ミサさんの美しいお顔に傷を負っていますよ?」
「あなたもね! 私の華麗な教科書チョップでもくらっていなさい!」
ミサは左手に現代文の問題集をベルモンドの頭に向けて投げつけた。
二人が入ってきた時はきれいに置いてあった学習プリントは散らかり、壁や教科書は銃弾によってぽっかりと穴が空いている。
「ミサさん、なかなかやりますね……」
「……そっちこそ……キザ怪盗ベルモンドのくせによくやるわね!」
散らかり放題になっていく職員室――。
彼女らは時々、銃弾の予備を入れつつも、撃ち合いや教科書による攻撃は数十分経ってもまだ続いていた。
「……っつ……」
ベルモンドが持っている二丁拳銃。
右手に持つものは調子のよい銃声をあげ、左手に持つものは一発だけしか発砲しなかった。
「……仕方ない……」
「あれー? もう終わりなの?」
一方のミサは相変わらず勢いよく拳銃の発砲音を響かせているため、まだ弾はある模様。
「あっ……弾が切れてしまった……」
数発撃ったあと、彼の拳銃の弾はどちらも切れてしまった。
それを見た彼女はベルモンドに近づいてくる。
「今回は私が勝ったということでいい?」
「は、はい……」
ミサは彼にそう耳打ちをし、勝ち誇ったような笑みを浮かべ、至るところが穴だらけで床には学習プリントや空薬莢に埋め尽くされた職員室から姿を消した。
「次はニャンニャン刑事さんかニャンニャン仮面さんのどちらかか……いずれにしても一回でも勝利しておかないと不利のようだな……」
彼女がいなくなり、静けさを取り戻したこの空間でベルモンドはぽつりと呟いた。
2018/12/09 本投稿




