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なれの果て

陶器のような肌を持つ種など我等の知る種では陶器鬼とうききと呼ばれる種のみ。しかしアレは一角獣種の一種故、一角が無ければ陶器鬼と認められぬ筈。

さて、是は何ぞ。

「目を開けよ。其方そなた、名を何と言う」

……。

…………。

………………。

矢張返事は無しと来たか。分かってはいたがな、是が返事をせんことなど。

見た目からして返事が無い事など我も、ヒトツギも分かっておった。分かっておってやったこと。

だが反応なしとはつまらぬものよ。我は短気ではないと公言しておったが…流石に無視はクるものがある。

「に、兄さん…顔がスゲェことになってるから…。しんこきゅー、しんこきゅー。ほら、吸ってー吐いてー」

…そのような事、言われずとも分かっておるわ。


取り敢えず、ヒトツギが抱える其の腕を、軽く捻りあげてみた。

ヒトツギの顔が凄い事になったが然程気にすることでもない。我の、この突拍子もないやり方はヒトツギも既に知っておる故な。

「兄さん…赤子の手をひねるって言葉はあるけどさァ…。人の子、或いは仲魔の手をひねるってのは…」

「…目覚めぬな」

「――痛みで目覚めるのはボクタチみたいな堕ちに堕ちた奴だけだよぉ」

『!』

嫌にねっとりとした声が我とヒトツギの耳に入る。仲間ではあるが、仲魔ではない。

同じ異形の者ではあるが、思想の違い、人の子に対する考え方が違う故にいつしか交わることのなくなったアクマ目アクマ科ヒト属に属するユユが、我等の背後に立っていた。

ユユは親に捨てられた人の子が堕ちに堕ちた、なれの果て。闇に身を委ね、ヒトとして生きる事を止め、復讐する事のみに快楽を見出す、そんな存在よ。

瞳孔は開き、口元にはいつも笑みを携えたその姿に恐れ戦く者もいると聞く。普通は閉じている筈の腹も、今宵は機嫌が良いのか裂け、舌をちらちらと見せつけている。

「…ユユか」

「アンタが目覚めたって聞いたからねぇ…挨拶ぐらいはしとかないといけないって兄ちゃんたちが言うんだぁ。兄ちゃん、今日は会議で来れないから代わりにボクタチが挨拶に来たんだよぉ」

ボクタチと言うからには複数名いるという事か。

我はヒトツギを背後に隠し、ヒトツギもまた抱える腕に力を込めた。未だ目覚めぬ其はされるがまま、といったところ。

そんな我等の警戒心に気が付いてか、ユユの背後に立っていた者が笑う。

月明かりがその身を明るみにすると――

「……!」

――何処からともなく息を飲む音がした。

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