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☆8☆ お姫様になれる呪文

 


 寝ずに書き上げたのはいいけれど、

 更新までする力が残ってなくて、今頃更新!


 次回更新はいつもより少しだけ早くできそうです♪

 

大きく深呼吸をすると、あたしは両頬をパチンと叩く。

 

 「ただいまー!」


 大きな声を玄関に響かせて、何事もなかったように靴を脱いだ。


 「あ〜ら、誰かと思ったらウチの不良娘じゃない。遅い時間に家を飛び出しておいて、なんだかずいぶんと平気な顔して帰ってきちゃって」


 玄関にあらわれたお母さんは腕組みをして顎をあげる。

 

 「うるさいな。どうせ、島崎のおばさんから電話きてるんでしょ。本当、嫌な感じ」


 「うわ、八つ当たり? その様子だと、夕紀君に逃げられちゃった? 情けないわねー、お母さんの若い頃なんてね」


 ほら、始まった。

 あんたと違ってかわいらしくてね、男の子にモテモテだったのよーでしょ?


 「あんたと違って――」


 はあ……。

 耳にタコだよ、お母さん。

 

 あたしはお決まりの出だしにうなだれる。


 「もー、うるさいな。逃げられたとかじゃないから! そもそも、ユキは幼馴染でしょ! た、だ、の! 幼馴染なんだからね」


 「やだ〜、本当、チョコってかわいくな〜い」


 あたしの言葉に落胆するように、お母さんはため息をついて、つまらなさそうに肩をおとした。


 「かわいくなくて結構です! お母さんたちが無理矢理おかしな方向に仕向けてるんじゃない」


 「えー、女の子はかわいいほうがいいに決まってるでしょ。それに、夕紀君だって――」


 「あーっ! もう! ユキ、ユキ、ユキって、勝手にユキとどうこうしないでよね! あたしにだって選ぶ権利があるっての!」


 いーっと白い歯を見せると、あたしはお母さんの横をすりぬけて階段をあがった。


 「贅沢もの! 何が選ぶ権利なの! 生意気言うんじゃないの!」


 階段下でお母さんが捨てゼリフのように叫んでいる。


 わかってるよ。

 そんな事、あたしが一番わかってる。

 あたしはユキに選ばれなかったんだから。

 頭が良くて、顔もいい。

 学校では女子1番人気、まさに理想の王子様。

 小さい頃のユキがそのまま大きくなったなら……。


 本物の王子様になったかもしれない。

 でもね〜……。

 あたしもそうだけど、ユキもずいぶんとひねくれちゃったよな〜。


 あたしは部屋のドアを開けると、真っ先にベッドの上に倒れこむ。


 「昔はかわいかったのに……」


 ベッドの心地よさにあたしはゆっくりと目を閉じた。

 

 昔だったらあたしを選んでくれた?

 

 胸にチクリと痛みが広がる。

 それから逃げるように、あたしは睡魔を受け入れる。


 あ、寝ちゃいそう……

 宿題……今日の分、まだやってないや。

 またユキに怒られちゃう……。

 

 いっか……、どうせ、もう……来ないかもしれないし。

 

 ――――キライだよ。チョコちゃんなんか大嫌いだよ。


 なによ。

 ふざけるなっての。

 あたしだって、あんたの事なんて嫌いなんだから。

 ずっとずっとキライなんだから……。





 






 「――――キライ! もーやめた! 見つからないんだもん!」


 「えー……だって、チョコちゃんが最初に見つけようって言ったんだよ?」


 暖かい日差しの中。

 一面に広がるクローバーの中、二人で座る。


 あれは確か、幼稚園の時だ。

 まだ、ユキを女の子だと信じていた幸せなとき。


 絵本の中にでてくる四つ葉のクローバーの本物が見たくて、二人でこっそり近くの空き地へ出かけたんだった。

 

 色素の薄い髪の毛を揺らして、ユキは困った様に笑っていた。

 

 「じゃー、もうちょっとだけだよ、ね?」


 「うん! ありがとう、チョコちゃん」


 ユキの笑顔にあたしは、弱かった。

 かわいいユキを、誰よりも大事にしてたのは、あたしだったのかもしれない。


 結局、長い時間をかけても四葉のクローバーは、見つからなかった。

 ユキが納得するまでと、後半は四葉探しはしないで、虫を観察して遊んでいたあたしは、暖かな日差しが翳りだすと、ユキに声をかけた。

 

 「ユキ、やめよ〜よ。帰ろ〜?」


 振り返ると、ユキは、背を向けてしゃがんでいた。


 「ユキ?」


 もう一度、声をかけると、ユキはくるりと振り向いて、あたしの頭の上に何かをのせる。


 「え?」


 「四葉のクローバーはあげられないから……かわりにね、あげる」


 クスクスと嬉しそうに笑うユキは幸せそうに手を叩く。

 あたしは慌てて、頭にのせられた物を取る。

 

 「これ……ユキがつくったの?」


 「うん。花の冠だよね。これも本にでてたでしょ?」


 クローバーの花で作られた白い冠。

 ふわふわとした可愛い花の冠。


 「でも、ユキのほうが」


 あたしが、ユキの頭に冠をのせると、まるで絵本から飛び出したお姫様みたいに見えた。

 

 「ダメダメ。チョコちゃんのほうが似合うよ」


 ユキはそう言うと、またあたしの頭に花冠をのせた。


 「ほらね。やっぱり! チョコちゃん、かわいいね」


 可愛いユキが微笑みながらあたしを「かわいい」と褒める。


 ユキの方が絶対に似合ってたし、可愛いのもわかってた。

 だけど、嬉しかった。

 あの一瞬、あたしはお姫様だった。







 あの時だけ……ね。

 本当、なんで今さら、こんな事を思い出しちゃうのかな。

 嫌いって言われたから?

 何か期待してた?


 まさか〜。

 違うよね、たださ、本当にね。

 お母さんに言われるまでもなくわかってるんだよ。

 

 「どうせ……かわいくない……よ」


 夢の中で言ったのか、本当に声をだしたのか不思議な感覚の中であたしはつぶやいた。


 「――――かわいいよ」


 答えるように遠くで聴こえる優しい声。

 

 あー……、ユキの声がする。

 これって、まだ夢のつづき?

 あのまま、仲良しのまま成長してたら、こんな風に優しく言ってくれたのかな。

 やだな、こんな事を考えるなんてズルイな。

 こんな事、夢に見ちゃうなんて、あたしがユキを好きみたいじゃん。


 「……あんたなんて……キライ」

 

 夢の中でさえも可愛くない言葉を呟く。


 その時、ふわりと誰かが頭を撫でる。

 

 気持ちいい……。

 なんだろう、何だか懐かしいかも。

 昔、誰かに、ずっとこうしてもらっていたような気がする……。


 「ごめんね……」


 悲しいような切ない声が耳に届くとあたしの世界はフェイドアウトする。








 「―――っ! チョコっ!」


 「う、うわぁっ!」


 あたしは、お母さんの大きな声で耳がキーンと鳴りながら飛び起きる。

 

 「あんたは本当に女の子なの? お母さん、時々、男の子を産んだんじゃないかって考えちゃう」


 「はい? なんでお母さん? あれ? ってか、あたし寝てた?」


 ベッドの上で部屋をキョロキョロを見てから、仁王立ちになっているお母さんを見上げた。

 

 「寝てた。寝るなら寝るで、ちゃんと寝なさいっ」

 

 「あ……うん。そっか……夢……ね」


 「何? まだ寝ぼけてるの? ほら! 歯も磨かないで寝るつもりだったの? あー、ヤダヤダ」


 お母さんはブツブツと言いながら部屋を出て行った。

 

 ひとり、ベッドの上に取り残されたあたしは、そっと頭を撫でた。

 そして、妙にはっきりとした感触を思い出す。


 「最後、なんだっけ……何か言ってたよね」


 あたしは、思い出そうとしても夢の中の声を、思い出せなくて歯痒かった。

 そして、何故だか、幼い頃の思い出だけが、鮮明に思い出される。


 「かわいい……か」


 声にだして言うと、すぐに鼻で笑った。


 今ではもう夢の中、思い出の中でしかきけないユキの言葉。


 あれは、お姫様になれる呪文。

 今のあたしには、誰も言ってくれないだろう言葉。

 

 まあ、しばらくは、あたしがお姫様になれる日はこないね……。

    ※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。













































































 ◆†あとがきという名の懺悔†◆


 本日もご来場ありがとうございます!

 数少ない奇跡の読者の方々! 大感謝です。

 なんでか突然、ばばーっと書けました。

 寝るのも忘れて書いた感じですが。

 只今、朝の4時! やばい! 仕事だ!

 あと2時間後には支度をしないと!

 とりあえず、寝ます! おやすみなさいませー。

 



 さて次回♪ ☆9☆ 走ってきた騎士

 

 予告が予告の役割をはたさないくらい、あっちこっちに動いてます。

 ここ数話、王子のお話ばっかりだったので、嵐君に登場してもらおうかなと。

 実はチョコちゃん、嵐君の方が理想なんじゃないのかなと書いてて思うんですよ。

 力強くて、守ってくれるタイプ。

 王子タイプというよりは騎士タイプ。

 お姫様と騎士もステキですね……あ〜、迷う結末。(なんちゃって


 


 


 

 

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