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☆7☆ 王子が幼馴染にもどる時?



 方向があっちこっちに定まらないのは

 私の脳内がいろいろ考えすぎてるせいなんです。

 なんで、今回、なんだかクールというよりは鬼畜な感じの王子です。(ごめんなさい;;

 こんな中学生男子いないよな〜……。

 コンコン。

 

 習慣になっていないノックという行為が、緊張を高まらせる。


 最後に、この部屋の扉を開けた時は、今よりずっと子供だった。


 毎日、笑って過ごした部屋が、目の前にある。

 あの日まで、幸せがそこにあった。

 大切なものが、確かにあった。


 数年ぶりに来た島崎家は、あたしの中にある思い出の風船をいくつもわる。

 その度に、怒りは薄れて、喪失感に胸が痛んだ。


 バカじゃん。

 あんなに仲良しだったのに……。

 すごく大事なモノだったのに……。


 ユキは覚えてるかな? 

 あたしは、今でもはっきりと覚えてる。

 お母さんたちの冗談交じりの会話と、ユキの言葉。

 あの時、何かが変わっていく感じがして怖かった。


 ただ、仲良くしていたかっただけ。

 ただ、笑っていたかっただけなのに。

 

 あたしは、部屋の中から返事を待たずに、ドアを開けた。

 以前、そうしていたように。

 

 ――――ガチャ。


 最初に目に映ったのは、懐かしい大きな本棚だった。


 「この本棚、まだあったんだ」


 ユキの姿を確認もしないで、あたしの視線は本棚に集中していた。

 子供の頃はものすごく大きかった本棚が今では最上段も踏み台なしでいけそうだ。

 

 「あ! アルバムじゃん! ねえ、これ見ていい?」


 右斜めうしろに、何か異様な気配を感じて、あたしは振り返る。

 きちんと片づけられた部屋の隅、壁に寄り添うようにユキはいた。

 

 ユキを見たあたしの口から思わず「あ、本当だ」と漏れる。


 「は? 何が?」


 不満そうに視線だけ上げて、まるで糸の切れたマリオネットみたいに、だらりと手足を床につけて、ユキはあたしを見る。

 

 その姿は確かにおじさんが言ってた通りで、壁に寄りかかり、足を伸ばしきっていた。


 あたしは半分、呆れながらユキに近づく。

 

 「ほんと、相変わらずだね〜、何よ、この部屋。男の部屋じゃないね。神経質なところ、変わんないんだ」


 あたしはぐるりと部屋を見ると不敵に笑う。


 「なんだよ、こんな時間に、それも勝手に入ってきて。お前みたいな非常識なヤツに言われたくねーよ」


 「ほ〜、そんなに冷たくしていいと思ってるの? 信じらんない。あたしが来た事を感謝してよね」


 ユキの子供みたいな悪態に、にやけながら、あたしはポケットから携帯を取り出し投げた。

 おじさんの話を聞いたせいだろうか?

 今のユキは小さなユキと同じに見えた。


 本当は何も変わってないのかもしれない。


 あたしの中に何故だか、嬉しさがこみ上げていた。


 「その携帯がしつこくブルブル震えるから届けてあげたんだから」


 投げられた携帯を上手にキャッチしたユキは「あ」と短く驚いてから、もう一度あたしを見上げる。


 「届けるため?」


 信じられないというような顔でユキは小さくきいてきた。


 「な〜に? 今更、そんな優しい声だしても遅いっての! さっきはあんなに強気だったくせに〜」


 そう言いながら、スッとユキの目の前にしゃがむと、顔を近づけた。


 「な! なんだよ!」


 目の前に近づけるあたしの顔に驚いたのか、ユキは壁に張りつくように逃げる。


 「ねえ、ユキは変わっちゃった?」


 「は?」


 壁に必死で手をくっつけながら、顔を横へそむけるユキ。

 ゆっくりと這うように顔を近づけるあたし。

 傍から見れば襲っているようにしかみえない。


 「あたし、ずっと引っかかってる事があって、ずっと、ユキに会うのも、この家に来るのも嫌だった」


 「だろうな」


 ユキの低い声にもめげずにあたしは続ける。


 「だけど、もう嫌。面倒じゃない。隣に住んでて、いつも気にしてて、それに、あれって子供の時のことだし、もう忘れない?」


 「はあ? そんな前の事、なんで今更、言うんだよ」


 「だから、嫌だから! 勉強、教えてもらえるのすっごい助かる。だけど、このなんていうかぐにゃ〜っとした、ジメジメーっとした感じが嫌なの! 今さらだけど、でも、あたしは気にしてたんだと思う」


 いつの間にか、気がつけば、必死で顔をそむけていたユキは真っ直ぐにあたしをみつめている。

 ユキの長いまつげが瞬きの度に揺れるのがよく見えた。


 「それで? どうして欲しいわけ?」


 「仲直りしよう! もう、前みたいにはいかないだろうけど。仲良くはできると思うよ」


 あたしの言葉にユキはキョトンとして、でも、すぐに小さくため息をついた。


 「強引。つーか、自分勝手」


 ぷいっと横を向くユキに、あたしはさらに近づく。


 「なによ、じめ〜っとキノコがはえたみたいになってるよりマシ! 男らしくないよ! 男なら細かいことでグダグダしない! 本当、ユキは相変わらず女々しいんだから!」


 あたしはふんっと鼻息荒くまくし立てるとニッと笑った。

 次の瞬間、ユキの整った顔がこれまた見事に悩殺スマイルをつくりだす。


 ――――ぎゃ!


 目の前でこの笑顔はキツイ。

 不覚にもドキッとしちゃったよ!

 本当、男にしとくにはもったいない顔してるよ。


 「降参。その男らしさは変わらないね」

 

 「じゃ、じゃあ。幼馴染、腐れ縁のお隣さん同士ってことで!」


 スクッとその場に立ち上がると、あたしは一歩後ろへさがり、チラリと見えた本棚のアルバムに手をのばす。


 「そだ! アルバムでも見る? なーんてね、時間が遅すぎか」


 ハハハとあたしの笑い声が情けなく聞こえる。

 

 「そんなに見たい?」


 ユキの顔が真顔になる。

 ほんの数秒だと思うけど、ユキの視線から目がそらせないでいた。

 

 な、なに?

 なんなのよ、無駄にキラキラしやっがって。

 落ち着け! 落ち着けあたし!


 「古き良き時代っていうの? 振り返りながら思い出を語りたいじゃない。まあ、原点から再出発って感じ?」


 あたしは慌てて、手に取ったアルバムを開いて、無理矢理にユキの前に置く。


 開かれたアルバムには小さなユキとあたしの写真が貼られている。

 公園で遊ぶ二人。

 一緒におやつを食べる二人。

 お昼寝をする二人。


 そのどれもが懐かしい。


 「本当にいつも一緒だったよね。うわ、何コレ!」


 開いたページ、1枚の写真を指差す。

 『はじめてのおつかい』と題された写真には、幼い頃の二人が手をつないで泣いていた。


 「ひっどい、こんなヒドイ写真が残ってるなんて」


 「あー、それってチョコちゃんが道に迷ってドブに――」


 「ストーップ!」


 ユキの口からおぞましい思い出が全て吐き出される前にあたしはその口を押さえていた。


 「あにっ! もごっもごもごっ……」


 あたしは手のひらでユキの唇の動きを感じながらも押さえ続けた。


 まずい。

 ユキと話すってことは、昔の事とかをバラされちゃうかもしれないんだ。

 それって、それってかなり危険!


 あたしはゴクリと唾を飲み込むとユキをにらむ。


 「ねえ……ユキ、学校で昔の話なんかしないでよね」


 口をふさがれたユキは抵抗をやめて、目だけで笑う。


 「学校で話しかけるのはナシにして! あたしがいても無視して、いい?」


 そっと押さえた手を離す。


 「いい? わかった?」


 ユキは無言でニヤニヤするばかりだ。


 「わかったかって聞いてんの!」


 「いいよ。今まで通りだろ?」


 やけに素直に応じてくれるユキを疑いながらも、あたしはホッと息をつく。


 「そのかわり、さ」


 そう続けたユキは寄りかかっていた壁から体を起こして、あたしの方へ近づくと、そのまま、あたしの体を床に倒した。


 「わっ! 何すんのよ!」


 立場逆転。

 さっきとは反対に、今度はあたしが押さえ込まれる。

 しかも、口なんかじゃなくて体ごと!


 「ねえ、チョコちゃん。前にも言ったけど、オレって男なんだよ? どうせ今でも、女みたいだとか、かわいいとか、思ってるんだろうけど。ちゃんと男なわけ」


 押し倒された状態で見上げるユキは確かに男だった。

 細い腕からは想像できない力にどうすることもできなくて、あたしは悔しくて睨みつけることしかできなかった。


 まるで4年前の繰り返し。

 その時、あたしの頭の中に、小さかったあたしの想いが溢れ出す。


 男の子のユキはキライ。

 だって、ユキが男の子だったら―――だもん。


 あれ?

 ユキが男の子だと何だっけ。

 ユキは女の子だって思っていたかったのはなんでだっけ?


 「チョコちゃん?」


 「あ……」 


 「こわいの?」とユキはふんっと鼻で笑うと、ゆっくりと顔を近づける。


 な、何する気? 

 まさか! 

 キキキキ、キスしようとしてる?

 ユキがあたしに?

 嘘でしょ!?

 バカじゃん!

 まずいって!

 絶対、まずい!

 何がまずいって……まずくないような気もするけど。

 

 何かちっがーうっ!!


 あたしは最後の抵抗とばかりに、比較的、自由のきく足をバタつかせた。


 「バカーっ! 冗談やめてよ! 何考えてんのよ!」


 あたしは大声を上げながら、もうダメだ! と顔を左右に振る。

 

 「別に減るもんじゃないし」


 「減る! 減るにきまってんでしょ! それに!」

 

 あたしは間近にせまったユキの顔を止めるように言う。


 「こーいうのは違うでしょ! 好きな人とするもんで、遊びでするもんじゃないでしょ!」


 次の瞬間、ピタッとユキの動きが止まる。


 目の上、2センチの距離にあるユキの大きな瞳があたしの視線とあわさる。


 「ま、さか。あたしの事、好き……なの?」

 

 自分で言って恥ずかしさで顔が熱くなる。

 何の根拠もない疑問。


 ああーっ! 恥ずかしすぎて消えてしまいたい!

 なんてことをきいてるのよ……。

 ユキだってからかって楽しんでるだけなんだから。

 

 「――キライだよ。チョコちゃんなんか大嫌いだよ。それに、こんなの冗談に決まってるだろ?」


 笑いもしないで、まっすぐにあたしを見下ろしたまま、ユキは言う。

 思わず、驚くのを隠せなかった。


 ヤダ……。

 何だろう。

 わかっていたのに、胸が痛い。

 ただ、ユキは男だって事を証明したいだけで、こんな嫌がらせをしてただけ。

 そんな事、なんとなくわかってたのに。

 「好き」なんて気持ちはないのは同じなのに。

 はっきりとした言葉が胸にささる。

  

 「え? 好きだって言ってほしいの? ずっと想ってたみたいな?」


 意地悪なユキは綺麗な顔でサラリと言う。

 あたしは閉じた唇を震わせながら、耳の奥から目の中心にかけて熱くなるのを感じていた。

 そして、抑えきれなくなった力を込めて、膝を振り上げた。

 もちろん、あたしの膝は見事にユキの急所へヒット。


 「うがっ!」


 変な声を発して、ユキは転がる。

 あたしはその隙に立ち上がった。


 「ふざけんな! バーカ!」


 あたしは力いっぱいドアを開けるとそのまま一目散に家へ走った。

 

 

 やだよ! あたし、絶対にユキを男の子になんかしてあげないの!

 だって、ユキが男の子だと―――だもん。


 幼いあたしの声が頭に響く。

 そして、胸の痛みが広がるのと一緒にあたしの視界は歪んでいった。

 

    ※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。


































































 ◆†あとがきという名の懺悔†◆


 ご来場ありがとうございました!

 すっごいヤバイです。

 春には続編書こうとおもってたのに、書けてないし。

 これも終わってないし。

 マイペース、カメ更新。

 読んでくれる人がいることが奇跡なお話になりつつあります。

 アレの続編は夏になるのかな〜と遠い目をしてしまいます。

 1日が48時間ならいいのに……。



 さて次回♪ ☆8☆ お姫様になれる呪文


 ご指摘があったので、予告内容変更〜。

 ついでに次回タイトル変更〜。

 シャワーあびてて、やっぱりもう一話追加したほうがいいかなと

 急遽、粗文を考えます。(これから!

 奇跡の読者がいることを知ったので

 気持ちを新たにがんばりますね!(カメなのは変わりませんが……


 次回は回想の予定です。

 思い出を書こうかなと思います。

 またいきあたりばったりで、おかしな文章を追加してしまったので

 ふくらんじゃいました。

 でわ!

 お気を長くおつきあいくださいませ。

 ご苦情、ご感想、お待ちしております。(どんなのもドーンとこいです!

 

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