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☆6☆ 王子の秘密と島崎家の人々


 おはようございまーす。

 同タイトルで1と2みたいに分割しようかと思ったんですけどやめました。

 で、別タイトルになってますけど、内容は7話につづく……みたいな。

 

 オレンジ色の外灯で照らし出される洋風のドアの前。

 チャイムを押して、すぐにインターホンから懐かしい上品な声が「どちらさま?」と尋ねてきた。


 「あ……、おばさん。千代子です」


 『えっ! チョコちゃん?』


 プツッという音声の途切れる音がして会話は切断される。

 久しぶりに聞いた島崎のおばさんの声に緊張しながら目の前の扉が開かれるのを待った。


 ―――カチャッ。


 ゆっくり開く扉から眩しいくらいの明かりに目を細めると、あたしの目の前に島崎家の懐かしい玄関があらわれる。

 ラベンダーの香りが鼻をくすぐって、いろんな思い出が溢れてきた。


 毎日のように行き来していた場所。

 絵本の中にでてくるような手作りのお菓子。

 ユキの部屋の大きな本棚。

 二人でよく寝転びながら絵本を読みあった気持ちのいい午後。

 おでこがぶつかる程に体を寄せて、あたしたちは幸せの中にいた。


 「チョコちゃん!」


 扉が開ききると突然、中から甘い香りと一緒に抱きつかれる。

 

 「わっ!」


 あたしの体が思わず後ろに倒れそうになるのもおかまいなし。


 「本物のチョコちゃんだわ! パパ! チョコちゃんよ!」


 「本当!?」


 バタバタとした足音と耳元で聞こえるテンションの高い声にあたしは懐かしさで思わず笑ってしまった。


 「おばっ、おばさんっ! く、苦しいから!」


 「あ、やだ! ごめんなさい」


 少しだけ体に覆いかぶさるものが力を緩める。

 隙間から顔を出すと、懐かしい二人の顔が変わらずにあった。


 ここ数年、まったく顔を合わせることもなくなった人たち。

 家族のように小さな頃からたくさんの愛情をくれたユキの両親。


 「おばさんもおじさんも、相変わらずパワフルすぎ」


 とてもウチのお母さんと同じ歳とは思えない美女が目を潤ませてあたしの顔を両手で撫でる。


 おばさん、相変わらず綺麗だし。

 おじさんも「おじさん」って言うのが悪い感じ。


 「パワフルにもなるでしょ。こんなに、チョコちゃん綺麗になって……」

 

 「おばさん、大げさだよ。褒めすぎ〜。あたし普通だよ」


 普通かどうかも謎だけど、綺麗とは言われたことないもんね。

 それに、ユキの方があたしよりもずっと美人だよ。

 

 なんて言葉は飲み込みつつ、あたしは島崎のおばさんのハグから逃げ出せずにいた。


 「そんな事ない、綺麗になった! こんなに可愛くなって……、ねえ? パパ」


 「うん。女の子は変わるね」


 「ほらね! もう! チョコちゃん、チョコちゃん、チョコちゃん。あーっ、チョコちゃんだ」


 もう一度、ギュッとキツく抱きしめられるとあたしは「死ぬ!」と心の中で叫びつつ、人形のように動けなくなっていた。


 その時――――。


 「何やってんの?」


 瞬間冷凍。

 空気が凍るって、こういう感じなんだと思う。


 無我夢中であたしの体を拘束していたおばさんの動きが止まった。

 そして、無音の張りつめた空気。

 

 「お、ユキ。めずらしいお客さんだぞ」


 重たいような息苦しい沈黙を破るおじさんが、声の主の名前を呼ぶ。

 

 「見ればわかるよ。だから、何って聞いてるんだけど。特に、そこのオバサン」


 「オバサンって、ユキちゃんに言われたくない! ママでしょ!」


 一度、急降下したテンションが急上昇したようなおばさんの声が耳に響く。


 「いくつだと思ってるんだよ。いい加減、大人になれよ」


 おばさんの腕の隙間から見えるユキは呆れながら目だけで笑う。

 

 「チョコちゃん、なんでユキはこんなに可愛くなくなっちゃったのかな」


 「さ、さあ……」


 たぶん、可愛くないのは家でだけだと思うけど。

 なんてったって、学校じゃ王子だし。


 おばさんの肩越しにユキと目があうと、あたしはワザとらしく笑ってみせた。

 ユキは眉間に皺をよせてあたしを睨みつける。

 

 「で、チョコちゃん、どうしたの?」


 「え、ああ。忘れ物を……じゃなくて! ちょっと話が」


 「こんな時間に? 面倒だな……。ま、じゃあ入れば? 外でいつまでも、うちのおばさんの人形になってるのも嫌だろ」


 ユキは手まねきすると、そのまま階段をあがっていく。

 

 「あ! ちょっと待ってよ!」


 叫んで手を伸ばしてみたけど、ユキの姿は視界からきえた。

 

 くそ〜〜〜〜っ。

 手招きするくらいなら待てっての!

 

 「何やってるの? はオマエだろ! って感じね〜」


 あたしの体から腕をはずして、島崎のおばさんは呆れた声をだす。

 それから、あたしの背中を押すように家の中へ入った。


 「ママは騙せないんだから」


 「おばさん?」


 さっきからブツブツと聞こえてくる島崎のおばさんの言葉が理解できなくて首をかしげた。

 おばさんはクスクスと笑うと、おじさんと目で会話して、今度はふたりで笑い出す。


 「な、なに??」


 「ごめんね、チョコちゃんの事じゃないからね」


 おじさんがそう言ってから、笑い続けるおばさんに「ほら」と言う。

 あたしは何がなんだかわからずに靴をそろえて階段へ向かった。


 でも、すぐに「待って」と呼び止められる。

 

 「ユキの事、許してね。冷たくしてるわけじゃないから。ちょっとバカなの」


 バカ……。

 それはヒドイんじゃ。


 階段下の真剣なおばさんの顔に、あたしはつっこむ事もできずに言葉を失ってしまった。

 

 「たぶん、今。部屋ですごい緊張してると思うから」


 おばさんはニッコリと微笑むと「行ってみて」と続けた。


 「まさか〜。ユキが緊張? 想像できないな〜」


 「じゃあ、チョコちゃんにとっておきなヤツを教えてあげるよ。ユキは今ね、部屋の壁にもたれて足を伸ばして座っているはずだよ」


 「は? おじさん? なにそれ」


 「あの子はね、なんでも要領良くできるんだけど、1つだけ上手くできない事があって、その事で考え込んだり、落ち込んでる時は必ずそうなんだよ」


 おじさんは「秘密だよ」と人差し指を立てて唇にあてる。

 夫婦そろって似たもの同士なのか、息子を心配してというよりは好奇心でいっぱいと可笑しそうな様子だ。


 「よくわかんないけど、あたしもこのままじゃダメだと思うし、ちょっと体当りしてきます。遅すぎかもだけど……」


 あたしは小さく頭を下げると階段を一気に駆け上がった。

 階段下から二人の興奮したような声が聞こえてくる。

 

 「ユキが緊張ね〜……ありえないし」


 あのキラキラ王子と凶悪王子の二面性を持つユキだもん。

 緊張したフリはできるだろうけど、本当の緊張なんて絶対しないように思う。

 まして、あたし相手に……。


 あたしは小さく笑って、廊下のつきあたりの部屋の前に立った。





  ※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。







































 ◆†あとがきという名の懺悔†◆


 ご来場ありがとうございました!

 ううっ。

 書く時間がないっ!!

 とんでもない事にやっと半分ってところで、終わらない。

 パパパッと書いて、10日かそこらで終わらせようと思ってた予定が

 狂いに狂って今、現在。

 ありえないし!

 4月にはいったら続編に取り掛かろうと思ってたのに

 できなーいっ!

 続編の粗文はできてるのに……。

 ダブルで書くなんて器用な事はできそうにないし……。

 早く終わらせないと……。

 とにかく、がっ、がんばりますっ!

 

 さて次回♪ ☆7☆ 王子が幼馴染にもどる時

 

 ノロノロ更新デス。

 ここらへんからちょっと進めていけるかなと。

 なんていうか、前置きが長い……。

 でも、動き始めてくれればサッサッかな。

 後半はドタバタしちゃう感じになりそうだし。

 とろ〜り感は最初だけの予定です。

 


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