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☆3☆ 恋と友情とサイコロの確率



 意味がわからないかもしれません……。

 ちょっと暴走しすぎてますが、

 甘い目で見ていただけたら嬉しいな……と。(ダメっぷり

重たい瞼を必死で押しあげ、頬杖をつきながら、ゆっくりと机の上にサイコロを転がす。

 サイコロはカラカランと小さな音をたてて2、3回転がって止まった。


 「2か……」


 小さなため息と一緒にあたしは無意識に声を出すとノートに出た数を書き込んだ。

 

 説明のとおり、あたしはサイコロと格闘中です。

 昼休みの騒がしい教室で、周りの楽しそうな会話なんか、まったく耳にはいらない。

 集中してるからなんかじゃない。


 眠いから!


 忌々しい問題集が徹夜しても終わらなかったなんて言ったら。

 きっと、ユキのヤツが「根性なし」とか言いだしそう、だから――。


 意地でもなんでもいいからやってんのよ!


 シャープペンシルをギュッと握ると、ふーっと大きく息を吐く。

 サイコロの二つの黒丸を睨みつけてもう一度、手にとる。


 「よお、チョコ。何やってんだ?」


 突然、からかう様な声が目の前から聞こえると、本日、何十回目かのサイコロを転がして、あたしはゆっくりと視線をあげる。


 「うわ〜……。お前、すごいブス顔してるぞ……まさか、寝てないのか?」


 日に焼けた肌に細い目をより一層細めた笑みを浮かべてクラスメイトの本多ほんだ あらしが驚きながらもあたしの前の席に座り、二人で向かいあう。


 「悪い?」


 「悪いっていうか……ひどい」


 アラシはあたしの顔をもう一度、確かめるように覗き込むとニッと笑う。


 「ほっといて。アラシこそ、受験勉強してるの? ……と、4か」


 アラシへの返事もそこそこにサイコロの目をノートに記入する。


 「なんだよ、それ数学? そんな宿題でてたか?」

 

 ノートを覗き込もうとアラシのツンツン頭があたしの目の前に近づくと、慌ててあたしはノートを隠す。


 「宿題じゃないから」


 そう、学校の宿題なんかじゃない。

 これは突然あらわれたお隣さんで家庭教師の幼馴染、ユキからの宿題だ。

 

 小さな頃から頭だけはよかったユキ。

 今じゃすっかり才色兼備だ。


 まあ、今でも運動は苦手なんだろうけど……。


 あたしは小さな頃、走っては転ぶユキの姿を思い出しながら、さらにサイコロを振る。


 あいつ、サイコロみたいだな。

 そうか! このサイコロをユキだと思えば少しは楽しめるのかも!

 ハハハハッ!

 ザマーミロ! 転がして転がして転がしてやるんだ!


 「チョコ……顔が怖いぞ?」


 アラシの言葉もあたしには届かずにあたしの脳内フィルターで今やサイコロはユキに変化して見えていた。


 「ちょっとー、アラシ。あんたからも言ってやってよ」


 カラカランと音をたてて転がるサイコロにあわせて、大人っぽい落ち着いた声があたしの背後から聞こえて、その声の主はあたしの両肩を掴んだ。


 「お、麻衣。お前でも止められないのか? コレ」


 「止めてるけどやめないの。ずっと朝からやってんの。信じられないって」


 小学校からの親友、葛城かつらぎ 麻衣まいはギュッと手に力を入れる。


 「イタっ。麻衣、あたしの肩つぶれるって」


 「何よ、ずっとサイコロなんかで遊んじゃって!」


 麻衣は肩越しにあたしの顔をにらみつける。

 長い髪がサラサラと流れるのが目の端にうつると、あたしは小さな声で言い訳をはじめた。


 「遊んでるんじゃないんだって……これにはふか〜い事情ってヤツがあって……」


 「コロコロコロコロって、もう何百回、転がしたら気がすむわけ? あたしが話しかけても無視だし。チョコはあたしの話なんか聞きたくないんでしょ」


 「そんな〜……麻衣は受験終わってるからいいけどさ〜……」


 机の上で空しく数を表示させたサイコロを見つめながらあたしはユキの意地悪な顔を思い出す。


 何よ。

 眠いのも、麻衣を怒らせてるのも、アラシに笑われたのも。

 みんな、みんな。

 ユキのせいじゃない!

 なーんで、あたしがこんな目にあわなきゃいけないのよ!


 「なんか、わかんねーけど。許してやれよ、麻衣」


 「なんでよ!」


 麻衣の棘のある声にアラシが一瞬、ひるむ。


 「チョ、チョコ……相当、寝不足とみた」


 「チョコが寝不足?」


 あたしには見えないけど、きっと麻衣はかわいいというよりは美しい顔を凄ませて壮絶な表情をしているんだと思う。


 麻衣はキツい性格だから……。


 案の定、目の前のアラシの顔はみるみる、ひきつっていった。


 「ばっ、ばか! 見てみろよ。目の下にすっげークマ飼ってるんだぞ!」


 あたしの顔を指差しながらアラシは必死に訴える。

 その直後、ザワリと背後の気配が動き出す。

 背後霊がいたらきっとこんな感じなのかもしれないと思わせる存在感でゆっくりと倒れるように麻衣の影が右の頬をかすめると、にゅっとアップの美女があらわれた。


 真っ白な肌に赤みがかった唇。

 黒くて潤んだ大きな瞳にあたしの顔がうつり、時々まつげでそれは遮られる。

 流れるような長いストレートの黒髪に目を奪われる。


 現代のお姫様。

 校内の王子様がユキならお姫様は麻衣に決まってる。

 だけど、今はそんなお姫様の顔は悪の文字が浮かび上がって見えるような錯覚を起こしてしまうほどに恐ろしい凄みがあった。

 

 「麻衣……。こ、こわいんだけど……」


 横目で睨みつける黒髪長髪の美女は大きな目を見開く。


 「あ、ほんとだ。すっごいクマだ」


 麻衣は「あら!」と小さく驚くとすぐにニヤッと笑う。

 あたしは二人に顔をまじまじと見つめられ、机に伏せた。


 「もー、やだ! 人の顔で遊ぶのやめてよね!」


 「なによ、チョコが悪いんじゃん。サイコロとばっかり遊んでるんだから」


 伏せたまま麻衣の不服そうな声を聞いて目を閉じる。


 あ〜……眠い。

 もう、寝ちゃいたい!


 「ん〜? サイコロを投げた時の3が出る確率? サイコロを5回振って3が出る確率を求めよ」

 

 アラシは「なんだこれ?」とばかりに棒読みだった。


 そう! 

 それなのよ!

 確率、確率、確率なのよーっ!

 あれ?

 ってか……何でアラシがこの問題を?


 えっ!!!


 頭が急回転を始めて、あたしは勢い良く顔をあげると、目の前にうつる見慣れたノートを広げるアラシからそれを奪う。


 「なっ! なんで見るのよ!」


 「わりぃ、何をそんなになるまで悩んでるのかと思って」


 必死にノートを隠すあたしに驚きながらも申し訳なさそうに頭をかくアラシを睨みつける。


 「なーに? サイコロのコロコロ遊びって確率の勉強だったわけ?」


 麻衣も驚いたようにあたしの横にしゃがみこむ。

 目から上を机から出した状態であたしの顔を見上げる。


 「……確率わかんないから」


 口を尖らせてノートを抱きしめる。

 そんなあたしの姿が二人にどう見えていたかなんてわかんない。

 だけど、麻衣は嬉しそうに微笑むといきなり抱きついてきた。


 「もーっ、それなら早く言いなよ。あたしが教えてあげるのに」


 「くっ、苦しいよ」


 あたしは麻衣の見た目からは想像できないほど大きな胸に顔を押しつぶされながら、もがく。


 世の中、平等なんて嘘ばっかり!

 どうせ、あたしは脳みそも胸もちっさいよ!


 「あのな〜。サイコロの確率なんて実際に振ったってだめだからな。そんなのテストですんなよ」


 アラシは呆れたようにノートを指差す。

 ノートに書かれた数字の山を見て、あたしが必死に実践で確率を割り出そうとしてたことを指摘していた。


 「なによ、アラシはわかんの?」


 やっとのことで麻衣の巨乳地獄から抜け出したあたしは息を荒く挑戦的にアラシにききかえす。


 「確率ってのはな、必ず出る数じゃないんだぞ? 簡単に言えばでるかもしれない数っつーことだろ? つまりだ、出る可能性はどのくらいかを予想することなんだよ。だから実践したって式はでてこねーっての」


 出てこない……。

 じゃあ、昨日からやってるあたしの努力って……。


 「え、ってか式……、式ってあんの?」


 「チョコ……嘘みたいに頭悪いのね」


 あたしの言葉に麻衣はケラケラと笑いだす。


 「お前さ〜……教科書、読めよ! 式でてんだろ? ったく、しょうがねーな。放課後、教えてやる」


 「え?」


 ぽかんと口をあけるあたしの目の前に真っ赤な顔をしたアラシがそっぽを向いて「受験、落ちたら困るんだよ」と呟いた。


 「あ、……え? なんで? アラシも受験で大変じゃん。公立が本命でしょ? あたしならいいから、ちゃんと帰って勉強するし……ん? 困る? 困るって何が?」


 アラシの言葉の意味が良くわからなくて、あたしは何故だか麻衣に助けを求めた。

 

 「ぷっ! ざーんねん! はい! アラシ退場! ばいばーい」


 麻衣は笑いを堪えながらアラシを前の席から追い出すと、今度は麻衣と向かい合う。

 追い出されたアラシは麻衣に文句を言いながらも男友達のもとへ渋々むかっていった。


 「なにあれ……変なアラシ」


 「ほーんと、チョコって頭悪いね」


 麻衣はニコニコと微笑みながらもひどい事をサラリと言う。


 「どういう意味?」


 「そうだな〜。確率かな?」


 「確率?」


 頬杖をついた麻衣が机の上に転がったサイコロを細い綺麗な指で押さえる。


 「サイコロの目は1から6でしょ? チョコの気持ちは何面あるの?」


 「何面って……意味わかんないし」


 「まあ、いっか。たとえばサイコロみたいに1から6の数字があって、それが気持ちの大きさだったとしてね。チョコにとってアラシの数はいくつなの? 気持ちのサイコロを振って6がでる確率はどのくらいなのかな〜と思って」


 アラシの数?

 気持ちのサイコロ?

 気持ちの大きさを数の大きさと考えて?

 つまり……それって――……。


 「えっ! 6って、好きって事!?」


 「そう」


 驚くあたしに麻衣は変わらずニコニコと微笑み続けた。


 「ないない! アラシは友達だよ?」


 「ふ〜ん。でもさ、いつも友達っていう目がでるとは限らないじゃない? 確かに1の時もあるだろうし、4の時もあるけど、6だってありえるでしょ? 確率はゼロしゃないよ」


 「つまりそういう事」って言うと麻衣は立ち上がる。


 そういう事って……全然、わかんないけど……。

 これってアラシの事を言ってる?

 それとも確率の解説なの?


 考えこむあたしに麻衣はニヤリと笑う。

 

 「悔しいけど、アラシの言った事は本当。確率は出る可能性を予想することなんだから、実践したって無駄だと思うよ」


 麻衣がそう言うと昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 そして、麻衣はそっとあたしの耳元に唇を近づけるとボソっと耳打ちをして自分の席へ行ってしまった。

 

 残されたあたしはその言葉にしばらく動けなくなる。


 チャイムを合図に次々、教室にはいってくるクラスメイトの中にアラシの姿を見つけ、目が釘づけになって、麻衣の言葉が脳裏によみがえった。


 ――――今、アラシのサイコロは6だったって事。


 それって……。

 それって……。

 受験生にあってはならないもので、漫画なんかでよくあるアレですか!?

 

 ええええっ!

 アラシがあたしの事をす、す、す、す、好きっ!?

 嘘でしょ? 勘違いでしょ?

 あ、ありえね〜……。

 だって、あたしたち友達じゃん!

 あっ、仲間?

 もう、なんでもいいっ!

 と、とにかく。

 落ち着こうね、あたし。

 好きとか好きとか好きとかはサイコロの確率とは違うんだし。


 あ、でも。

 確か……志望高校って同じだったような……。


 その瞬間、アラシの照れた顔と「落ちたら困る」の言葉が浮かぶ。


 うわっ!

 本気?

 本気なの? だとしたら、これってチャンス?

 

 人生初の色恋沙汰に舞い上がるあたしの中からユキの問題集は消え去っていた。


 だって、もう。

 それどころじゃないでしょ?

 

 いつの間にか眠気は消えて、あたしは鼻息荒く5限目の授業に突入した。


※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。


















































 ◆†あとがきという名の懺悔†◆


 ご来場ありがとうございました!

 うわ〜……本当にカメ更新に拍車がかかってます。

 言い訳してもいいですか?

 お仕事から帰宅してご飯を食べて横になる熟睡、そして朝。

 これの繰り返しでした。(言い訳にならないいいいっ

 見捨ててください;; もうぺったりおでこをくっつけて謝ります。

 週に1回は更新を目指します。

 これはお約束いたします。

 まあ、信じられないですよね……。

 HPもできてないし……3月オープン目指しているのにアヤシイです。

 しかも! 今回のお話、予告と違いましたよね!

 しかも! 王子でてないし! 

 やっぱり、あらすじノートの当てにならなさは相変わらずです。

 そんなダメっぷりですがお許しくださいませ。

 


 さて次回♪ ☆4☆ 家庭教師は意地悪王子

 

 もう次回こそ!

 このタイトルで! 王子で!

 友情好きな私が寄り道しないように予告いれてるんですが

 それでもふらふら〜っと友情書いてしまう悪い病気。

 恋愛も好きですが友情が好きです。

 ところで、ラブコメになってます?

 もう、書いてると暴走するのでヤバイです。

 でわ! また5日後くらいに!!

 

 


 


 



 


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