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☆2☆ お隣さんは凶悪王子


 待っていてくれる方がいるのかも謎ですが。

 2話目を更新させていただきます。

 面白いか面白くないかと言われると

 「あんまり……」と泣けてきます。

 玄関には爽やかな笑顔とすらっとした長身にお似合いのシンプルなコート姿の美少年。

 向かうあたしはルームウエアといえば聞こえはいいがパジャマに毛がはえた程度の姿で無造作に髪をあげて分厚いルームソックスという悲しい姿。


 どーすんだコレ!?


 そんなあたしの焦りも悲しみもまったく気がつかない母親が嬉しそうに話しだす。


 「ほ〜んと夕紀君、ひさしぶりね〜。かっこよくなっちゃって〜。これじゃあウチのチョコなんてダメに決まってるわね〜」


 「おかーさん!」


 慌てて止めにはいろうと玄関に駆け寄ると――――ズルッ!


 分厚いルームソックスが災いして、あたしは玄関めがけて滑った。


 うわああああっ!

 

 絶対、かっこ悪く転ぶ! と思った。

 だけど、何かがあたしの身体をグイッと引き寄せる。

 あたしの体は間一髪のところで転倒をまぬがれて、まるでゲームセンターのUFOキャッチャーで掴み損ねた人形のようにユキ腕にぶらさがっていた。


 た、助かった〜。

 笑われるとこだったよ〜……ん? って、あたしは何にぶらさがって……。


 まさか、と思いながら顔を上げると幼い頃の面影を残した美少年の微笑みが胸を直撃した。


 「あぶなかったね、チョコちゃん。そんな滑る靴下はいてるから……」


 不安定なあたしの体を持ち上げる強い力を感じると、耳元で聞こえる少し高めの綺麗な声があたしの名前を呼んでいた。


 懐かしいのに初めて聞いたような不思議な感じ。


 4年振りのユキの声は変わらずに優しい声で、あたしに変な期待をさせた。

 

 もしかしたら……仲直りができるんじゃ……。


 そう思った瞬間、フワッと体が浮き上がってから子供のように両足を床に着地させるとニコッと優しい笑顔のままでユキが「大丈夫?」ときいてきた。


 「平気……」


 咄嗟に顔をそらして、あたしはムカムカする気持ちを抑えていた。


 なんか……。

 めっちゃムカつくんですけど……気のせい?

  

 ほんの数年前までは背も同じくらいだったし、力なんかあたしの方が強かったのに。

 涼しい顔しちゃって余裕って感じじゃない。

 モテるわけですな〜、ほんとっ! 腹立つ〜!!


 「ほーんと、チョコはドジなんだから! 重かったでしょ? 夕紀君は大丈夫?」


 「あ……はい」


 ユキがお母さんに照れながら小さく頭を下げる。

 爽やか全開、王子度アップの姿を目の当たりにしてあたしのムカムカは限界点を突破した。


 「うるさいな! もう重くないよ! いつの話してるの!?」


 小学生まではぽっちゃりしてたあたしも、中学にはいるとスリムになってた。

 チョコレートを食べなくなったのが一番の理由だとは思うけど……。


 「ごめんね、チョコちゃん」


 ユキの気弱な声がムカムカする気持ちを揺さぶる。


 「あやまらなくていいよ!」


 目をカッと見開いてユキの顔を睨みつける。

 さっきは顔をそらして見えなかったユキの顔が至近距離にあった。

 玄関との段差であたしの方が高いはずなのに同じくらいの目線で向かいあう。

 数年ぶりに近くで見るユキの整った顔を前に嫌な汗がふきだした。

 

 何、この目! 

 まつげがバッサバッサじゃない!

 何、この口!

 ぷるぷるしててフワフワじゃない!

 何、この鼻!

 自慢じゃないけどあたしはメガネが落ちるくらいに鼻が低いのよ!


 あたしの中のムカムカが限界を超えても大きくなる。

 膨らむ気持ちをどうにもできなくてあたしは衝動に身をまかせた。


 もーっ!

 いちいちムカつくのよ! 泣き虫ユキのくせに!


 ―――ぐにゅり。


 「え……」


 ユキの眉間に皺ができる瞬間を見た。

 それもそのはず。

 あたしはユキの鼻をねじっていたんだから。

 あたしの中のムカムカはユキの鼻をねじると満足したのか急速に小さくなった。

 残された正常なあたしは笑顔をひきつらせる。


 な、なんてことを……どうしよう。

 絶交なんて恥ずかしい過去から4年振りの会話で鼻をねじるなんて!

 あたしってもーっ! なんでこうなのよ!

 な、何か言わなきゃマズイよ……。


 混乱する頭を必死で回転させて唇を動かす。


 「……へ、変な顔」


 最悪だ。


 あたしはありがとうを言うタイミングをのがし、さらにごめんなさいを言うタイミングで「変な顔」と言ってしまっていた。


 「チョコ……あんたって子は……」


 さすがの母も驚きすぎて言葉もないらしい。


 目の前の美少年は鼻をねじるあたしの手をそっとはずし、それでも笑顔を浮かべる。

 そして、視線をお母さんに向ける。


 「おばさん、チョコちゃんは知らないんですか?」


 「え、ええ。驚かそうと思って。でも、イヤでしょ? こんな子」


 お母さんは申し訳なさそうにため息をつく。


 あたしが知らない?

 驚かす?

 何の話をしてるのよ??

 ユキがここにいる理由?

 そうだよ! そもそも、なんでここにいるの?


 首を傾げるあたしに二人が視線を向ける。


 「え? え? 何? 話がみえないけど?」


 「チョコ、実はね」


 「いいですよ。僕が話します」


 爽やかにそう告げるとあたしのツッコミを待たずにあたしの手をユキがひっぱって二階へあがる。


 へ?

 な、なに?


 子供の頃は毎日のように遊んだ部屋だ。

 ユキが忘れるわけがない。

 慣れた足取りで二階のあたしの部屋へひっぱられながら向かう。

 

 「ちょっ! ユキ?」


 手を引かれながら問いかけるあたしを少しだけ振り返ってユキはニコッと笑った。


 「バカなヤツ」


 玄関から心配そうに見上げるお母さんには聞き取れないほど小さく放たれた言葉はちゃんとあたしに届いていた。


 バカなヤツ?

 誰が?

 っていうか、今のユキが言ったよね?

 え? 何? なんかキャラ違ってなかった?


 「単純っ、笑えるね」


 ユキは肩を小さく震わせてクククッと嫌味な笑い方をする。


 は?

 誰、コレ?


 繋がれた手をふりほどこうと力を入れるけれど、ユキはそれを許してはくれなかった。


 「は、離して!」


 もう一度、手を振りほどこうと力をこめるのにビクともしない。


 「だーから、バカだっていってるの」


 ユキは部屋のドアを開けるとあたしを部屋へ引き込む。

 そして、静かにドアを閉じた。


 「ユキ? どうしちゃったのよ?」


 なんだか様子の違うユキに手を繋がれたままゆっくりと声をかける。

 

 「久しぶりだよね、チョコちゃん」


 振り返ったユキはわざとらしく、それでいて嫌な笑いを浮かべる。

 その時、はじめてユキの変化に気がついた。


 「……あんた、変」


 「変じゃないよ、これが普通なの。オレもいろいろ成長したって事?」


 「オレって……どうしちゃったのよ」


 学校でのユキの噂は聞いていて、とくに変わった噂は聞かなかった。

 男の子なのに女の子みたいに優しい言葉使いで儚いキラキラ王子。


 「オレ」とか言わないからこそ「王子」だったんだろうし……。


 それが何?

 「オレ」とか言っちゃうわけ?

 夢が壊れるじゃない!

 

 「言いたいことがあるって顔だ。ったく、いつまでも子供じゃないだろ?」


 ニヤッと不適な笑顔を浮かべながらあたしの肩に手を置く。

 

 「力も強くなったし? 逆転だ、チョコちゃん」


 白い肌に丸い人形のような目、カタチの良い唇。

 整った顔は「王子」そのものなのに、何故か意地の悪い顔をしてゆっくりと顔を近づける。


 なっ! 何する気よ!

 泣き虫ユキのくせに。

 だろ? 笑わせないでよ!

 何その言い方。

 無理して乱暴な言い方したって似合わないっての!


 所詮、ユキはユキだ!

 今更、何も怖くないっての!


 「へ、変な事したら……噛みついてやる!」


 キッと睨みつけると、ユキの動きが止まる。


 「変なこと? たとえば?」


 ユキはゆっくりと長いまつげを揺らして瞬きをする。


 「ふざけんな! 殴るよ!」


 「コワっ! そんなんじゃ彼氏できないだろ? あ、もしかして期待させた?」


 目の前にあるユキの顔が楽しむようにニヤリと笑う。


 こっ、こいつ! 楽しんでる! あたしをからかってるんだ!


 「するか! アホ!」


 あたしが精一杯に強がってユキの手を払うと戦闘態勢をとった。


 「面白いな〜。退屈はしそうもないな」


 ユキの表情の一つ一つがムカムカさせた。

 

 「何しにきたのよ! あんたとは絶交してるでしょ!」


 「あ! おぼえてるんだ? 笑える」


 「笑えない! さっさと用件を言って! あたしは暇じゃないんだから!」


 そうだ、暇じゃない。

 あたしにはこれからやってくる公立受験が本命なんだから。

 

 「受験だろ?」


 ユキは少し離れて腕組みをしながら当たり前のように言う。


 「なによ、わかってるなら勉強させてよ」


 あたしは右足で床を強く蹴った。

 

 「オレ、本命の私立さ。もう終わってんだよね」


 「は? それで?」


 「だから、受験おわってるわけ」


 ユキはサラリと言うとあたしの顔をじっと見つめる。


 「あ、そ。それ自慢? よかったね! おめーっ! これで見かけることもなくなるね! あー、よかったね! これで満足?」


 あたしはユキの目を真っ直ぐ睨みつける。

 ほんの一瞬だけユキの顔が泣きそうに見えて「ん?」と小さく首を傾けたけど、すぐに小さな疑問なんか吹っ飛んだ。


 「ったく、どこまでバカ女なんだよ!」


 ユキはうんざりしたような顔であたしを睨み返す。

 あたしは口をパクパクと動かすだけで、あまりの怒りで声がでなかった。


 バ、バ、バカ女ぁっ!?

 バカ女ってなによ!

 

 「言っておくけど、こっちも遊びに来たわけじゃないんだよ! おばさんに頼まれたから仕方なく来てやってるんだ! お前が猛勉強してるけど全然出来てないから教えてやってくれって言われたからな!」


 はぁ〜?

 ユキに教えてもらう?

 お母さんめ! 余計な事を!

 冗談じゃない!

 こんな二重人格に、こんな嘘つきゴメンだ!


 「じょ、冗談じゃない! なんでユキなんかに教えてもらわなきゃいけないのよ!」


 「しょうがないだろ。お前、塾も行ってないし。今さらはいれないし、このままだと危ないっておばさんが心配してるんだから」


 「そ、それは……」


 確かに今のままじゃマズイ。

 毎日、何時間も勉強してるのにちっとも頭にはいらないんだ。

 

 「とりあえず、オレも暇じゃないからな。毎日1時間だけ来てやるよ。そのかわり!」


 スッと人差し指を鼻に押し当てられる。

 

 「この事は秘密だからな! 友達にも言うなよ」


 「なっ、まだ了解してないでしょ!」


 「じゃあ、落ちるか?」


 厳しい顔であたしにきいてくるユキからは「かわいい」という形容詞はみあたらなかった。


 「うっ……」

 

 あたしは言葉につまってうつむいた。


 確かに、今のままじゃ……。

 こうなったら背に腹は代えられないか……。


 「わかった……わかりました!」


 顔をあげてまっすぐユキを見て投げやりに叫ぶと、ユキは満足そうに笑う。


 「じゃ、明日からってことで。コレ、宿題な」


 そう言いながら、持っていたカバンの中から紙の束を出すと机の上に置く。

 

 「宿題? それ全部?」


 あたしの言葉を聞きながら「あたりまえだろ」と笑い、部屋のドアを開ける。


 「ちょっ! 明日までこれ全部なんて無理っ!」


 慌ててユキを呼び止めると、廊下に出たユキが立ち止まる。


 「じゃあ、チョコちゃん。また明日くるからね」


 そう言って振り返り微笑むユキはキラキラ王子に戻っていた。

 

 「なっ!」


 「あ、おばさん。お邪魔しました」


 あたしの呼びかけは無視されて、部屋の外にいたお母さんに丁寧にあいさつするとユキは階段を降りていった。

 玄関の方からユキとお母さんの話し声を微かに聞きながら、ひとり部屋に残されたあたしは机の上に置かれた問題集の束をつかむと歯をくいしばった。


 あんにゃろ〜。

 やってやろうじゃないの!

 なにがキラキラ王子よ! 凶悪王子の間違いじゃない!

 あたしも気が楽になった!

 昔のユキはいない、時効とかじゃなくて抹消よ!

 

 あたしは勢い良く椅子に座ると宿題にとりかかった。




※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。














































 ◆†あとがきという名の懺悔†◆


 ご来場ありがとうございました!

 ちょっと更新が本当にカメです。

 諸事情があってとてもラブコメなんて書けないので止まりがちです。

 でも、がんばって書いていきますので見捨てないでやってください。

 私のお話ってつっぱしっちゃって説明不足おおいんですよね……。

 つくりこみも弱い感じがしますし。

 いや、ツッこんだらきりがなさそうなのでイタイです><

 気の合わない二人ってのも面白いのかなと思って考えたんですけど

 書くの難しいですね。

 ラブラブのほうがいいかもですね。

 もともとヘソ曲がりの女の子と本当は純粋な男の子なのに

 曲がってしまった男の子のお話なわけなんですが

 曲がりすぎちゃったかも……。


 


 さて次回♪ ☆3☆ 家庭教師は意地悪王子

 

 もうタイトル通りで。

 世界観を広げるわけでもなくてお部屋でお勉強。

 ただ勉強させるのもつまんないですよね。

 でもエロが禁止ですから……ムーッ。

 そして例のごとくカメ更新の予定です。

 おケツを叩くようにコメントいただけたら嬉しいです。

 よーし、がんばろうかな。

 



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