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☆1☆ チョコレートと王子様


 お休みの日にしか書くことができないのでノロノロです。

 つまみ食い程度で読んでいただけるだけで喜びます。

 いろいろ事情があってラブコメ修行中です。

 

 チョコレートなんて。

 バレンタインなんて大っキライ!


 そもそも、なんでバレンタインになると女の子が男の子にチョコレートをプレゼントしなきゃいけないわけ?

 おかしいでしょ?

 好きな男の子にはコレでキメる! 

 な〜んて雑誌のキャッチコピーもコマーシャルもうるさいっての!

 あたしはチョコレートもバレンタインも大っキライだ!


 バレンタインなんて……。

 嫌な思い出しかないんだから……。


 滝沢たきざわ 千代子ちよこ

 両親からいただいた大切な名前だってことは良くわかってる。

 だけど、だけどね。

 この古臭い名前のせいでどれだけあたしが苦労したか!

 

 千代子、ちよこ、チヨコ、チョコ。

 そんな変換をされて育ってきたから、物心ついたときには「チョコちゃん」って呼ばれてた。

 チョコちゃんって呼ばれるのは「ちよこ」って呼ばれるよりもずっとマシだよ。

 嫌なのは名前の呼び方じゃないんだよね。


 「チョコちゃんにはチョコレートだったね」

 

 そんな言葉をたくさんの大人に言われてチョコレートを食べてきたもんだから、小学3年の時にはぽっちゃりしちゃってダイエットしなきゃいけなくなった事とか。

 5年生の時なんかは「チョコ=バレンタインデーの申し子」というまったくおかしな変換がはじまっちゃって男の子たちに義理チョコをねだられたり。

 半分、イジメじゃない!!

 それなのに!

 その光景を見た近所のおばさん達は、ほほえましい光景をみるかのようにあたしに声をかけた。


 「チョコちゃんはバレンタインデーは大忙しね」

 

 そんな何の根拠もない事を近所のおば様方に言われ、それに乗せられた母が動いたのが悲劇のはじまりだったんだよ。


 「チョコ、あんたお隣の夕紀ゆき君にチョコレート持って遊びにいきなさい」


 小学校5年生にもなれば、あたしだって女の子だったからバレンタインデーの意味を知ってた。

 幼馴染といえども、まして泣き虫ユキが相手だとしてもバレンタインにチョコレートなんて恥ずかしくて母の言葉に猛反発したのをおぼえてる。


 だけどこの時、母には悪気なんかなくて、本当に軽い気持ちで言ってたんだろうし、まだ子供、そんな程度の事だったんだと思う。


 だからお母さんを責めるつもりはないんだ……。


 うちのお隣、島崎さんちの一人息子のユキは年々、かわいらしさに磨きがかかって、すっかり学校でも有名な女子の憧れの王子様へと成長してた。

 そんなユキでもあたしにとっては相変わらず泣き虫のお姫様だったし。

 いつだってあたしの後を追ってきていた。

 

 仲良しのあたしたちを見て、ユキのお母さんとあたしのお母さんは「お隣同士だしお互い一人っ子だから結婚してくれたらいいのに」ってよく話していたっけ。


 意識をしていたわけじゃない。

 ただ、今思えば、ユキはそういう対象じゃなかったんだと思う。


 しぶしぶ母に持たされたチョコレートをコートのポケットにいれたままあたしたち二人はいつものようにユキの部屋で遊んだ。

 携帯ゲームを手に二人で笑いながら並んで床に座って。

 ポケットの中のチョコレートの事なんかすっかり忘れていつもどおりの時間をすごしていたのに……。


 「チョコちゃん、チョコちゃん? 僕ね、お母さんにチョコちゃんとケッコンしなさいって言われたよ」


 「え?」


 思わずゲームを落としそうになりながらユキの横顔を見つめた。


 ユキは真剣な顔でゲームに釘付けになっていて、あたしの驚く気配なんかそっちのけだった。

 あたしの持っていたゲーム機からゲームオーバーのメロディが流れてきても止めることもしないで眉間に皺をよせた。


 お母さんたちの会話の中には時々でてくる性質の悪い冗談をユキ本人が真に受けているとは思わなかったからもあったけど。

 なによりも、ユキが本物の男の子みたいに見えて嫌だった。


 「ケッコンってパパとママになるってことでしょ? そうなったらいいよね?」


 携帯ゲームから視線をそらしてあたしに笑顔を向けるユキはあたしよりもずっとかわいらしくて何故だか腹が立った。


 「ばっばか! 何いってるの! あんなの冗談なんだよ。大人なんて平気で嘘つくんだから! それに、あたしユキなんかと嫌!」


 言ってからしまったと思ったけど、出た言葉は戻せない。

 ユキの顔がみるみる崩れていく。

 あたしは誤魔化すように笑う。


 「う……嘘なの? チョコちゃんはイヤなの? えっ! チョコちゃん僕の事嫌いなの!?」


 今にも泣き出しそうなユキは目に涙をためる。

 

 「嫌いって……そーいう事じゃ……だって、わかんないし……それに……」


 あたしの答えを待つようにあたしの顔を食い入るように見つめるユキ。

 男の子なのに涙をためて目を潤ませて、まるであたしが悪者みたいだった。

 悪者なんだけど……。


 「もーっ! 嫌い! 嫌いに決まってるじゃない!」


 これはあたしの悪い癖だ。

 上手く説明できないと適当なことを言う。

 それがどんなに人を傷つける言葉だとしても……。


 「嘘……嘘だっ! 嘘だよっ!!」


 いつも優しくて怒ったことなんかほとんどなかったユキが突然、大声を出したからあたしは驚いて固まった。

 涙は消えていて、いつの間にか険しい表情であたしの肩を強くつかんでいた。


 「ユ、ユキ?」


「嘘だよね? 嘘だよねっ!」


 その瞬間、いつも女の子みたいだったユキは突然いなくなっていて。

 必死にあたしの肩を揺らす腕は弱い女の子の腕なんかじゃない。

 ふわっと柔らかい笑顔なんかなくて。

 あるのはクラスにいる男の子と同じ乱暴な声と険しい顔。


 気にもしなかった現実をつきつけられて頭がひどく痛んだ。

 

 やっぱり、ユキは男の子であたしは女の子なんだ。

 やっぱり、ユキは泣き虫でも男の子であたしは強くても女の子なんだ。


 浮かぶ思いは怒りに近かった。

 本当は悲しかったのだけど。

 幼すぎたあたしには複雑な気持ちを言葉にはできなかった。

 

 「う、嘘つきはどっちよっ!」


 ユキの体を突き飛ばしながらあたしは怖いと思った。


 今までのユキは何だった?

 ここにいるのがユキ?

 

 「嘘つき! チョコちゃんの嘘つき!」


 突き飛ばされても、あたしに声を張り上げる。


 「嫌いって言ったら嫌い! もう遊ばない! もう絶交だよ!」


 我ながら恥ずかしい記憶だけど。

 あれから本当にユキとは遊ばなくなった。

 あたしがユキを許さなかったから。


 お隣さんといっても滅多に遭遇することもなかったし、仲良しの幼馴染はいつのまにか学校で時々、見かける程度、バレンタインの時期にだけ少しだけ思い出す程度の存在になっていた。


 あれから4年。

 お母さんからの情報でユキは私立のレベルの高い高校を目指しているらしいから、中学を卒業したらもっと遭遇しなくなんだろうな。


 でも、これで本当にバイバイだ。

 幼馴染にだって時効はあるでしょ?


 あの時、本当は少しだけ。

 ほんの少しだけ後悔したんだよ。


 あれからバレンタインがくると胸が痛くなるの。

 ユキにあげるはずだったチョコレートを家に帰ってから思い出して食べたの。


 スーパーで買った4個入りの丸いチョコレート。

 いつも食べてるチョコレートとは違う豪華なチョコレート。

 それなのに……おいしくなかった。


 その日からチョコレートが嫌いになったんだ。

 甘かったチョコレートなのに何か違ったの。


 口の中にとけたチョコレートは少し苦くて。

 胸が痛くて。

 何て言えばいいかわかんなかったんだよ。


 でも、時効だね。

 もう時効。

 もう一緒じゃないからさ……。


 「わ――――っ! なに乙女ってるのよ! 勉強! 勉強しなきゃ!」


 机に伏した体を起こすと頭を叩く。

 

 やっぱ、受験ってコワイわ〜。

 現実逃避が激しすぎだって。

 ってか、何年前の話だっていうのよ!


 まあ、確かに。

 ユキはイケメンに育ったよ。

 だからって逃がした魚は大きいみたいに未練がましいな!

 

 あたしには受験よ!

 バレンタインデーがなによ!

 チョコレートなんか嫌いなんだ!


 気合をいれなおして机に向かう。

 目の前には真っ白な問題集が広がっていて見た瞬間にへこんだ。


 「チョコーっ」


 下から母が呼ぶ。


 どうせ手伝えとかくだらない事なんだ。

 あたしは受験で大変だっての!


 無視してペンをとる。


 「チョコってば! あんた勉強なんかしたって出来ないんでしょ!」


 カッチーン!

 その言葉に椅子から乱暴に立ち上がる。


 「なによ! そんな言い方ひどいじゃない!」


 あたしは怒りをあらわに部屋を出ると階段をドスドスと乱暴におりる。


 「あたしがどれだけ勉強してると―――……」


 階段を降りた先にある玄関の人影を見て固まった。

 

 なんで?

 どういうこと?


 母のにこやかな顔の後ろに立つ美少年。

 白い肌に大きな目。

 サラサラの髪にすっとした鼻。

 なによりもオーラが違う。


 「チョコちゃん、ひさしぶり」


 そう言って笑った顔があまりにもキラキラしててクラクラした。


 ユキだ。

 本物の島崎しまざき 夕紀ゆきだ。


 あたしは口を開けたまま、なんとかその場に立っていることしかできなかった。




※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。

    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。



































 ◆†あとがきという名の懺悔†◆


 ご来場ありがとうございました!

 なんとか2話目? というか、全然ラブコメ違う……。

 やっぱり、あたしに面白みがないからかもしれない。

 今からでもシリアスに直したほうがいいのかな。

 でも、ラブコメがんばるって決めてたしな。

 すんごい軽い話をサーッと書く予定ではじめたから

 今更、重い話に変えるのも難しいしな〜……。

 更新はカメなのでゆっくり悩むことにします。

 


 さて次回♪ ☆2☆ お隣さんは凶悪王子

 

 やっとユキ君の登場で、どうしようかな〜と困ってます。

 乱暴という意味での凶悪ではないので、どちらかというと知能犯的な。

 でも本当は主従関係が書きたかった!! でもそれはマズイ!!

 ッてことで、我慢して王子止まりです。

 ラブコメ、ラブコメ……ブツブツブツ……。

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