☆12☆ キラキラ王子と噂の魔女
☆祝!! 更新!!☆
75日以上更新されてませんって赤字脱出です。
それだけで、ホッとしました。
教室の窓から見えるのは、いつもの景色。
日の差す中庭。
薄暗い向かいの校舎。
騒がしい教室。
廊下を意味もなく走る生徒の足音や叫び声。
いつもと何も変わらない昼休み。
違うのは、隣にいるはずの麻衣が、今は、遠い向かいの校舎にいること。
あたしは、好奇心で目を輝かせるクラスメイトたちに囲まれていること。
よくはわからないけど、麻衣のそばにはユキがいること。
それだけ。
それだけなのに、足のつま先から冷たくなるのを感じた。
「麻衣、うらやましすぎ〜」
背後から聞こえる、ため息まじりのうっとりした声。
「ヤバイって! 王子ファンが絶対に怒るって!」
「わかる! 王子ファンって熱すぎだしね」
「ってか、今まで隠してきたのに、どうしちゃったんだろ」
クラスメイトの好奇心は、あたしから麻衣にうつっていく。
「隠してきた……?」
あたしは、遠くに見える、麻衣とユキを見つめながら、呟く。
「やだな。チョコって本気で知らないわけ?」
「あーん。私も王子にみつめられたーい」
「あー、ずるい! 私だって」
「でも……私、ただの噂だと思ってたよ。ちょっとショックかも」
「私も〜。だけど、こんな現場みちゃったら、信じるしかないっしょ」
好き勝手に話しだすクラスメイトに、苛立ちを感じながら「ねえ!」と強い口調でさえぎった。
「全然わかんないけど?」
あたしの声の強さに、クラスメイトたちが静まり返る。
ヒソヒソと小さな囁きが耳に煩わしく聞こえてくる。
そして、決められたように、順番に話し出した。
「まあ、アレだよ、チョコ。いくら親友でも言えないこともあるって」
「そー、そー。チョコは恋バナ、嫌いだし」
「麻衣と王子の噂って、結構、広まってたから、知らない人、少ないんじゃないかな」
「噂?」
窓ガラスから、はね返ってくる、あたしの声は、驚くくらい低くかった。
「んー、噂っていうのは、最初はね、王子が誰かに告白するっていう噂だったの」
「あ! わかる。バレンタインを狙ってるんじゃないかってヤツでしょ? そしたら、麻衣と一緒にいるのが目撃されたんだよね。これがまた、憎いくらいにお似合いなわけだ」
「あー、それからかな? 麻衣がその、告白の相手なんだって噂になったのって。王子ファンはショックを受けたよね」
「まあ、私たちは、王子ファンってワケじゃないから、ちょっとショックだったくらいかな〜」
「相手が、麻衣じゃかなわないしね」
クラスメイトの言葉が、ひとつの事を浮き上がらせる。
ユキが誰かに告白しようとしてた。
その相手は麻衣で、麻衣とユキは公認のカップルって事なんだ。
王子と姫が出会って、恋をするなんて、本当できすぎてる。
だけど、その事を、あたしは麻衣からも、ユキからも聞いてなかった。
なによ、そういうことね。
隠すことないのに。
あたしは鼻で笑う。
「くだらない」
胸がキリリと痛む。
「チョコ〜。そんなに怒らないでよ。きっとチョコになら、教えてくれるって」
窓の向こうに見える麻衣とユキを見つめながら、あたしは、クラスメイトたちの勝手な言葉に眉をひそめた。
怒ってる?
怒ってなんかいないよ。
麻衣は教えてくれる?
別に聞きたいことなんかない。
でも、なんだろう。
あたし、ちょっと変かも。
なんか、苦しい。
どうして?
どうして、こんなに息苦しいの?
どうして、こんなに……面白くないんだろう。
指を曲げると、窓ガラスにツッと指の跡がつく。
少しだけ曇った、その筋を一瞬だけ見て、また視線を二人にうつした。
「まあ、いいじゃない。チョコにはアラシっていう王子様がいるんだから」
「そうだよ〜。アラシだって結構、人気あるんだよ」
「恋に興味ありませーんって感じだったチョコに先をこされるなんて、な〜んか悔しい」
「でも、あれかな? チョコ、実は、王子の隠れファンだったとか?」
最後の言葉に、あたしは目を見開く。
「なっ!」
思わず、振り返ったあたしに、クラスメイトたちは驚いたあと、ニヤニヤしはじめる。
その時、はじめて気がついた。
あたしの背後に、クラスの女子の半分がいることに。
なんで、こんなに……。
あたしが呆然とすると、すかさず声が飛び交う。
「やっぱり。チョコは王子ファンか」
「ちがう! そんなんじゃ!」
ムキになって言うと、余計に冷やかしは強くなる。
「ほー。チョコが王子狙いとは、盲点だったな〜」
「チョコから、王子の話題って、でたことなかったもんね」
「そ、こ、が! アヤシサ倍増?」
お互いがお互いで指をさしあいながら、クラスメイトたちは興奮していく。
「でもさ〜、チョコって確か、王子の家のお隣さんじゃなかった?」
まずい!
どうして、今、その話題がでるんだろう。
あたしは、たくさんのクラスメイトの前で唇を噛んだ。
「うそー! 知らなかった!」
あたしに向かって一斉に強い視線が向けられる。
別に秘密でもなんでもない。
あの事件が起きるまでは、本当に仲が良かったんだ。
憶えてる子もいるはず。
だけど、タイミングが悪すぎる。
このままだと、流れがおかしな方へいきそうだった。
あたしは、大きく腕を振り上げると、目の前の机をバチンと叩く。
「もー! やめてよ。あたしは王子ファンじゃないし、狙ってもいない。麻衣が誰とつきあおうが、あたしには関係ないし!」
大きな音と、大きな声で、クラスメイトは静まり返る。
なんともいえない、居心地の悪さ。
どうしよう……。
こんなことになるなんて……。
「ごめん。あたし、ちょっと……」
あたしは、ごまかすように笑うと、クラスメイトの壁をふらふらと通り抜ける。
「チョコ! ごめん」
肩を軽くつかまれて、バツの悪そうな顔のクラスメイトと目が合う。
「やだな〜。なんかちょっとムキになりすぎたみたい。あたしこそゴメンね」
謝りながらも、早く抜け出したい。
「私たち、ちょっと言い過ぎた」
暗い顔をするクラスメイトに、あたしは笑顔でこたえる。
「大丈夫だって。本当、みんなの言うとおりだよね。麻衣ってば、あたしになーんにも教えてくれないんだもん。ちょっとびっくりしちゃった。しかも相手は王子だもんね。お隣さんとはいえ、まったく接点ないからさ〜。全然、気がつかなかった。それもこれもぜーんぶ、アラシのせいだよね。アイツがあたしの周りをウロチョロするからさ、麻衣と女の子トークできないんだよね。本当、イヤになるよ。あたし、これからちょっとアラシのとこに行ってガツンと言ってやるよ。邪魔すんなーってね」
そう言うと、あたしは教室から出た。
「な〜んだ、びっくりしたね〜」
教室の中から、小さく、安堵の声が聞こえると、あたしも少しホッとした。
よかった。
息をつくと、あたしはギュッと手を握り締める。
―――ううん。
ちっとも、よくない。
この息苦しさは何?
すごく気持ち悪い。
あたし、イヤなの。
このままじゃいけないって思うのに。
何がいけないのか、何がしたいのか、全然わかんないの。
麻衣が好き。
麻衣が嫌い。
こんな風に、麻衣を想うのは初めて。
ずっと、ずっと、麻衣はあたしの味方だったのに。
なんでだろう。
麻衣は敵だって、今は思うの。
あたしは、早足で階段を駆け下りると、中庭へ出る通用口で立ち止まる。
ユキ……。
あんたなんて、大嫌いだよ。
あたしは、重たい通用口のドアを開けた。
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※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
(あとがきパスな方用に見えないようにしています。
◆†あとがきという名の懺悔†◆
本日はありがとうございます。
誰も待ってはくれてないだろうとは思いますが、
一応、完結は絶対させますので、そこんとこはお約束します!
今回、2ヶ月以上の赤字を見て、焦り、スピード仕上げしたチョコボン。
8月になったら、少しは書けると思っていた小説が
やっぱり、いろんな行事やら、趣味やらで進みませんね〜。
書き始めると、あ!そうだった〜と
ちょっと、嬉しくなったり、苦しくなったりして書けるのですが
書き出すまでが遅いので。
これだけの文字を生み出すのに、今回は4日くらいかかってます。
実質、書いてる時間は2時間くらいなのに、書き出すまでに4日って……。
ブログにも書いたりしているんですが
最近、オンラインゲームをまたはじめちゃったんですよ。
本当、バカですよね〜。
今回も、絵を貼りました♪
ユキくんとチョコちゃんショット。
絵をもらえると、すごくやる気が増します。
さて次回♪ ☆13☆ キライキライのお姫様
次回っていつなんだろう……という不安もありますが。
がんばって書きます。
もう2ヶ月赤字は見たくないですからね〜。
次回はチョコちゃんと王子のからみでいこうと思います。
もう、いいかげん、気持ちに気づいてほしいものです。
王道、幼馴染ラブでいってるので、ベタですけどね。
がんばりまーす!