拝啓 本当の家族へ
年の離れた兄がいたと、両親から聞いたことはあった。
だけど会ったことなんてないから、まるで実感がもてなかったのだ。
でもそれは、先月までのこと。
「今日のお土産は何かなっと。」
譲り受けた勉強机の上で、一風変わった封筒を開ける。
中にはすっかり見慣れた文字の手紙と、綺麗なお花の栞が1つ。
これは、異世界にいる兄からのお手紙だ。
たぶん...だけど。
「これ、異世界のお花かなぁ。」
突然届いた手紙を見たときは驚いた。
異世界にいるという兄からの手紙、最初はバカらしいと思いながら折り畳んで封に戻した。
途端にその封筒が消えてしまったのだから、目を丸くしたものだ。
どうやら魔法の封筒だったらしく、兄の方でもまさかの出来事だったという。
戻ってきた手紙が折り畳まれているのを見て、封筒が異世界まで確かに届いた証ではないかと推測できたんだとか。
おかげで今では、毎日のように手紙が届いている。
「占いの資料が欲しいだなんて、また妙なこと始めようとしてるな。」
畑の耕しかたとか、魚釣りのコツだとか、手紙にはこちらの知識を教えて欲しいという内容で毎回情報をねだられている。
目の前で消えたりする明らかに普通じゃない手紙だったので、魔法のある異世界からのものではないかと信じざるを得ない状況になった私はご丁寧にもそのお願いに答えてあげている日々だ。
日記のような事が書かれた内容は、物語を読んでいるようで楽しいし。
お礼として何らかのお土産も届くようになったので、悪くない取引になっている。
さすがにまだ親には秘密にしている現状だ。
せっかく兄のことを乗り越えたのに、こんなとんでもない話を聞かせる勇気なんてものはない。
「いつかは、話す時が来るのかなぁ。」
そんなことを考えていた数日後、兄の封筒に変な文字の紙切れが一枚紛れこんでくることになる。
それがどうも、私の手紙に興味を持ったお方のらしく。
必死に書かれたこちらの文字を見ながらため息をついた。
「お返事、書いてあげますか。」
手紙でのやりとりなんて。
それこそ恋物語でもあるまいし。
昔は和歌を贈りあって気持ちを伝えあったんですっけね?
手紙を通して長距離恋愛にも発展する予定でした。