第七話
7000pv突破!
ありがとうございます
「ごめんごめん、ギルドに行くところだったな。忘れてた」
そう言って申し訳なさそうに謝るエイブ。付き合いは短いが、悪いやつではないのは分かるし悪意があってやったわけではなさそうなので全然気にはしない。それに俺も町を紹介してもらって、楽しめたし。
町の全体も大体は理解できたし、ありがたい限りだ。どんどんと借りだけが増えていくが、きちんと恩返しはしなければ。
そういえば、エイブは俺が生まれたダンジョンを探索しているはずだ。そして俺はあそこにいるアンデットどもには攻撃されない。....これって恩返しのチャンスなんじゃ?
そんなことを考えているうちに、ギルドに付いたようだ。
エイブが俺のほうに振り向く。
「ここが傭兵ギルドだ。ここで依頼を出したり、受けたりできる」
その建物は他の建物とは一線を画すほど大きく、ちょっとした体育館ぐらいはありそうだ。石のレンガと瓦でできていて、万一火事が起こっても燃えにくい素材を使っている。中はいったいどうなっているのだろうか。
慣れた様子で中に入っていくエイブ。俺もそれに続く。
中は思ったよりもせまく、(それでも十分に広いが)右側に3つほど掲示板が掛けてあった。その掲示板には、『レストランのアルバイト募集!』や『ゴブリン退治、詳細は受付まで』、『C階級、狩り専門』などといった自己アピールと思われる張り紙まで張り出されていた。
左側には受付があった。受付は全部で5つあり、現在は2つしか空いていない。現在は人が少ないからだろう。そして受付には、普通にパートのおばちゃん、といった風な人たちがいた。こういった異世界のギルドの受付譲と言えば猫耳の美少女かガチムチの猫耳つけたおっさんと相場が決まっているだろうに。
そのまま奥に行くと、道が2つに分かれている。エイブについていって見てみると、右には休憩所のような場所があり、左には上へと続く階段が。
「この上に図書室があるんだ。魔物図鑑とかが置いてあるから、町の外に出るときは出かける場所に生息している魔物と、そいつの対処法を見てから出かけるんだぞ」
心底心配しているように出かけるときに気をつけることを教えてくれるエイブ。教えてくれるのは嬉しいが、子供に言い聞かせるような口調に妙な敗北感を覚える....。くぅ、前の姿ならこんなコトもなかっただろうに。
階段を上って、図書室に入る。
そこは図書室というよりは、図書館と言ったほうがしっくりくるような巨大な部屋だった。自分の背が低くなってしまったということもあるだろうが、それを差し引いても天井が高い。これでシャンデリアでもぶら下げればどこかの貴族の大豪邸にでも化けそうだ。
窓は少なく、日が入らないようにしている。本の劣化を避けるためだろう。しかし文字を読むのに苦労するほど暗くはない。なぜかは分からないが、光源もないのに暗くはないのだ。すごいぞ魔法。魔法と決まったわけではないが。
こっちが魔物図鑑コーナーだ、と言いながらすたすたと歩いていくエイブについていくと、本棚に『魔物関連』と質素な文字で書かれた一角に着いた。
「ほら、この図鑑がここらへんに出てくる魔物の一覧だ」
そう言って俺では届きそうにない高いところから本を抜き取って渡してくれる。その本の表紙にはデフォルメされたスケルトンの絵と、その上に『ブリジット地区生息魔物』と言う文字が。
どうやらここはブリジット地区と言うらしい。一応覚えておこう。
「借りることもできるけど、どうする?」
「いえ、大丈夫です」
借りてなくしてしまったりしたら大変だ。責任が取れない。お金も持ってないし、この世界での本の価値が分からない。もしかしたらすごく高価な物だという可能性も....。
そして借金を返せないまま奴隷堕ち......。
この世界に奴隷制度がないことを祈ろう。
「じゃ、こっちに読書コーナーがあるから、行くか」
歩き出したエイブについていく。
「ここが読書コーナーだ。靴は脱いで入れよ」
他の部分の床が木製なのに対して、読書コーナーは下にマットを敷いていた。この図書室の一角にマットを敷いただけのような場所だ。
すこしは椅子もあるが、今は全部使われていて空いていない。
エイブが靴を脱いで読書コーナーの地面に座った。
俺も靴を脱いで、エイブの隣に座る。
エイブが持っていた本を読み始めたので、俺も本を読むことにする。エイブも何か調べごとがあるのだろうか。
とりあえず、モンスター.....いや、魔物か。魔物について調べるならまずは『ゾンビ』のことだろう。
そう思い、本の一番前にある索引の部分からゾンビに関する項目を探す。
索引は五十音順に並んでいたので、ゾンビの項目はすぐに見つかった。書いてあるページを開いて、ゾンビについて書いてある部分を読んでみる。
そこにはこういったことが書かれていた。
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ゾンビ
腐った死体などに魔力が定着し、魔物化したもの。
動く為のエネルギーは、呼吸などから得られる魔力を使用しており、血管には血液の代わりに魔力(液体)が流れている。
甦る際に最低限ゾンビとして生きていく為の器官を魔力によって再生する。
呼吸から生きるエネルギーを得ているので、口を塞いで3、4分ほどすれば動かなくなる。が、その間に攻撃される危険性があるので、あまり安全な討伐方法とは言えない。
基本的な討伐方法は、胸の辺りにある赤い結晶を壊すこと。結晶の位置は胸の辺りにあるが、細かい位置は個体差がある。
他の生物を襲う性質がある。
知能はほとんど無い。意思も同様である。
魔力が流れ出すぎても動かなくなる。
ブリジット地区における確認されている出現場所
クラフティ火山の天空迷宮(通称、腐敗迷宮)
死の平原
その他、暗い森や洞窟など、死体と魔力がある場所にはどこにでもいる。
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ふむふむ、なるほど。
エイブに切られたときにでた赤い液体は魔力だったと言うわけか。そして魔力が流れ出すぎると俺は死ぬ、と。人間とあまり変わらないな。
とりあえず、あれはやばかったということだな。
それに肺を切られたりしても死んでしまうだろう。魔力は呼吸から得るそうだし。それと胸の辺りにある結晶をつぶされても死ぬ。まあ、これも人間と変わらないだろう。心臓と同じようなものと考えればいいし。
さて、と。
次はなにを調べようか....。
すこし楽しくなってきた俺は、時間を忘れて知識を頭に詰め込んでいった。