第四話
遅れてしまってすいません。
ゲームばっかして怠けてました。
ちょっと久しぶりに書いたんで変になってたり駆け足だったりするかも。
広い部屋の中に机を叩き割る音が響く。
「そんなことがあってたまるかァ!」
世界樹製の机を叩き割って大声を上げる男、アドルフ・ガーランド。世界で一番長寿な種族として有名なハイエルフ族の特徴である、金髪碧眼をしている。髪は、くすんだような色合いの金髪を後ろに撫で付けている。顔に刻まれた皺は深く、どれだけの年数を生きてきたのかは本人でさえも覚えていない。
「それは本当なのか......セシリー姫が迷宮で死んだというのは!」
「誠に残念ではありますが......」
セシリー姫が迷宮探索中に死亡した。
アドルフにそう告げた人間族の青年は、怒り狂うアドルフに殺されてしまうのではないのかと肝を冷やした。なにしろハイエルフは数が少なく、長寿であるという事以外は種族の情報が少ない。野蛮で部外者を嫌い、少しでも機嫌を損ねれば即打ち首にされると言う噂もあるほどだ。
青年が生きた心地がしないのも当然だろう。
青年はできるだけ殺したのは迷宮の魔物で、勇者には非がないという所を強調して伝えたが、反対を押し切って姫を連れ出したのは他でもない勇者の為、アドルフの中では完全に勇者が殺したと同義になっている。
「それなのに姫を連れ出した勇者が来ないどころかこんな若造しか遣さないとは!」
そう言って青年を睨みつけるアドルフ。放出される圧倒的魔力に身動きさえもできなくなる。これは本当に殺されるかもしれないと冷や汗を垂らす青年を一瞥すると、アドルフは
「帰れ、人間の顔など見たくもない!」
と言って青年を帰す。
恐怖から開放された青年は、転がり出るように部屋を後にする。その様を無様だ、と軽蔑の視線で見送るアドルフ。
青年が出ていくと、誰もいなかった空間が揺らいだ直後、そこに1人の女性が現れた。アドルフの秘書だ。秘書はぴちっとしたスーツを着込んだ女性で、神秘的なほどに綺麗な顔立ちをしている。もちろん、ハイエルフだ。
その秘書には目も合わせずに、怒りを含んだ震える声で命令する。
「民を霊堂に集めろ。王国へ攻め入る」
そう、つぶやくように言ったアドルフの目には、確かな復讐の炎が揺らいでいた。
□――――――――□
「――姫が勇者に殺されたッ!」
霊堂に集まった人数はハイエルフの国(といっても小規模で、人間で言う大きめな街程度の大きさしかない)の住民全員、総勢6000人ほど。普通に利用する分には何の為にこんなに大きいのかと疑問になるほどだだっ広い霊堂が今は人で埋まっている。
その大観衆の前で国王、アドルフ・ガーランドが姫が死んだことを告白したときの混乱は、筆舌に尽くしがたい。本来なら国王が霊堂でスピーチをする時は一言も喋ってはいけないという厳格なルールがあるため、誰も口を開かないのだが、今回だけは事情が違った。
国民達のパニックが収まるまで約10分間。
徐々に声が静まっていき、やがて完全に声が止むと、アドルフが再び口を開いた。
「我々はこれより、姫を殺した勇者および王国に制裁を下す!」
人懐っこく、誰にでも優しく接するセシリーは、国民全員から好かれていた。小さいころから民と触れ合って育ってきた為、国民からしたら娘のような存在だ。そんなセシリーが殺されたとなると皆、黙っているはずもない。
国民達の、怒りのボルテージは一気に頂点に達した。
「姫様を殺したサルどもに制裁を!」
「下等種族のサルの癖に!」
「よくも姫様を!」
国民にとって直接姫を殺したのは誰だろうと関係ない。勇者が魔王を倒す為と言って姫を連れ出さなければこうなることもなかったのだ。
罪は勇者にある。それが皆の共通認識となる。
「そもそも、勇者さえ来なければ姫様が死ぬことはなかった!」
「なにがセシリーは必ず守って見せます、だ!」
「ふざけるな!」
「殺せ!殺せ!」
ばらばらだった叫びが、だんだんと一つにまとまってくる。
国民にとって自らの命よりも大切な姫が殺されたと言うことは、それほどに国民たちを怒らせ、狂わせた。
「殺せ!殺せ!」
「殺せ!殺せ!」
国民達の怒りの叫びは、留まることを知らなかった。
怒り狂ったハイエルフたちの声は、日が落ちるまで続いた。
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「へっくちっ!」
ようやくたどり着いた迷宮の出口から外に出ようとしたところで、急にくしゃみが出た。生前からは考えられないほどに可愛らしいくしゃみに、違う体なんだなぁとすこししんみりする。
というか、こんなんで大丈夫なんだろうか。外は治安が悪いかもしれないのに。この体は声変わりもまだらしく、声が高い。最悪の場合、女に間違えられて襲われたりとか.....。
考えただけで背中がゾッとする。
できれば顔は可愛らしくないことを祈ろう。
気を取り直して、外にでようとする。....が
「あ」
唐突に「ゾンビなのに日光大丈夫なのだろうか?」という疑問が浮かんでくる。体がゾンビっぽくなくて失念していたが、この世界ではゾンビとかスケルトンとかのアンデット系って日光大丈夫なのだろうか。
もし大丈夫なら迷宮内のアンデットが外に出て大変なんじゃなかろうか。
ためしに、左腕を外にそうっと出してみる。
――じゅうっ
焼けた。
「うおっ!」
一瞬日光に当たっただけで煙が出た。不用意に外に出たら痛覚がないことも考えると死んでいたのではないだろうか。
なんか知らんがくしゃみに感謝しないと。
□――――――――□
早く外に行きたいのを我慢しながら、なにか日光を遮るものを探すこと約30分。スケルトンナイトが羽織っていたローブを失敬して出口に戻ってきた。
他にもローブはいくつかあったが、どれもぼろぼろになっていて穴が開いていた為、意味がないと判断。穴が開いていないものを探していた為にすこし時間がかかってしまった。
ローブは汚れていてぶかぶかだが、穴は空いていないし大丈夫だろう。いやな顔はされるかもしれないが。
まず臙脂色のローブを腕にぐるぐると巻く。そして巻いた部分を日光に少しの間晒す。その後手を引っ込めてローブを外す。
腕を見てみると、焼けたりとか焦げたりとかはしていない。
「よし、おっけーだな」
ローブを通しても日の下に出れない可能性を考えてこんな確認をしたが、杞憂だったようだ。ローブを羽織って日光が差さないように深くフードをかぶる。
これで大丈夫だろう。
俺は、いい加減飽き飽きしてきた迷宮に別れを告げて、外へと一歩踏み出す。しゅうとかじゅうとか何かが焼ける音は聞こえない。ローブはちゃんと日光を遮断してくれているようだ。
影の長さから見て、今の太陽の位置は真上。正午ぐらいだろうか。日光が少しでも当たったら困る俺としてはありがたい。
振り返って迷宮を見てみると、雲よりも上のほうまで続いている。それ以上首を上に向けると日光が差し込みそうなので下を向いて、次は迷宮と反対側を見てみる。
迷宮の出口(入り口?)からずっと石でできた道が続いている。道にはところどころ苔が生えていて、石が割れたり欠けたりしているところもある。あまり使われている道ではないようだ。
それもそうか、この道は迷宮で途切れている。すなわち、この迷宮に来る為だけに作られた道と言うことだ。その迷宮の中であったのがエイブ1人なのだから、ここにはあまり人が来ていないのが分かる。そうでなくともこの世界では道はこんなものなのかもしれないが。
その道をたどっていったところに、森があった。森は結構深そうな感じだったが、中まで道が続いているようだったので、森の中で迷うことはないだろう。
人工物であるこの道をたどっていけば、町に着くかもしれない。それに、わざわざ人工物から離れて危険極まりない自然の世界に飛び込む理由もないだろう。
俺は、フードを深くかぶりなおすと道なりに歩き始めた。
当初のプロットではハイエルフの話ではなくてエイブ君の話を書く予定だったんですが、今後のことを考えるとこうした方がいいかなと思いましてこうなりました。
3人称で書くのは初めてなんですが、変になっていないでしょうか?
不安で胸がいっぱいです。