1. 混乱
さすがにプロローグだけだと変なので、続きを書きました。
それでもまだ問題解決には至っておりません。
もっと物語の展開を速くするつもりが、どこを間違ったのか・・・。
気持ち悪い・・・。
リバースしそうな胃と闘いながら、グワングワンと揺れる世界を落ちていく。最初は目を開けていたのだが、それがさらに気分を悪くする原因だと悟ったので今は目を閉じていた。
絶叫コースターが苦手な私は、偶に友人に付き合わされて乗らされる。その時は目を閉じ足を踏ん張り両手で安全バーをホールドしてひたすら終わるのを祈っているのだが、今回の【ゲート】と呼ばれるこれは一向に終わる気配がなかった。
バサバサと身体全体に感じる風にもみくちゃにされながら、身体が中身から変えられてるような錯覚にすら陥る。
24時までに帰って来いって、またこれを体験するんだよね・・・?!
気を失えたらどれだけ幸せだろうと考えつつ、ひたすら耐える。
お母さんじゃ話が通じないから、戻ったらお父さんにちゃんと話を聞かないと。まだ寝て夢見てるんじゃなかったら、これは相当な熱に浮かされてるのかもしれないし。
どこで夏風邪を拾ったのかと思考を彷徨わせつつ現実逃避をし始めた頃、ようやく私の初【ゲート】体験は終わりを迎えた。
閉じた瞼からでもハッキリと分かる光の渦。それがマーブル魔界色の世界から急に放たれ、私は軽い衝撃と共に足の裏が地面に着いたのを感じた。
そっと目を開けると、そこは石造りの小さな部屋だった。
洋画のファンタジー映画に出てきそうなお城の一室みたいな感じで、正面に木のドアがある。だがその部屋には窓が一つもなかった。
恐る恐る周りを見渡すが、何も置かれていない殺風景な部屋。そして私の足元には、RPGによく出てくるような魔法陣が直径2mぐらいの大きさで描かれており、今まで発動していたのか放っていた光が徐々に消えつつあった。
完全に光が消え、私の周りに渦を蒔いていた風も途切れる。途端に部屋の中が真っ暗になった。どうやらお母さんの言う処の【ガルディア】に無事着いたらしい。
他に見る物もする事もないので、仕方なく手探りでドアを見つけ、引き開けた。
「お待ちしておりました、ミズキ様」
光に一瞬眩んで反射的に目を閉じたが、男性の声がして驚いて再び目を開ける。そこは同じく石造りの廊下というか通路で、左宙に光の球を浮かばせた男性が立っていた。背の高い男性で、簡素だが質の良さそうな上下を身に着けていた。もちろん美系である。
「初にお目にかかります。私は、エセルバード公国 王宮付第一近衛に所属いたしますレヴァン・ダフカ。ナディル王子よりミズキ様付を賜りました。以後よろしくお願いいたします」
「えっと・・・、貴方がお母さんが言ってたレヴァンさんなんだよね?」
「左様でございます」
目を瞬いている私にゆっくりと優雅な一礼をすると、レヴァンは爽やかな笑みを私に向けた。
年上の美系に敬語を使われるというのは、こんなにも居た堪れない気分になるんだ。困ったな。
「あの、その敬語止めるわけには」
「ミズキ様のご命令でも、こればかりはご容赦ください。とても恐れ多い事でございます」
困った顔も美系だ。お母さんも美人だしお父さんも整った顔立ちしてるから美系には慣れてはいるけど、敬語には慣れてない。だが無理だというのなら仕方がない、この課題は今後に持ち込むしかないか。
「ところで、ナディル王子って、誰?」
「ナディル・ワイス・クジョー、我がエセルバード公国第3王子であらせられます御方でございます」
「クジョー?・・・って九條のことかな?」
嫌な予感が走るが、念のために聞き返す。
「私どもガルディアの民にとっては発音し難い氏ではございますが、おそらくそうかと。ナディル王子は現在 ナツキ様と名乗っておいでです」
「・・・は??」
しばし考える。
「今、ナディル王子がナツキって名乗ってるって言ったよね?」
「はい」
「って事は、・・・ナディル王子は九條菜月 っていう事?」
「左様でございます」
「もう一度確認するけど、ナディルさんは九條菜月で、王子なのね?」
「はい」
「・・・なんでお母さんが王子なのっ??!!!!」
お母さんの性別は(当たり前だが)女性だ。
一緒にスーパー銭湯とか行ったことあるから確認済みだし、私の母子手帳にだって母の所には【九條菜月】って書いてある。育ての母だと聞いた事もないし、目鼻立ちはそっくりだと近所で評判なので、私が養子だとかお母さんが後妻だという情報も違う気がする。
そして一般的に王子というのは男性の王族?に付ける敬称で、女性なら王女のはず。
混乱した頭を落ち着かせるべく知っている情報を思い浮かべていると、レヴァンが苦笑いを浮かべた。
「戸惑われるのも勿論かとは思いますが、まずは陛下にお会いになってください。陛下より詳しいお話が聞けるかと存じます。ご案内しますので、どうぞ」
「・・・お母さんが王子、お母さんが、男・・・」
まだ現実に戻れないでいる私を、レヴァンは慣れたように支え、私は謁見の間に連れて行かれたのだった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
次回はさらなる新事実が発覚!
はたして母 菜月は本当にナディル王子なのか?!
現実と異世界の違いに瑞希の混乱は収まるのか?!
拙い文章ですが、どうぞよろしくお願いします。