教会へ
前回まで
記憶喪失の鮫嶋です
クニオとシャルルの仲が良すぎて居心地が悪いです。
二人のデートみたい。
私は蚊帳の外で話に入れず、人形だった。
「では、こちらへ」
シスターが道を示す。
私達は教会に来ていた。
「まずは教会で適正を見ましょう、普通は子供の頃、遅くとも成人までには済ませるのですが、異国出身ですから仕方ないでしょう」
と、シャルルに言われて来たのが教会というわけだ。
「クニオもそうだったらしいですしね、話は付けてありますので」
との事。
私まだ成人してないしセーフでしょ、という思いもあったが、成人の基準が違うのだろう。
断る理由もないので、従う。
ところで、
「これってタダなの?」
「タダなわけないじゃないですか、教会の仕事ですし」
「じゃあいいわ」
「いいわけないじゃないですか」
「だって私お金持ってないもの」
「クニオに借金という形ですよ、聞いてないんですか?」
聞いてない。
クニオを睨むと、申し訳無さそうに視線を逸らし頬を掻いていた。
「少しずつ返してくれたらいいよ」
「そういう問題じゃないんですよ!ホーガンに聞かれたらと思うと……」
「ああ、それは怖いね」
「私も一緒に怒られるかもしれないんですからね、しっかりして下さいよ」
「一緒に怒られてくれないの?」
「嫌ですよ!そもそも服のお値段とか覚えてるんですか?」
「まあ一応、でもあれは僕のおごりでもいいかなって」
「クニオもそんなにお金持ってないじゃないですか」
「そうだった」
「そうだったじゃないですよ」
また何か始まった、長くなりそうなので二人を残して私だけ教会に入る。
そんなやり取りがあってからの、シスターだ。
この世界でも教会には修道女なんだなあ、などとぼんやりと思う。
通された部屋には窓がなかった。
仕切りのない懺悔室のようなものだろうか、そこまで狭くはないのだけれどそんな雰囲気だ。
部屋の中心に机、その上に水晶、向かいに神父、という布陣。
何故だかカツ丼が食べたくなった。
「では、ソラア様のお導きのあらんことを……」
わけのわからない事を言いつつシスターが退出する。
えっと、神父と二人きりなの?
「お掛けなさい」
考える間もなく、神父が言う。
「心配なさらないで下さい、天空神ソラア様が守って下さいます」
あ、一瞬神父がソラアって名前なのかと思ったら、ソラアって神様なのか。さしずめ、ソラア教、といった感じだろう。
促され、対面に着席する。
「形式的な説明等あるのですが、シャルルから聞いていますか」
聞いてない、て言うか、本当あいつら私に何も説明しないよな、記憶は無いけど馬鹿じゃないんだ。
事前情報くらい欲しいものである。
「いえ、ですが、後で説明があるでしょう、無かったらさせます」
今日会ったばかりだし、まだ時間はあるだろう。
「そうですか、では一点だけ、ここで分かるのは魔法の属性適正と、現在出力出来る魔力総量の計測です。ちなみに適正武器等は国営訓練所や冒険者ギルドでの担当ですのでそちらへお願いします」
なるほど管轄が違うのか。
「あの私、魔法とか魔力とかよく分からないんですが、大丈夫ですか」
一応確認をとる。
「一度も使った事がない、と」
「ええ、魔力ってのもよく分からないし」
「よろしい、手をこちらに」
言われるまま、左手を差し出した。もうどうにでもなれ。
神父は両手で私の左手を掴むと、念仏のようなものを唱え出した。
手が淡く光った……ような気がして、すぐに終った。
「どうです」
どう、って言われてもな。
「キスでもされるのかと思いました」
おどけてみるが
「それは失礼を」
と頭を下げられ、恐縮してしまう、ごめんなさい。
この人は良い人だ。
神父なんだし疑っていた訳ではないのだけれど。
……というかこの神父さん。
「光が……」
「なんです」
なんなんだこれは。
「仰ってください」
「光っています、神父様が……」
一体、何が起こっているのだろうか、神父に後光が差したように、光が見える。
「ふう……」
と、神父がため息を付くと、段々と光が収まっていく。
神父が、何かしたのだろうか、したのだろう。
私は気持ちを落ち着かせるので精一杯で、思考が回らない。
「今のが、魔力です」
魔力です(ドヤッとかキリッとかを付けてはいけない




