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寝覚めと朝食

前回まで


 鮫嶋です。

前回の前回まで、って、まだ2話目なのに前回までっておかしいと思う。

前回前回ってまたややこしい。

とにかく私は、記憶喪失の自覚をした。

 目を開いた。

 以前とは違う、人の文化の中での眠りからの覚醒。

 つまり、ベッドで目覚めた。


 最初に感じたのは解放感だ。

 しかし見えるのは天井のみ、いささか味気ないものだった。

 草原での目覚めはもっと感動的だったように思う。

 もちろん解放感は比べるべくもない。


 結論としては、寝覚めは悪くないが、良くもない。

 身の安全が保証されているという点を加味すれば妥当なのかもしれない。


 身を起こすと、たっぷりと眠ったせいか体が軽い。

 日も昇っているので、部屋を出る事にした。



 「あ、おはよう」

 階段を下りる途中で、目敏く鰐渕が私を見つける。

 この宿屋は二階が寝室、一階は食堂の様になっている。

 そこそこに賑わっているが、今は昼過ぎの放課後ティータイム、といった風だ。

 思っていたより長く眠りこけていたらしい。


 頭をわしゃわしゃと掻きながら鰐渕のいるテーブルに着く。

 髪がボサボサだ、シャワー浴びたいな。

 ふと、テーブルにもうひとり居る事に気付く。

「もうお身体はよろしいんですか?」

 誰だこいつ?

 あぁ、鰐渕の仲間かな、ここは仲良くしとこう。

「ええ、お陰様で」

 どうだろう、上手く笑顔が作れただろうか。

「ほんと、心配したんだよ、お前なかなか起きてこないからさ、もう少しでシャルルに見に行ってもらおうかと思ってたんだ」

 シャルルとはこの女の事だろう。

 お前呼ばわりされた事はこの際だから気にしないでおく。

 ワンピース、と言うには可愛らしさが足りない、膝上くらいまでの長さのトップスは、肩から手までが広がっており着物みたいで、脇下から寸胴に真っ直ぐに垂れ、申し訳程度のスリットからはしっかりとボトムスが覗いている。

 小麦色の単色カラーで、お世辞にもおしゃれとは言い難かった。

 いい歳の女だろうに、肌の露出をする気がないらしい。

 顔は可愛いのに勿体無い気がした。

 髪色は茶っぽい青、といった感じ、ファンタジー世界だしこんなのも有りなんだろう、昨日のうちに覚悟していて、想定内だ。

 実際周りには赤とか紫とか緑髪までいるし別段特殊ではないのだろう。


「ああ、僕から紹介するよ、この子はキョウコ、同郷なんだ。」

 おい呼び捨てかよ……と思ったら、シャルルに見えない様に身振りで謝罪を表す、何か理由があるのだ。

「で、この子がシャルル、僕のパーティーメンバーだ。」

「へえ」

 まさか誕生パーティーでもするわけではあるまい、おそらく集まりだとか仲間だとかそんな意味だろう。

 シャルルと紹介された女は恭しく頭を下げた。

 私は「どうも」と言って首だけ下げて挨拶とする。



 「それじゃあ」と言って鰐渕が切り出したのは、私の食事だった。

 そういえば昨日もろくな物を食べていない。

「一応消化に良さそうな物を選んでおきました、スープですとか、香草の類なら食べられるでしょう?」

 シャルルがお盆に乗せた定食のようなものを持ってくる。

 言われた通り、中身のよく分からないスープとこれまた知らない草、これは湯通ししてあるようで、一応ドレッシングのようなものもかかっている。

 それとパンだ、予想はしていたが硬いパンだった。

「お昼過ぎですし、これくらいしか残ってなかった、というのが本音なんですけれどね」

 シャルルがウフフと笑う。

 どうでも良い内部事情だ、味はまあまあ、パンの硬さもスープと食べれば気にならない。

 消化に良いという事だがなかなかどうして、このパンがお腹にずっしりと満腹感を与えてくれる。

 香草、というかサラダは香草の種類が多くてよく分からない、酸味の効いたドレッシングで色々有耶無耶にしているというか、統一感を持たせているというか。

 スープとの相性は悪くない。


「どう、美味い?」

 鰐渕が聞いてくる。

「う~ん、普通?」

「普通?」

「普通……」

「いやこれは、美味しいのかもしれないな」

「かもしれない?」

「かもしれない……」

 なんだこのやりとりは。

「何だか、面白い方ですね」

 シャルルがウフフと笑う。

「ああ、変わってるんだ」

 鰐渕が聞き捨てならない言葉を吐く。

「をわうぇんわあいんあいあああっえ……」

 むせたし、ついでにパンくずを鰐淵にぶちまけた。

 咀嚼している時は、飲み込むまで言葉を発してはいけない、と思い出した瞬間だ。


「気にせずゆっくり食べろよ」

 鰐渕は顔を拭き、シャルルはまたウフフと笑う。

 私はそれに従い、二人はこれからの予定を私に話した。

 すなわち、これから楽しいショッピングに出かける、という事だ。

新キャラ登場。

一応、鰐渕ハーレムではありませんのであしからず。

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