赤リュック
学生×学生
あぁ、空が青いなぁ。
好きな色を聞かれたら、僕は迷わず「わからない」と答えるだろう。
それが好きな食べ物でも好きな動物でも変わらず、「わからない」と。
それは別に他人に自分の好みを教えるのが嫌だとか全部嫌いだから答えられないだとかそういうことじゃない。
僕は一番が決められないんだ。
いや、この言い方だと少し違うな…。
好きな物の中にどれくらい好きかっていう度合いが無い、って感じかな。
赤も青も黄色も緑も好き。
でも、この中でどれが一番好きかって言われたら、どれも同じくらい好きだとしか答えられない。
だから、好きな色なんて聞かれたら多数の色の名前を相手が飽きるくらい一人言い続けることになるわけだ。
その面倒やら何やらを避けるため、僕は一言「わからない」と答え続ける。
っと、チャイムが鳴った。
教室に戻ろう。
昼休みの終わりを告げるチャイムの音で、ぼーっと空を眺めていた僕は立ち上がり屋上から校舎内に戻った。
午後の授業はいつもと同じように窓の外を眺めたり、抗うこともせず睡魔に身をゆだねたりして過ごしていたらあっという間に終わった。
放課後は適当に友人と話して帰路につく。
今日も何事も無く終わってしまった、つまらない。
「…ん?」
人通りの少ない道に入って暫く歩いた所にある公園。
誰か、倒れてる…?
「っ、ぃ、てぇ」
確かに最近の僕の悩みは暇なことだけど、面倒事は別…。
まぁ元気そうだし関わらないでおこう。
「おい、そこのお前」
誰か巻き込まれたな、御愁傷様。
「おい、そこのチャラい奴」
それは失礼だろ、誰だ?
可哀想に…。
「っ、シカトすんな赤リュック!!」
赤、赤リュック、赤、リュック…、
って僕じゃんっ、てか僕しかいないし…。
周りを見回しても僕と彼以外に人の気配はまったくない。
「ぁー、何かなぁ?」
「来い」
うわー、最悪だ。
何で命令口調なんだよ…。
「早くしろっ」
「ぁー、はぃはぃ」
近づいて見えたそいつの顔に一瞬思考が止まった。
今までそれなりに整った顔の奴等は見てきたが、そいつ等の顔なんてこいつに比べたら月とすっぽん、
いや、月とゴミだな…。
「僕に何か用かなぁ?」
「助けろ…」
……は?
って良く見たらこいつ凄い傷だらけじゃんかっ、何普通に話してんだよ…。
「び、病院っ?救急車っ?」
「病院は嫌だ…」
子供かっ、
「それどう見ても腕折れてるよっ」
「気のせいだ…」
阿呆かっ、
「とりあえず救急車っ」
「嫌だ…」
我が儘かっ、
とりあえず全部シカトして電話しておく。
暫くしたら救急車が来てそいつは運ばれていった。
思ったほど面倒なことにはならなくてよかった…。
疲れきったダルい身体、というより頭で何とか家にたどり着いて今日は早めに就寝した。
「おはよぉ」
「はよー」
あぁ、今日も太陽が眩しい。
たまには休んだらいい、ほら、僕が許可する。
眠い、先生来たけど、まぁいいか。
おやすみ…。
「灯哉っ」
「んー、?」
今何時だ…?
やっぱり昨夜は疲れてたのか爆睡した…。
ってもう昼休みか、寝すぎた。
「寝ぼけてんなよ、っ」
「ぁー…」
何焦ってるんだ?
腹でも痛いのか?
「隣のクラスの河城がお前呼んでるぞっ」
「……誰ぇ?」
早く屋上に行きたい、誰だ、河城?
ついでにそのまま屋上に向かおうと弁当の入っているリュックを持って河城君がいると言う扉まで歩いていき、やっと眠気が覚めた頭で周りの状況に気がつく。
あれ、何でこんなに静かに…。
「桐瀬…」
「あ…」
昨日公園で会った奴じゃないか。
どういうことだ…。
「ぁー、よく分かんないけど、とりあえず屋上行かなぃ?」