予感
予感
午後9時、いつもの様にお店は常連さんで賑わい、楽しい時間が流れていた。
「ヨッシー、ギムレット頂戴!」
「あら、めずらしいね高島くん!」
「だって、黒板におすすめで書いてあるから!」
例の黒板はマスターが今日から元に戻してくれた。
さすがにあれから10日もたって、何も進展が無いのでそろそろ飽きていた。
「ヨッシーの一目惚れ騒動はほんまに一目惚れで終わったなぁ」
川端さんがしみじみ言うのを聞いて何だか淋しくなった。
午後10時を回ったころ村田さんがやってきた。
「いらっしゃいませ」
「この前はどうも、じゃぁ言ってたソルティドックもらおうかな」
マスターにオーダーを伝え私はグレープフルーツを搾り始めた。
うちのソルティードックは一味違う。塩の付け方しかりグレープフルーツの搾り方しかり、
コレだけを飲み来るお客様は多い!自慢の一杯です。
「お食事はお済ですか?」
「今まで食事しながらの打ち合わせで、ようやく開放されたとこです。」
「お疲れ様です。」
マスターのやわらかいスナップシェークのリズムが店内に響いていた。
「お待たせしました。」
村田さんは飲むなり目を見開いて言った。
「うまっ!何ですかこれ?」
「ソルティードックです!」
「いやいや、わかってますよ!でもこんなすソルティー飲んだこと無いです」
「すごいでしょう!マスターにしか出来ません。私はまだ無理です。」
マスターのソルティードックは確かに違う、シェーキングの妙がこの一杯を生むって感じかな?
私も5年になるけど、まだたまだここまでの物は出来ない。マスターに聞いても
愛情の差だね!と言う。
「いや〜感動です。この前のマティーニも美味しかったけど、これも最高です。マスターって天才ですね。」
それ以上言わないで!結構調子に乗るタイプだから!
「村田くん、天才なんて言葉で片付けないでくれるかなぁ、神が嫉妬する腕と呼んで欲しいね」
あ〜ぁ、始った!ホント調子の乗るのがマスターの悪い癖!
「マスター面白いですね。」
「この人ああ見えて結構お笑い系だから気をつけてくださいね」
高島くんの言葉に大きくうなずく村田さんでした。
「ここは面白い店ですね!」
そこに美佐がやって来た!
「おつかれ!マスターウォッカリッキー!」
入るなり注文した美佐は村田さんを見つけて、目ざとく隣に座った!
「あっ、どうも」
「どうも」
あっ!じゃないよ。入るなりちゃんとロックオンしてたくせに!
「美佐ちゃんが隣に座ってくれるなんて感激。」
反対側の高島くんが空気読まずに言った。
「あら、居たの?相変わらず他に行くとこないの?」
一揆にへこむ高島くん!それをフォローする川端さん。いつもの光景だ。
「あとで連れが来るんですがいいですか?」
「全然かまいませんよ。喜んで!女性ですか?」
「いえいえ、男友達です。あの黒板に書いてた内容に当てはまる奴です。」
マスターがおもむろに黒板を掛けなおした!
えぇ〜、あの看板が〜、なんで〜、
「一応残しときました。掛け変えで対応しようと思って。へへへ!」
何なの。このマスター!
「ナイスやなマスター!」
川端さんが拍手した。
「みんなで復唱しときますか?」
高島!この野郎!いらん事言うな!
そらから15分ほどして、待ち人がやってきた!
店には高島くんに川端さん、杉さんそして美佐に村田さん!
「健太!こっちこっち!」
店に入って来たのは・・・・
いらっしゃいませと言うおうとして開けた口が閉じなかった!
彼が席に付く間、お店に居た全員が口をそろえて言った!
髪は短めで〜!
ガッチリしててぇ〜!
背は私より高くてぇ〜!
目がやさしい感じでぇ〜!
席に着いた時、みんなの目が一斉に携帯に行った!
そして
携帯ストラップがチャーリーブラウン!
「えぇ〜〜!チャーリー!」
全員の合唱に彼はびっくりしていた!
ま〜じ〜で〜!これってき〜せ〜き〜!
私の心臓が口から出るかと思うくらいドキドキしていた。