旅立ちに乾杯
旅立ちに乾杯
チャーリーとの関係は新たな一歩を踏み出した。
恋人同士の様で、そうでもない。1年も遠距離だし、まだ手すら繋いだことが無い。
でも、お互いの気持ちは確認できたし、あとは、野となれ山となれって感じです。
だって、若いカップルじゃないから。
カクテルコンペ当日に出発!最悪なチャーリーです。
お別れは昨日お店でしました。コンペの壮行会をお客様がやってくださって、楽しくさよならできました。
さてさて、いよいよコンペです。準備は万端です。たぶん?
練習はいっぱいしたし、今回の創作には自信ありです。
朝8時に会場集合して、準備です。
マスターは、思いっきり自分らしくやりなさい。と一言だけのアドバイス。
「ヨッシー、緊張してる?」
「智さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
今回、智さんは選手係りとして、私達のお世話をしてくれます。
「マスターが、今年はいい出来だ。って言ってわよ」
「頑張ります」
やっぱり緊張するものなのですが、こうやって先輩からの言葉で救われる気がした。
午前10時よりフルーツ競技開始。私はゼッケン番号5番。3人打ちの2クルー目
タイムキーパーの合図で競技が始まった。
練習通り、焦らずしっかりやっていく、リズムに乗って。
「5分経過」
タイムコールで、今日は上手く行ってると確信した。
「残り2分です。」
ほぼ、出来上がった。余裕が有る分しっかり確認して、終了した。
まずは、一部門。チャーリーは今頃、空港に向かっている頃だろうか?
昼ごはんの時間を挟んで、いよいよ、お客様の前での課題部門と創作部門の開始。
うちの常連さんたちは、大勢来てくれてるはずです。緊張してきた。
控え室で、課題の マティーニ を作るイメージトレーニングをしていた。
メールが着た。
「空港到着。緊張してる?結果が出る頃には、僕は空の上です。いい結果を期待してます。ヨッシー頑張れ! チャーリー」
私はそっと携帯を抱きしめた。
課題競技は、自分としては完璧にできた。分量はバッチリだったし、演技も満足いくものだった。
緊張の中でも余裕があったのか、客席のみんなの顔がよく見えた。西さんに、杉さん、川端さん、高島君に姉御達、そして、村田さんに美佐。
課題が終わるとすぐに、創作の準備。デコレーションの用意をして、最後の演技の為に集中していた。
創作カクテルは、チャーリーと本屋巡りをした時に見つけた写真集から取った「シンセーロ」
私の思いを乗せたカクテル。
「4番と5番の選手、準備おねがいします」
今のところの得点がどうなっているかは、私にはわからない。でも、最後まで一生懸命やるだけです。
競技時間は6分間、グラスをしっかりチルドして、シェーカーに材料を入れる。
プレミアムウォッカ、ポアールリキュール、ライムジュース、グレープフルーツジュース
5杯取りの大きいシェーカーをスナップを効かせて、ダイナミックに振る。
ゆっくりやさしく5個のカクテルグラスに注ぎ、ピースマークにハートを付けたデコレーションを付ける。
最後に、5杯を一列に並べて終了。
「シンセーロ」親愛なると言う名前のカクテル。
この二ヶ月、色んな事がありました。電車での一目惚れから始まった恋。
それに伴って起こった色々な出来事。
落ち込み、有頂天になり、困惑し、恋愛のパワーは相当なものでした。
29歳で久しぶりの恋。
幸せです。たとえあなたが一年いなくても、ねぇ、チャーリー。
私、女性バーテンダー。恋愛には溺れません。お客様を私のカクテルに溺れさします。
あなたを待つ間に、私はきっと一回りも二回りも大きく成長してみせます。きっと驚くわよ、チャーリー。
雲を掴む様な話を掴んだ私は、今度は夢を掴みます。
「今年度、総合一位は、ゼッケン番号5番、吉沢はやみさん」
チャーリー大好きです。あなたを待ってます。
きっと、お店でカクテル作りながら・・・
午前零時のマティーニは強くて美味い。きっとあなたをぐっすり眠らせる事でしょう。
また、お待ちしています。