不安は秋の始まり
不安な秋の始まり
夏も終わり、少し秋の装いになってくると、カクテルの出る種類が変わる。
白物のスピリッツから茶物のブランデーやウィスキーにベースが移行する。
マティーニからマンハッタンやゴットファーザーに。
あの一件以来、マスターと美佐は何か怪しいし、私もチャーリーのゲイ疑惑も残ったまま。
村田さんは相変わらず来店してくれている。
私はコンペが近いので、毎日練習の日々です。
「大会のチケットキープしといてな」
西さんは毎回応援に来てくれてる。
「ちゃんと取ってますよ。高島君はどうなの?」
「もちろん、行きますよ。優勝する瞬間を見ないとね」
軽くプレッシャー掛けやがったな!
今年は、かなり良いカクテルが出来たと思ってるので、頑張りますよ。
「久しぶりに、ヨッシーにサイドカー作ってもらおうか」
ブランデーにコアントロー、そしてレモンジュース。シェイクの腕が試される。
ブランデーの風味とレモンの酸味、そこにコアントローの甘み。甘酸味のバランスが重要なカクテルです。
「上手くなったね。マスターも喜んでるやろ」
西さんのお世辞をありがたく受け取った。マスターは褒める事などほとんどない。
まぁ、そんな簡単に弟子褒めてたたら、付け上がるわね。
午後8時、久しぶりに杉田さんがきた。
「久しぶり、余市の水割りちょうだい」
杉田さんは無類のニッカ好き。余市12年が特にお気にいりです。
「この間、娘にねだられて家具買いに行ったんやけど、その店がチャーリーの所やったわ」
「本当ですか、どうでした?」
杉田さんは娘さんが雑誌で見つけた、チェストを買いにいったらしく、そのお店がチャーリーの輸入家具のお店だったそうです。
「結構ええ店やったで、えらい良くしてもうたわ、娘も大喜びや。」
そりゃそうでしょう。チャーリーは優しい人です。そういえば、私は一回もお店には行ってないなぁ、今度行ってみよう。
「チャーリー、フランスに行くらしいな」
えぇ、そうなんですか?何も聞いてないよ。
「家具の買い付けですかね。」
「少し長めに行くみたいやな」
えぇ、そうなの?本当に聞いてないよ・
チャーリーとはメールで色々話してるのに、そんな事言ってなかったよ。
またしても不安。恋って不安がいっぱいね。長く行くってどの位だろう?
メールで聞いてみよっと。ゲイかどうかは聞けないけど、それなら簡単に聞けるよね。