お近づき
お近づき
お店にいる人達全員の視線が私達に注がれていた。
マスターが耳元で メアド と言って通り過ぎた。
確かに、こんな奇跡が起きたのに、これで終わる訳にはいかなかない。せめてメアドだけでもゲットしなくては!
しかし、どうやって切り出すか?誰かヘルプ!
「どうや、美味いやろ?」
村田さんの言葉にチャーリーはうなずいた。
「マティーニお好きですか?」
「こいつに教えられて、好きになりました。」
もっと話さなきゃ!
「バーテンダー競技大会でも課題カクテルはマティーニなんですよ」
「へぇ〜、そうなんですか?出られたりするんですか?」
「あっ、ハイ!この秋に神戸の予選があるんです。ただ今特訓中です。」
前田くんが大会のチラシを持ってきて、彼らに差し出した。ナイスアシスト!
「見てみたいなぁ。」
「是非、いらしてください。結構まじめな大会ですが、面白いと思いますよ。」
「ヨッシーの応援に来てやってください。優勝目指してますから!」
マスターもナイスアシスト!
「ブログとメールで色々とヨッシーの練習報告とか見れますよ。ここにいるみんなが見てます。」
ナイス!高島くん。もっとアシストして!
「ブログやメールですか?色々やってるんですね」
村田さんが関心していた。
「メアド言っときますか、僕にも情報くれますか?大会って凄く興味あるんで!」
ゴ〜〜〜ル!ありがとうみんな!チャーリーのゴールネットを揺らしたわ。
「では、赤外線通信で・・・」
マスターじゃないでしょう!おもいっきり睨んだ。
「うそうそ、ヨッシーとお願いします。」
もう!この人達は本当に!
「では、僕が送ります。いいですか?」
いいですよ、いいですよ、どんどん送っちゃってください。
「あっ、着ました!じゃぁ、私の送ります。」
何だか幸せ〜。
「僕もいいですか?」
村田さんが携帯を出した。よろこんで!
「村田さん、私もメアド交換してください。」
来た〜!美佐が参入!やっぱり村田さん狙いだったのね。
店内は美男子に二人に群がるハイエナ達を冷静に見ていた感じ。
「どんなカクテル出すんですか?」
「今、一生懸命煮詰めてるところです。ネーミングが決まらなくて・・・」
確かに、一目惚れだと騒いでる場合ではなかった。2週間後にはレシピの締め切りが迫っていた。
大会のあれやこれやと話をして結構盛り上がってしまった。美佐は村田さんを一生懸命、毒牙に掛けようとしていた。
チャーリーはすごく本が好きな様子。今度一緒に本屋めぐりをする事になった。
ラッキー!何と無くお近づきになれた気がした。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎて。
「では、そろそろ帰ります。」
村田さんの無情の言葉に淋しさがこみ上げた。
「ありがとうございます。」
お見送りに出た私はまじまじと二人を見た。
「また、いらしてくださいね。」
「また、寄ります。メールくださいね。」
しますします。じゃんじゃんしちゃいます。
おじきをして二人の姿が見えなくなるまで見送った。